すべての女性にとって、恋のパートナーを見つけるのは、たとえTinderみたいなデートアプリが当たり前になった今の時代だろうともなかなか至難の技。ではストレートでもゲイでもレズビアンでもない、バイセクシャルの女性の場合はどうだろう? 実はこれ、もっと困難だという。例えば、バイセクシャルの女性がその事実を男性に告げると、すぐに彼らはセックスの話を質問したり、普通の女性としてみなすことをやめる。今やLGBTQは珍しくないのに、それでもまだ例外的な扱いを受けることがあるのだ。
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■バイセクシャルに対して誤解している人は多い
とあるLGBTQのレポートによれば、米国の成人のうち3.5%がレズビアン、ゲイもしくはバイセクシャルで、0.3%がトランスジェンダーだという。米国の国民健康調査では、0.7%の成人が自身をバイセクシャルと考えているという結果もある。ということは、米国にはおよそ900万人のLGBTQがいるということ。また、バイセクシャルは、男女比でいえば女性の方が多いという調査結果もある。それゆえ、恋のパートナーを探しているバイセクシャルの女性がかなり多く存在しているのだとメディアでは報じられている。
バイセクシャルはよく“男女両方に恋愛感情を持つし性的にも惹かれる”とか、“どんな性別や性的志向の人にも好意を抱く(=パンセクシャリティ)”と認識されている。でも、バイセクシャルにもいろいろなパターンがあり、人のセクシャリティはとっても多様。にもかかわらず、バイセクシャルへの固定観念や思い込みは一方的なものが多く、しかも時には不快なものもある。例えば「バイってことは、恋愛相手を探すのに困らないだろうね」という考えもそのひとつだ。
それにバイセクシャルであるすべての人が複数のパートナーを持つというのも誤解。また、複数の性別を好きになるという理由で、時には同性愛者のコミュニティからも避けられることもある。■よくあるバイセクシャルに対する誤解とは?
実際、ある一部のレズビアンやゲイには、バイセクシャルを“恋愛対象をまだ選べていない段階”とみなし、敵対心を抱く人もいる。また、レズビアンの女性に「バイセクシャルの女性と付き合える?」と聞くと、多くが「NO」と答える。その理由は、恋愛関係に男性が介入してくるのがイヤ、バイセクシャルは浮気するというイメージがある、などさまざま。バイセクシャル以外の女性は、バイセクシャルの女性の恋愛対象は性別を問わず広範囲であると考え、惚れやすかったり、すぐに別の人と寝ているのではないかという疑惑を抱えてしまうのだ。
一方、男性と付き合うことも同じように問題がある。特に多くのストレートの男性は、女性がバイセクシャルと知ると「それってセクシーだね」と口を揃える。中には「じゃあ、他の女性とセックスしているところが見たいな」なんて言ってくる人や、「バイセクシャルは最高だよ。女性ふたりと寝ることが夢だったんだ」なんて言う人も! そう、彼らにはバイセクシャルの女性は性への好奇心が強いという思い込みがあるのだ。■心の悩みを抱えるバイセクシャルも多い
バイセクシャルの女性は、男性の妄想を満たすための存在ではない。それにみんながSMのパートナーを探しているわけでも、3Pをしたいわけでもない。こういった偏見によって、バイセクシャルは浮気しがちで尻軽というイメージが植え付けられてしまう。ある研究結果では、バイセクシャルの女性はレズビアンの女性より、心の悩みを抱えがちだともレポートされているのだ。
「バイセクシャルの人々は、ゲイ、レズビアンのコミュニティ両方、そして社会からいないものとして扱われるため、疎外感を感じるというリスクを負っています」。そう語るのは、ロンドンの大学「ロンドン・スクール・オブ・ハイジーン・アンド・トロピカル・メディスン」のフォード・ヒックソン医師。結局、一方の性のみを好きになるゲイ、レズビアンは、複数の性を好きになるバイセクシャルを受け入れることができないのだ。■偏見に惑わされず、自由にセクシャリティを公表できる世界を目指そう
そのような事情から、バイセクシャルの女性は、自身の性的志向を公表せず、隠すほうがてっとり早いと考えてしまう。しかもそれが自身を守ることにもなっている。なぜならアメリカ疾病予防管理センター「CDC」のレポートによれば、バイセクシャルの女性が性的虐待を受ける確率はストレートの女性より2倍高いという結果があるからだ。
みんな自分を愛し、自分を受け入れよう、と社会では教えられる。けれど、これほどの偏見があれば、バイセクシャルの女性が性的指向や自分自身を隠してしまう気持ちも分かるだろう。しかし思い込みだって変えることはできる。だから誰かがあなたに「実はバイセクシャルなんだ」と打ち明けたら、話に耳を傾け、理解するように努めて。もし偏見をなくしたら、あなた自身の世界も新たに広がるはずだから。