2005年、トム・フォードが自身の名を冠して立ち上げたラグジュアリーブランド。メンズウェア、ウィメンズウェア、アクセサリーから化粧品まで幅広く展開している。「ワードローブはタフでセクシーであるべき」というデザイナー、トム・フォードの哲学をコレクションに反映し、パターンやカッティング、素材を重視したラグジュアリーでありながらもシックである点が最大の特徴。世界中のセレブリティや目利きに支持されているトム フォードのスーツはエレガントな仕立てが特徴的。ジャケットには肩パッドを入れ、ウエストラインに沿って絞りを効かせ、腕周りも細めに仕上げることで体とスーツが一体になったような高いフィット感を実現している。また、完璧主義者として知られるトム・フォードならではの製造ラインを所持しており、素材の提供から製造まで一貫して管理している。現在、メンズはミラノで、ウィメンズはニューヨークで、それぞれ年2回コレクションを発表している。
創業者であるトム・フォードは、グッチのクリエイティブ・ディレクターに就任して10年余りで売り上げを当初の13倍に伸ばしたという逸話を持っているデザイナーである。グッチの立て直しに成功した後の2005年、これまでもともに活躍したドメニコ・デソーレと、トム フォード社を設立。2006年、ブランドの世界展開に向けて、当時高級衣服の生産工場であったエルメネジルド・ゼニアと製造関連での提携を結び、トム フォードはオートクチュールのような精巧な手法でクラシカルなメンズファッションを展開していった。同年、「ブラック オーキッド」という伝統的かつモダンなフレグランスを発表。トム フォードがさらなる飛躍を遂げるきっかけとなったのは、2008年公開の大ヒットシリーズの映画『007/慰めの報酬』。主役のジェームズ・ボンドのスーツを手がけたことで、知名度は飛躍的に浸透した。その成果と功績が認められたトム・フォードは、同年にアメリカファッション協議会(CFDA)の「メンズデザイナー・オブ・ザ・イヤー」を受賞。2009年に立ち上げたデニムラインのコレクションの全てには、日本製のプレミアムデニム素材が使用され、そのこだわりが話題となった。2010年には、新たにレディスウェアのラインをスタート。2011年、トム フォード ビューティもスタートし、2012年には日本初のウィメンズブティックが阪急うめだ本店にオープン。また同年に公開された映画『007/スカイフォール』でも再びボンドスーツを提供して話題となった。2019年6月より、トム・フォードはCFDAの新会長に就任した。
トム・フォードはファッション界のみならず、映画界でもたぐいまれなる才能を発揮している。2009年には映画『シングルマン』で映画監督デビューを果たし、ヴェネチア国際映画祭でコンペティション部門にも出品。主演のコリン・ファースは男優賞を受賞し、さらにアカデミー賞の主演男優賞にもノミネートされるヒット作となった。さらに2016年、自身監督とで脚本を務めた『ノクターナル・アニマルズ』は、同作はヴェネチア国際映画祭では審査員グランプリを受賞。助演のマイケル・シャノンがアカデミー賞にノミネートされ、同じくアーロン・テイラー=ジョンソンがゴールデン・グローブ賞に輝いている。