「運命を、変えよう。~#CHANGEDESTINY」をテーマに女性たちを応援してきたSK-Ⅱが、新たなアニメーション作品として、世界のトップアスリートたちを主役にした「VS シリーズ」を発表! 現代を生きる女性が直面する困難やプレッシャーをテーマに描かれた全6篇の動画を見ながら自らの経験を語ってくれたのは、俳優として数々の作品に出演するだけでなく、adieu(アデュー)としてアーティスト活動も行う上白石萌歌。10歳でデビューした彼女が乗り越えてきた試練や葛藤、21歳になった今、目指す姿について聞いた。
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新しいステージに立つときに感じるプレッシャーは、否定せずに受け入れる。
—デビュー以降、着実に俳優としてのキャリアを歩んできた上白石萌歌さん。今年は、主演映画の公開が控えているだけではなく、アーティストadieuとしてセカンドミニアルバムのリリースを予定。さらに今春からは、ラジオパーソナリティとしても活動中です。いつも自然体で、ポジティブに活躍の幅をどんどん広げている印象がありますが、不安やプレッシャーを感じることはありますか。
私が特にプレッシャーを感じるのは、新しいことに挑戦するとき。先日、初めてTV番組で歌を披露する機会をいただいたのですが「人間ってこんなに緊張することができるんだ」というくらいガチガチになってしまって。春から始めたラジオも、私にとって初挑戦のメディア。どういう番組にしていくべきなのか、毎回すごく考えながらやっています。話したい内容を前もってノートに書き出しておいたり、紹介する予定の本のポイントになるページに付箋をつけておいたり、準備はかなり念入りにしています。—新しいチャレンジのときに感じるプレッシャーとどう向き合っていますか。
緊張やプレッシャーを感じている状態の自分は、どうやったってごまかせない。だから、そんな自分を否定せずに受け入れるようにしています。今の自分がどういう状態かを把握できていないことがいちばん怖いこと。「今、私は緊張しているんだ」と、飾らず正直にプレッシャーを受け入れられたら少し気持ちが楽になりました。それもあって、今回のSK-Ⅱ「VSシリーズ」の動画の中では特に「VS プレッシャー」に共感しました。卓球の石川佳純選手が、新しいステージに立つたびに葛藤する姿が描かれていて、応援したくなりました。SFのような世界観の中で、エレベーターに乗って子どものころからの卓球人生を振り返っていくようなシーンがありましたよね。私も10歳でこの世界に入ってお仕事を続けているので、過去の積み重ねが今につながっているという演出を自分ごととして見ていました。
—上白石さんのキャリアの中で、過去の経験が今につながっていると実感したことはありますか。
16歳のとき、キリン「午後の紅茶」のCMシリーズに出演して、「やさしい気持ち」などの名曲を歌わせてもらいました。今、adieuとして歌を歌っていられるのは、あのときの経験があったからこそ。当時は、それが音楽活動につながるとまでは思っていませんでしたが、振り返るとあのときの自分が、今、歩んでいる道を切り開いてくれたんだと思います。 -
どうしても目にしてしまう誹謗中傷。けれど、自分を大切にしてくれる人に目を向ける。
—2019年に出演したTVドラマ「3年A組-今から皆さんは、人質です-」は、SNSでの誹謗中傷をテーマのひとつとして扱ったドラマでした。人前に出る仕事をしていると、乱暴な言葉や傷つく言葉を目にしてしまうこともあるのでは?
指先で操る言葉ひとつで、人を傷つけることができてしまうという恐ろしさは、日々感じています。「3年A組-今から皆さんは、人質です-」で景山澪奈を演じたことも、言葉で人を傷つけないためにはどうすればいいのか、より深く考えるきっかけになりました。言葉にどう向き合っていくか、これは私自身の課題でもあります。だからこそ、体操選手のシモーン・バイルス選手を主人公に描いた「VS アンチ」の動画は、心に刺さりました。アスリートも俳優も、人前に立ち、注目されやすい立場にいると、誰かに批判されたり、心無い言葉を乱暴に投げつけられたりすることも……。彼女の葛藤する姿に、親近感が湧きました。—心無い言葉を目にしてしまったときは、どういうふうに気持ちを切り替えますか。
バイルス選手の「VS アンチ」の動画では、嫌な言葉が怪獣として表現されていましたよね。私も、冷たい言葉や傷つく言葉を目にしてしまうときは「これを書いたときのその人の心は、人間じゃなくてモンスターになっていたんだろうな」と思うことがあるので、その描写に共感できました。SNSでの誹謗中傷は相手の姿が見えない分、さまざまな事情でストレスが溜まった人がここで鬱憤を晴らしているだけかもしれない、そんなふうに思うようにしています。ありがたいことに、傷つく言葉だけではなく、優しい言葉もたくさんいただいているんです。だから、なるべくそういう言葉に目を向けることも心がけています。以前、応援してくれるファンの方が、私のお仕事をまとめたアルバムを自作してくれたことがあったんです。ひとつひとつの作品の感想を綴って、本として形にしてくれたのを見て「こんなに応援してくれる方もいるんだ」と心が揺さぶられました。こんなにも大きな愛をもらっているのに、悪い言葉にばかり目を向けている場合じゃない。自分を大切にしてくれる人を大切にしよう、そう思えるようになりました。 -
苦しくも自分の殻を破れた経験が役者としての自信に。
—21歳にして、俳優としてのキャリアは10年を超える上白石さん。これまで歩んできたキャリアの中で、転機となったと思える作品や出来事はありますか。
2018年のTVドラマ「義母と娘のブルース」は、ターニングポイントになった作品のひとつだと思っています。撮影当時は、自分が求められていることに応えきれず、不甲斐ない気持ちでいっぱいでした。現場ではたくさん怒られて、苦しかったときもありましたね。—どんなことに苦戦されたんですか。
コメディ要素の多いドラマだったのですが、あるとき、監督から「恥をかいてもいいと思ってお芝居をやっているように見えない」と言われて、ハッとしたんです。確かに私は小さいころからずっと引っ込み思案なタイプだった。でもあの作品が、内気な私を外へと引っ張り出してくれた気がします。動画に出てくるアスリートの方々も、壁に当たったときにそれぞれの努力を重ねて乗り越えていたように、私も悩み苦しんだ結果、自分の殻を破ることができたと思える経験をしました。作品に注いだ愛情や努力が、形になって返ってくることの喜びを知ったのも、この作品と出会えたから。そのときの経験が、今の私の自信につながっています。
―今も、苦しい体験や困難にぶつかることはありますか。
もちろんあります。2020年2月、パンデミックの影響で、上演予定の舞台が中止になってしまったんです。本当は、私の20歳の誕生日が、その舞台の初日になるはずでした。それもあって、今までこんなに絶望したことはないというほど落ち込んでしまって……。そんなときに支えになってくれたのは、家族の存在でした。両親は、落ち込んでいるといつも背中を押して励ましてくれるし、私がネガティブな言葉を発したときは、必ずそれをポジティブなものに変えて返してくれるんです。舞台が中止になったとき、両親は「今回の辛い現実にも、意味を見出せる日がいつか必ずやってくる。絶対にプラスに捉えられるときが来る」と励ましてくれました。 -
本や映画で出会った言葉や知識を自分の強みに変えていく。
—さまざまなお仕事を継続していく上で、大切にしていることはありますか。
普通に暮らすこと、ですかね(笑)。例えば、忙しい日々の中でもなるべく自炊をしたり、お風呂を沸かして入ったりといったことです。料理は、凝ったメニューを作るわけではないですが、豚汁をたくさん作って数日かけて食べたり、スープをストックしておいて仕事現場に持って行ったりしています。お仕事のことばかり考えていると、心ががんじがらめになってしまうので、人としてちゃんと暮らしていくことは大事ですね。あとは日記をつけること。10年ほど毎日、日記をつけているんです。自分の状態を文字にして書き記すことで客観視できる。あとから読み返して、当時の自分を再発見することもあります。書くことで自分を知る作業は大切にしています。ときどき、書き忘れちゃう日もあるんですけどね(笑)。—丁寧に言葉を選んでインタビューに答える上白石さんは言葉が持つ力をとても大切にしているように見えます。日記を書くことを日課にしているというので、さらに腑に落ちました。読書家の一面もあるそうですが、上白石さんにとって本はどんな存在ですか。
私にとって本をはじめ、映画や音楽といったカルチャーは、ご飯みたいなもの。毎日、自分の栄養になってくれるものです。本は、普段から必ず1冊は持ち歩いていて、空き時間に読んでいます。谷川俊太郎さんのエッセイや詩集、西加奈子さんの小説は世界や視野を広げてくれるもの。書籍から面白い学びや発見があると、自分が悩んでいることが小さなものに思えたり、くじけそうになったときに本の中で出会った一文を思い出して心が救われたり……。自分を支えてくれる言葉や知識を少しずつ心の中にストックしていく感覚というのかな。その積み重ねが、ここ一番で力になる自分の強みにつながるのではと信じています。—上白石さんから感じる聡明さの根源は、そんな勉強熱心なところにあるのでしょうか。
小学生のころは勉強がすごく嫌いな子でした(笑)。やっぱり好きな分野が見つかると、それをもっと深く知りたくなるんだと思いますね。私の場合は、それがアートでした。大学では芸術を専攻していて、最近は写真史も学んでいます。 -
挑戦の第一歩は、逃げずに自分の眼差しで見つめること。
—今回、動画の中に登場した6組のアスリートたちは勝ち負けがつくスポーツの世界で戦い、挑戦を続けています。上白石さんにとっての“戦い”や“挑戦”を、自分らしい言葉で表現するとしたら何ですか。
“見つめること”でしょうか。私なら乗り越えたい壁に直面したとき、まずはそれを自分の眼差しでしっかり見つめ、受け入れようと思います。怖いかもしれないけれど、目を背けず見つめて自分自身と対峙する。それが私にとっての挑戦の第一歩かもしれません。この動画に出てくる女性たちの姿を見て、私は強さとしなやかさの両方を感じました。例えば「VS ルックス」に出てくるリウ・シアン選手。私も昔、水泳を習っていたこともあり、とても興味深く見ました。世界記録を樹立した偉大な選手ですが、人前に出る立場という意味では私も同じ。共通点を見つけられたようで、彼女のことをちょっと身近に感じました。動画の中で、SNSの言葉がクジラに変化したり、「いいね!」のハートマークが集まって怪獣になったりする演出も面白かったです。注目されるがゆえに傷つくこともあったけど、きっと彼女はその分だけ強く、優しくなれたんだと思います。強い心を持ち続けられる人は、きっと同じくらい優しさを持っている人。優しさも強さの一部なのだと思いました。
—上白石さんの身近にもそういった目標や励みになる存在の人はいますか。
「義母と娘のブルース」で共演した綾瀬はるかさんの現場での佇まいが忘れられません。すごくハードなスケジュールだったのに、いつもにこやかで、まさに太陽のような存在でした。スタッフさんとジョークを交わし合うような可愛らしさと柔らかな立ち振る舞いは、とても勉強になりました。富田望生さんをはじめ、同世代の仲間たちの活躍からも元気をもらっています。みんなキラキラしているので、私まで輝きをもらえる気がして……。「同志」という感じで、すごく大切に思っています。
—俳優やアーティストとしてこれからどんな表現をしていきたいですか。
私自身、音楽や本、映画といったカルチャーに救われてきました。だからお芝居でも音楽でも、私の携わる作品を通して、アートの素晴らしさをたくさんの人に知ってもらえたらうれしいです。アートには人を救う力がある。私がそうであったように、より多くの人にそのことを感じてもらえたらいいなと思います。自分が表現するものも、その一部として誰かを救うきっかけになれたら、こんなにうれしいことはないです。—ひとりの女性としてはいかがでしょう。
ジェンダーのギャップが小さくなってきていると言われても、まだまだ女性が立ち向かっていかなければならない壁はたくさんあると思います。小さいことでも、普段感じている違和感を、怖がらずに発信することを大切にしたいです。実は私も、あまり強いことを言えないタイプ。けれど、発信することは声をあげるという形だけではないかもしれないですよね。私の場合だったら、歌やお芝居という方法で伝えられる術があるかもしれない。伝えたいことを自分で表現できる、強くて優しい女性が目標です。
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SK-Ⅱが2015年から進めてきたキャンペーン「運命を、変えよう。〜#CHANGEDESTINY」。その活動のひとつとしてリリースされた、世界のトップアスリートたちの体験をもとにしたアニメーション作品「VSシリーズ」。上白石萌歌が特に共感した2作品はこちらからチェック!
「全6篇すべて、現代に生きる女性なら誰しも共感できる部分があるテーマだと思いました。私はもともとインタビュー記事を読むのが好きですが、こうやってアニメーションの形になると、メッセージがより伝わりやすくなると思いました。どの作品もSFの世界のような要素があって面白いし、サウンドも印象的。私と同世代の女性も共感できる部分が多いのではと思います」(上白石萌歌)
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卓球の石川佳純選手の葛藤を描く「VS プレッシャー」。英国アカデミー賞をはじめ200以上の受賞歴を誇るアニメーションスタジオ「Platige Image」が制作を担当。アスリートとしてキャリアを積み重ねていけばいくほど、周囲からプレッシャーを与えられる石川選手。その姿を見て「ギャップに葛藤することもあります。どうしたら周囲の期待に応えられるのかと悩むこともあるので、すごく共感しました」と、上白石萌歌は語る。
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オリンピックと世界選手権で計30個のメダルを獲得し、世界で3番目に多くの勲章を受けたアメリカの体操選手、シモーン・バイルス。サウンドトラックをシンガーのジョン・レジェンドが担当し、SNSでの心無い声と闘う彼女の姿を描いた。「マイナスの言葉が形になって自分に襲いかかってくるシーンが印象的。目に見えない感情がわかりやすく可視化されていて、感情移入してしまいました」と、上白石萌歌も動画に共感した。