これからの時代をリードしていく注目の“ゲームチェンジャー”をVOGUE GIRLがピックアップ!欅坂46を卒業後、2020年に活動を再開。グループでの経験と多彩な個性を自分らしく表現しながら、文筆活動やMC、ラジオ、そして俳優へと活動の幅を広げる長濱ねる。豊かな個性に秘められているのは、凛とした強さとたおやかに変わる柔軟な心。新しいステップを歩みはじめた彼女が描く、自分らしい未来とは?
豊かな個性に秘める、やさしさと強さ。長濱ねるが歩みはじめた、自分だけの未来。【次世代を担うフレッシュエナジー】
肩書きってなんだろう。活動再開直後に悩んだ自分の居場所。
2019年に欅坂46を卒業後、2020年に活動を再開した長濱さん。テレビ番組「セブンルール」のMCや雑誌の連載、ラジオ、2022年からはNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」への出演など、俳優としても活動の幅を広げています。さまざまなことを軽やかに、器用にこなすイメージがありますが、長濱さんにとって一番自分らしくいられる仕事は何ですか?
2020年に活動を再開してからは、まずは興味があることや好きなことをやろうと、文章を書くことやもともと好きだった「セブンルール」のMC、地元の仕事をやらせていただきました。けれど、活動再開してからの1年くらいは自分の肩書きって何だろうと不安になることも多かったように思います。演技のお仕事をさせていただいても、バラエティー番組でもどこでも“ゲスト”みたいな感じで、どのお仕事もお客さんとして扱われているような気がしていました。自分を何かにカテゴライズしないと私の居場所はないかもしれない。自分の居場所ってどこにあるんだろうと悩んでいた時期もありました。
その悩みはどのように乗り越えたんですか。
まわりを見渡したときに女優さんがYouTubeをやっていたり、会社員として働いている方がハンドメイド作家としても活躍されていたり……。今の時代、ひとつの型にハマらずに何でもできるし、何をやってもいいんだと思えたのが、その悩みから抜けられたきっかけです。何かひとつに決めることや、匠のように物事を極めることは、私は一度諦めようと。いただいたお仕事を精一杯やって、その中で好きなことをもっと広げていきたいという気持ちに変わりました。
長濱さんがさまざまなジャンルの仕事と向き合う中で、大切にしている価値観や思いは何ですか。
「好き」という気持ちは大切です。感覚的なんですが、何か二つあったときに自分が好きなものはこっちだと、割と確信を持って決められるところが自分の好きなところでもあります。根拠はないのですが、好きなものをきちんと選ぶことができるのが自分の自信につながっています。
仕事においても「好き」という気持ちは大切にしたいですよね。
はい。けれど、仕事をはじめてそれが一度なくなってしまったと思ったことがありました。まわりの声がどんどん大きくなり、私自身も初めてのことが続いて「あれ、これで合ってるのかな」と、不安になることが多い時期でした。自分の「好き」って何だったかな、自分ってどういう人だったかな、と見失ってしまって……。そんなときに救われたのは、エッセイを書く連載のお仕事。エッセイを書く時間は内省の時間。自分はこういうことに不満を持ってたんだ、こういうことがしっくりきてなく消化できずにいたんだ、とか。文章を書く時間がそういう気持ちを浮き彫りにしてくれて、そういう場所があってよかったなと思いました。
挑戦できるチャンスがあるのなら、好きな場所に行かないのはもったいない。歩みはじめた俳優としてのステップ。
10代でデビューした長濱さんにとって「働く」こととは?
今までは、「働く=生きること、生活のすべて」と思っていたので、仕事で落ち込めば私生活も落ち込んで、仕事で嬉しいことがあると私生活もハッピーにと、連動しているところがありました。けれど、いろいろな現場にいかせていただくことが増える中で、仕事に真剣に向き合うみなさんにも、それぞれの生活があって、仕事以外の別の世界があるんだと知ったときに、私も仕事と生活を切り離して考えてもいいんだと思うように。それからは、家ではとことんぐうたらして、逆に仕事では自分の持ってるものすべてを一生懸命出そうと意識して切り替えられるようになりました。
そう思えるようになったのはいつ頃からですか。
ここ1年ぐらいです。今までの仕事もそうだったのですが、お芝居の現場に行くと照明さんや音声さん、ヘアメイクさん、そして演者がいて、みんなで一つの作品を一緒に作りあげていくチームの姿をより目の当たりにしました。今までは、自分がタレントとして支えていただいてるという気持ちがあったのですが、自分もチームの一員に過ぎなくて、フェアな立場でみんなでいいものを作る仕事なんだと実感したんです。自分が表に立っているからといって、何かを背負おうだなんて少しおこがましいというか、うぬぼれていたんだなと、はっとしました。いい意味で、気負いすぎないでいいんだと思えるようになりました。
昨年からは演技の仕事も増えています。活動を再開されてすぐにお芝居もされるのかなと期待していたファンも多かったと思うのですが、活動再開から2年で本格的に演技の世界に挑戦しようと思ったきっかけは何だったのでしょう。
私は、映画やドラマ、音楽、アートなど、もともとエンタメ作品が大好きです。だからこそ怖かったですし、生半可な気持ちでは入ってはいけない世界だと思っていました。本当に命を削るような思いや信念をもって取り組んでいる方たちがいる中に、自分が飛び込んでもいいものかという思いがあったのですが、好きだからこそ逆に作品の裏側を見られることは、すごく幸せなことなのでは思えるようになりました。挑戦できるチャンスがあるのなら、その場所に行かないのはもったいない。そう思ってやってみることにしました。
出演中の2022年度後期放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」、初めての朝ドラはいかがですか。
そうですね。この年齢になると、なんとなくできないことや苦手なことがわかるようになってきて、そこをあえて人に見てもらうとか、できない自分を直視することを避けるようになるんですが、朝ドラではお芝居ができない自分が浮き彫りになりました。ですが、だからこそ共演者の方とのチームプレーだなと実感しました。特に「舞いあがれ!」は、半年から一年という長い時間をかけて作っている作品なので、チームの結束力もすごいんです。じっくりと向き合って作品を作り、そこに反響をいただけるというのはとても贅沢なこと。貴重な経験をさせていただいたと思っています。
新しい世界へと踏み出すときは、戦友たちからの言葉を糧にして。
もともとはグループの中で活動していた長濱さん。アイドルやグループでの経験が、個人での活動に役立っていると思うことはありますか。
すべてアイドルのときの経験がもとになっています。アイドルってすごく不思議な職業で、アイドルって何だろうと活動していたときは考えていました。ライブをして、バラエティに出て、雑誌の撮影をして……。こんなにたくさんのことを自分の実力も伴わないままやってもいいのかなと思っていたのですが、今思うと全部が本当にありがたいお仕事でしたし、あの頃に同世代のメンバーたちと一緒に悩みながら過ごした時間が糧になっています。当時のメンバーは私にとって大切な仲間、戦友という感じ。友達とはまた違った目線で話をしてくれるので、今でもかけがえない存在です。
大変さのベクトルは違うと思いますが、アイドル時代と今、どちらが大変ですか。
大変だったのは、グループにいたときかもしれません。いい意味でも悪い意味でも自分一人の行動がグループに影響すると思うと責任を感じていました。もちろん、個人では別の意味でやったことがすべて自分に返ってくるので、楽しいこともありますし、気が引き締まると思うこともあります。のびのびといろいろなことに挑戦しやすいという意味では、卒業してからの方がよりワクワクすることを見つけられている気がします。
すべての経験が今の長濱さんにつながってるんですね。
気がついたら、もうすぐアイドルを辞めた後の活動期間の方が長くなります。そう思うと、アイドルとして活動していた時間って、実は短かったんだなと。どれだけ濃く、自分の人生に影響を与えてくれた時間だったかということを実感しています。
2021年のVOGUE GIRLの「ギフトリレー」の企画で、俳優の上白石萌歌さんが今年お世話になった友人として選んだのは長濱さんでした。上白石さんとのプライベートの親交はファンの間でも有名ですが、長濱さんにとって上白石さんはどんな存在ですか。
普通の友達とはまた少し違う、尊敬の気持ちが大きいです。だからこそ今何を考えてるんだろうとか、最近は何に興味があるんだろうとか、彼女の考えていることを知りたいと思います。お互いに素敵だな思った展示会や作品、人を共有し合うことも多いです。私は交友関係が広いタイプではないので貴重な友人の一人です。
戦友みたいな感覚ですか?
萌歌ちゃんは年下ですが、先輩のような存在。私が小さい頃からすでにたくさんの作品に出ていて、私自身も萌歌ちゃんのお芝居が大好きで、かっこいいなと思います。そういう人が近くにいるからこそ、私がお芝居をやってもいいのだろうかと思うところもありました。お芝居がすごく好きで、ひと筋で向き合い続けてきた姿を見ているとなお腰が引けます。以前、そんな悩みを相談したことがありました。「お芝居、挑戦しようかなと思ってるんだけど」って。そのときに、すごく喜んでくれて……。「絶対あってるし、見てみたい。いっぱいインプットしてるから、それがどんなふうに出ていくかみたい!」と言ってくれたんです。お互い違うフィールドにいるからこそ仲良くできているのかな、そういうのって関係がギクシャクしてしまうのかなと思っていたのですが、それは私の勝手な思い込みで、もっと深いところで信頼してもらえてたんだということが分かって、さらに特別な友達になりましたし、出会えてよかったなと思います。
その言葉があったからこそ演技の世界へと、踏み出せているかもしれない?
味方がいると思えるのは、すごく大きなことです。お芝居で失敗したり、下手くそだったりしても、そんな存在が近くにいると思うと「えいや!」って、思い切れる気がします。
それぞれの受け取り方で私のことを見てもらえたら。たおやかに変化する柔らかな感性。
自分の性格を分析するとどんな性格ですか。その性格は、この仕事に向いてると思いますか。
興味が湧きやすいので、いい意味でも悪い意味でも変わりやすい(笑)!あとは、内に内に考えてしまうことが多い性格だとも思います。私の仕事はエネルギーや感情を外に発していくことだと思っていたので、それが苦手な私はこの仕事には向いてないと思っていました。ですが、最近いろいろな方とご一緒すると、みなさんにも意外と内に籠っている面があるんだなということに気づいて、このままでもいいんだと気持ちが楽になりました。
MCやラジオ、文筆活動、そして俳優とフィールドごとに見える顔がカメレオンのように変わるのも長濱さんの素敵な個性。場面によって、表情や見せる顔を自分の中で使い分けているのでしょうか。
いろいろな顔があるねとか、会ったときの印象が違うねといわれることがあって、初めは見せる顔が違うと嘘をついてるみたいで、仮面をかぶっているような気持ちで嫌でした。本当の自分はどれだろうと思うこともあったのですが、多分どれも自分だなって(笑)。私自身も本当の自分がどれで、演じている自分はどれかなんてよく分からなくて、全部私。以前は本当の私を知ってくださいと思うこともあったのですが、私自身も分からないのだからそれを押し付けるのはよくないな、それぞれの受け取り方で私のことを見てもらえたらいいんだと思えるようになりました。
仕事で落ち込むことや悩むことはありますか。そういうときはどのように解決しますか。
めちゃくちゃあります。どうして自分はこの人よりもこんなに劣ってるんだろうと比べて落ち込むことも、羨ましいと思うこともあります。そういうときは、乗り越えるというより、一度どん底まで落ち込みます。なので、そういうときに書くエッセイは本当に暗くて(笑)。改めて読み返すと、どうしてこれを世に出してるの!?と恥ずかしい気持ちにもなりますが、それさえもコンテンツにしてしまえばいいやと思うようにしています。落ち込んでるのに、今日もハッピーでしたと発信したところで見抜かれてしまうので。取り繕わずに今の自分を発信した方が、心も健康でいられる気がします。
心の健康、大切ですよね。
セルフラブをテーマに過ごそうとは思っているのですが、落ち込んだり失敗したなと反省したり、誰かのSNSを見て可愛いな、羨ましいなと思うことももちろんあります。信念をもって揺るがないぞと思っていても、気がついたらいろんな情報の中で外に引っ張られてしまうので、私自身、自分の心との向き合い方はまだ模索中です。
長濱さんが紡ぐ言葉に勇気や元気をもらうという人も多いです。長濱さんにとって言葉とは、どんな存在ですか。
言葉に影響を受けて、糧にして、本当に言葉で生き抜いてる感じです。それこそエッセイも、ファンの方にブログが好きだと言ってもらえたことがきっかけではじめたものでした。文章を書くことはそこまで得意だと思っていなかったのですが、私の言葉が誰かのきっかけになっているのかもと思えたことは嬉しかったです。
これまで誰かにかけられた言葉で印象に残っているものはありますか。
特に心に残っているのは、西加奈子さんからの言葉です。10代の
違うものを受け入れる柔らかさを持ちながら、発信できる人でありたい。
長濱さんは読書家でもありますが、VOGUE GIRL世代を勇気づけるための1冊を選ぶとしたら?
人に本をすすめるのは難しいのですが、私は長井短さんのエッセイが好きです。文章が素敵でとにかく面白い!その中に『人に好かれるために雑魚になるのをやめた』というエッセイがあるのですが、“人”に好かれるためにいろんなことを犠牲にして、お笑い役とかをやっているけど、その“人”の中に自分が含まれていないと考えたときにはっとした、というエッセイです。グループの中にいるといじられた方が楽だとか、自分のコンプレックスは先に自虐しちゃった方が楽だとか、私もヘラヘラして過ごしがちだったなと。自分を大切にするって何だろうと考えるきっかけになりました。Aマッソの加納愛子さんのエッセイも面白かったです。『イルカも泳ぐわい』、これはクスクス笑って元気が出る本です。
やはりどんどん出てきますね。
直接的に元気になれるということだったら、ヨシタケシンスケさんの『にげてさがして』、おすすめです。
長濱さんはこれからどのように年齢を重ねていきたいですか。
勇敢な人になりたい。勇敢っていう言葉が好きなんです。チャレンジすることも、違和感がある場所や世界の中で違うと口にすることができるのも勇敢。勇敢であるということは、自立して、自分のことをきちんと大切にできているということだと思うんです。行動の部分でも精神の部分でも勇敢な人には憧れるし、自分もそうなりたいと思います。
次の世代を担っていく一人としては、社会とどう関わっていきたいですか。
私もそうですが、同世代の方にも今の社会に違和感を持っていたり、あれ?と思うことがあったりしても、無知な部分もあるし、自分がそんなことを口にしてもいいのかなと怖く思うことが、時としてあると思うんです。そういう人たちに、自分もそう思っていたと共感してもらえたり、そういう考え方もあるんだと思ってもらえるように、発言できる人でありたいと思います。かといって、堅苦しくならず、違うものを受け入れる柔らかさを持ち、考え方が一緒でも一緒でなくても相手を尊敬できる心を持ち続けながら。
言わないという選択もとることができる中で、発信する強さを持ちたい。
きちんと自分の意見を発言している人たちが私自身好きなんです。その人たちも自分と違う意見をNOと拒絶してるわけではない。自分はこういう意見を持っていると発信している人たちに憧れてるので、そうありたいと淡く思っています。
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PLOFILE
長濱ねる/1998年、長崎県生まれ。読書家で知られ『ダ・ヴィンチ』(KADOKAWA)でのエッセイ執筆や『セブンルール』(フジテレビ系)のMC、『NTT Group BIBLIOTHECA~THE WEEKEND LIBRARY~』(J-WAVE)のナビゲーターなど、幅広いジャンルで活躍。2022年度後期放送のNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』やドラマ『警視庁アウトサイダー』(テレビ朝日)など、女優としても活動の幅を広げている。
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