これからの時代をリードしていく注目の“ゲームチェンジャー”たち。輝きと自信を増し続ける彼らは今、何を思い、考えながら未来に向かっているの? 2020年、更なる活躍が期待される注目の存在をVOGUE GIRLがピックアップ。3人目として登場するのは、モデルとしてファッション業界から多数のラブコールを受けるモトーラ世理奈さん。
世界をもっと知りたい。モトーラ世理奈が抱く未来への野望。
–2019年はどんな1年でしたか?
去年は、演技をする機会がぐっと増えました。立て続けに映画やドラマの撮影があったから。
–生活は変わりました?
そんなに変わっていないですね。でも、たくさんの新しい人に会って、新鮮な日々でした。逆にファッションの撮影をあんまりしなかった感じがします。2019年の前半は映画『風の電話』の撮影があって、7月の後半からは『ブラック校則』という作品のドラマと映画をやって、気がついたら10月で、あっという間に年末でした。
–モデルの仕事に比べて、お芝居は緊張しますか?
お芝居を始めてすぐの頃はモデルと全然違うと思いました。「全然違う自分にならなきゃ」って緊張していたのかもしれません。でも、最近は、ちょっとずつ変わってきたかな。演技にせよモデルにせよどっちにしろそれが自分なんだから、自分の行動を受け入れようと。それからは、自然体な気持ちで演技の仕事に向き合えるようになってきたかなと思います。
–モデルとして独自のポジションを築いていますが、モデルという仕事を目指したのはいつ頃からですか?
もともと子どもの頃から大きくなったらお芝居をやりたいと思っていたんです。小学生の頃、学校行事でやる学芸会がすごく楽しくて、大きくなってもこれをやりたいなと。ドラマをみるのも大好きでしたね。ベタですけど、当時流行っていた青春学園ものをよく見ていました。高校生への憧れみたいなのもあって(笑)。高校生の頃にスカウトされて事務所に所属したんですが、それからずっとお芝居のオーディションを受けていました。だから私としては、モデルが先でお芝居があと、という考えはなくて。モデルもお芝居も並行して続けているものなんです。先に仕事をするようになったのがモデルとしてだっただけ、っていう感じですね。
–昨年は歌手活動も始めたんですよね。「いかれたBaby」、すごく素敵でした。
ありがとうございます。ずっと歌を歌うことは大好きだったんですが、みんなの前で歌いたいというふうには思ったことがなくて。自信もないし、恥ずかしさもあったから「絶対やだ!」って思ってました。でもお世話になったアートディレクターの方が「なんか歌ってみれば?」って言ってくださって。「そのまま歌えば良いんだよ、その普段の声が良いから」ってプッシュしてくれて。せっかくそういうチャンスがあるんだったら、やってみても良いかんじゃないかなって思ったのがきっかけです。それに、声を褒められたのがちょっと嬉しくて(笑)。
–伝説的バンドFishmansのカバーですよね。これからも歌の仕事は続けていく予定ですか?
「何を歌いたい?」と聞かれた時に、好きな曲だったので自分で選びました。最近また歌いたい気持ちが強くなってきています。でも「いかれたBaby」がすごく良かったと自分でも思っているし、周りからの反響も大きかったから、次はどの曲を歌うか悩ましいです。
–他にも2020年に挑戦してみたいことはありますか?
去年は演技の仕事が多かったから、最近はモデルもやりたくなっちゃって、またいろんな撮影をしたいなと思っています。今は長めのスパンで海外に行きたいですね。
–海外でも仕事をしてみたいということですか?
はい。小さい頃から、海外に住んだり留学したいという夢はずっとあって。それが仕事、しかもモデルとして行けたら一番良いなって思っています。まだ何もわからないですが、海外のクリエイターと、時間をかけてその国で一緒に何かを作るということをやりたいなと思っていて。まずはクリエイターに限らず、海外のいろんな人に会ってみたい。直近でロンドンとニューヨークには行く予定ですが、どの都市に行ったとしても一貫しているのは、“作ること”がやりたいということ。まだ全然未知ですけれど。でも、私はファッションが好きなので、ファッションに関係するものを作ってみたいです。
–去年の仕事の中で、特に思い出深いものはありますか?
やっぱり、『風の電話』の撮影です。広島から岩手県の大槌を目指すロードムービーになっているんですが、実際の撮影も広島から始まって大槌まで移動しながら撮ったんです。ずっとロケだったから、その場所で感じたことで演じようと思っていました。スタッフの方も少人数で、ずっと同じメンバーで撮影していたので、移動していくうちにチームが出来上がっていって。私が演じた主人公のハルという女の子と一緒に、私自身も旅をしつつ、いろんなことを学びながら進んでいったなと思います。
–『風の電話』は2011年の東日本大震災がテーマになっていますよね。この映画を経験したことで意識するようになった社会的なトピックスはありますか?
映画を撮影するにあたって、実際に被災地へも行きました。私と同世代の人たちって震災の時に小学校高学年ぐらいだったので、震災に遭ったことをギリギリ覚えている世代だと思うんです。私たちの5個ぐらい下になると、多分覚えていないですよね。私たちにはちゃんと記憶があるんだけれど、でも、その時から今までって自分のことに精一杯な期間で。
–中学、高校、大学って、短い時間のなかで環境が大きく変化していく期間ですよね。
そう。私は震災当時は子どもだったから、毎日学校に行って、勉強するのに精一杯で、全然そういうことに耳を傾けたり、アクションすることができなくて。だからこそ、今の被災地が抱えているものに目を向け、これからたくさん行動していけるんじゃないかと思います。そういう意味で『風の電話』は、私たち世代の人にたくさん観てほしいなって思っていて。たくさんの人が気がつくことで変わることがあると思うんです。
今回、映画にクルド人の方が出演されていて、その方とお話をする機会がありました。それまで私はクルド人が日本に住んでいるということも知らなかったのですが、その方を知ったことで、日本の入国管理局のニュースも気になるようになって。私は日本にずっと住んでいるけれど、外国のルーツも持っているから、放っておけないことだと思ったんです。そういう風に、何かを知ることってとても大きい。だから、この映画がたくさんの人に届いてほしいなと思います。
–今、まさにモトーラさんと同世代の人たちが、いろんな方面で活躍されているのを感じます。モトーラさんにとってライバルのような存在はいますか?
ライバルとして意識するような存在はいないけれど、刺激をもらえるのは同年代の友達が多いです。フォトグラファーの石田真澄さんは、高校生の時から写真を撮っている方で、今も大学へ行きながら仕事をしていて、いつもいい刺激をもらっています。今までにきちんとした形で一緒に仕事をしたことがまだないので、今年は雑誌の企画やファッションの撮影を一緒にやりたいねって話しています。これも今年のひとつの目標かな。多分来年くらいからは、私の高校時代の友達も大学を卒業して社会人になるから、みんな次は何をやるのかなって、楽しみです。
–最後に、2020年をどういう年にしたいか漢字一字で表すなら?
うーん……悩ましいけれど、「羽」これにします。いろんなところに行く、という思いを込めて。今年は、実際に足を運んで、行かないとわからないことをたくさん知りたい。そこで何があるかはわからないけど、とりあえず行くこと。去年は割と家に引きこもっていることが多かったので、今年はどこでもいっちゃうよ!みたいな(笑)。それで、やりたいことがあったらやる。そんな1年にしたいなと思います。
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PROFILE
モトーラ世理奈/女優・モデル。1998年生まれ。東京都出身。2015年にモデルデビュー。独特の存在感でファッション業界から多数のラブコールを受ける。2018年に公開された「少女邂逅」で女優デビュー。2020年は初主演作「風の電話」が1月に公開されたのに続き、2月にも主演映画「恋恋豆花」が公開。女優として活動の幅を広げている。
>公式インスタグラム -
PHOTO:MASAMI SANO(KIKI INC.)
STYLING:RENA SATO
HAIR&MAKEUP:MOMIDI SAITO(eek.)
PROPS:EASE
INTERVIEW&TEXT:YOKO ABE
EDITOR:AKIKO MIYASHIMA