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変化に順応し続けられる私でいたい。見上愛の軽やかな感性。【次世代を担うフレッシュエナジー】

これからの時代をリードしていく注目の“ゲームチェンジャー”をVOGUE GIRLがピックアップ!今回登場するのは、話題作品や広告への出演が続き、2022年ネクストブレイクの座を独占した22歳の女優・見上愛。もともとは演出家志望だった彼女がたどり着いた、女優という職業。軽やかな感性と柔軟な視点をバネにして、今の居場所でしなやかに飛ぶ彼女の魅力に迫った。

今、自分が求められている場所から。演出家志望からはじまった女優としてのキャリア。

見上さんの今のキャリアは、もともと俳優志望だったからではなく、演出家を志す中でスタートしたものだったそうですね。どのような経緯で、演じる仕事をはじめることになったんですか。
通っていた高校では、授業科目を自分で組まなければいけなかったんです。将来のことを考えはじめて焦っていたときに、私ってもともと演劇が好きだったな、と。演劇に関する道に進めたら素敵だなと思い、まずは所属していたハンドボール部を辞めて、演劇部に入ることにしました。

転部したんですか?
転部しました(笑)。高校1年の途中だったんですが、その頃ハンドボール部を辞める子が他にも何人かいて……。けど、なぜか顧問の先生に私だけ引き留められなかったんです。他の人たちは引き留められてるのに(笑)。そのことが、やっぱり演劇部に入るべきなんだという強い決心の後押しとなりました。

入部してどうでしたか?
入部した日に、人数が足りないからキャストのオーディションを受けてと言われて。何もわからないまま台本を手渡されて読みました。完全に棒読みだったんですけど、人数が足りないので受かってしまって、役をもらえたんです(笑)。1回演じてみて、ちょっと違うな!とそのときは思いました。

ちょっと違うというのはどういうことですか。
椅子から立ち上がる演技ができなかったんです。こんなに簡単な動作ができないなら私は役者には向いていないと思って。そのとき演劇部には、演出と脚本がいなかったのですが、興味もあるし、向いてると思うって言ってくれる人もいたので、そっちでやってみようと。実際にやってみると、脚本はちょっと難しいけど演出は「あっこれだ」と思う感覚があって。照明とかインテリアを決めたりすることも楽しくて、役者ではなく演出家をやってみようと思いました。

その時点で将来のビジョンもある程度決まっていたんですか?
そうですね。そのときに大学も演出を学べるところにしようと決めました。ただ、私が受けたかった大学のAO入試を受けるためには、演劇経験が2年必要だったんです。私の高校は2年生で部活が終わってしまうので、それだと1年しか経験を満たさない。そこで、演劇を学べるところを探しました。高3の1年間はワタナベエンターテイメントスクールに通い、大学にも無事に入学できました。何ヶ月かしたタイミングで、今のチーフマネージャーさんに「女優もやってみない?」と誘われたときに、演出もできるんだと勘違いしていて、所属したら俳優部でした(笑)。

スカウトが、実は役者だったと気づいたとき「本当はこっちじゃなかったのに」という思いはなかったですか?
今は、肩書き関係なくいろいろと活動されている方が多いので、今、自分が求められているものから入るのはいいことだなと思って、そんなに抵抗はなかったですね。

自分の選択に無理はない。人と環境に恵まれてたどり着いた居場所。

順調に一歩一歩歩んで、キャリアは4年目に。この仕事に腰を据えてやってみようと思ったきっかけはどんなことでしたか。
大学4年生になり、友人たちが将来の設計図を書き、就活をしたり就職したりしているのをみていて、私は企業への新卒就職ではなくこのお仕事しか浮かばなかったので、これまで以上に向き合っていきたいと思いました。

この1年、映画やドラマの主演など話題作への出演が続いた見上さんですが、ご自身の中で変化はありますか。
知っていただく機会は増えたと思いますが、特に自分が何か変わったというのはないかもしれないです。この仕事を始める前に出会った友達が周りにいてくれるおかげで、普段特別扱いされることもない。そういう環境にいるからこそなのかな、と思います。

今の場所にはがむしゃらに頑張ってというよりは、たどり着いたっていう感覚の方が近いですか。
そうですね。これまでもその場その場で、選択をしてきたとは思うんですけど、そこに無理があった感じはあんまりないです。苦渋の決断をしたみたいな感覚や今何かを捨てないと、何かができないっていう追い込まれた状況になったことは、振り返ってもなかったような気がします。私自身もともと前向きなタイプではあるのですが、圧倒的に環境と人との出会いに恵まれてきたなと思うことが多いです。本当にありがたいなと思っています。

今年は長澤まさみさんと共演されているJRAのプロモーションキャラクターや阿部寛さんの娘役を演じた映画『異動辞令は音楽隊!』が、見上さんを知るきっかけとなった人もいると思います。俳優の先輩との仕事で学びになっていることや気づいたことはありますか。
長澤まさみさんや阿部寛さんの作品の真ん中に立って凛としているのに、周りへの気遣いや気配りを忘れない姿勢を本当に尊敬しています。自分の役以上に、その作品の責任を背負っているんだなと勉強になります。

かけられた言葉で印象に残っていることはありますか。
長澤さんには、お会いする度に「本当に女優っぽくないよね」と言われます(笑)。女優というより、クリエイターっぽい感じがするみたいなことを言っていただきます。

失敗や嫌な気持ちは内に溜め込まず、あえて笑いに変えてしまう。

見上さんは、自分の性格を分析するとどんな性格だと思いますか。
能天気だと思います。一応自分では、いろいろと考えてはいるんですけど、結果、どうとでもなるかというところに落ち着くので(笑)。大体のことはどうにかなるし、最悪どうにかならなくても大丈夫と気楽に思っているところがありますね。

「最悪そのどうにかならなくても大丈夫」というのは、女優というこの仕事が職業でなくなってもということも含まれますか。
そうですね。女優になったと思う瞬間もあまりないまま来てしまいましたし、肩書きに女優とあるのもまだ不思議な感じがあるので、役者の仕事はもちろん好きですけど、そういう意味ではこの仕事だけというこだわりがないのかもしれません。

見上さんが好きな自分でいるために大切にしていることはありますか。
私、家では1人で喋っていることが多いんです。例えば今日だったら、ドリップバッグのコーヒーを注いでる途中で、ぼーっとしていて溢れてしまって、マグカップの中が粉だらけのコーヒーができ上がりました。「そういうことしちゃうのめっちゃかわいいんだけど」とか、一人でしゃべっていましたね(笑)。失敗とか嫌な気持ちって内に溜め込みがちですが、外に出すとふっと抜けることがあるんです。失敗しても「そんな自分、情けなくてかわいいな」みたいな笑い話にあえて変換するようにします。

そういう性格は、女優という仕事に向いていると思いますか。
仕事を長く続けるとか、ヘルシーに続けるという意味では、私の性格はすごく向いてると思います。でも、この仕事はどうしてもストレスがかかることがあると思うので。役柄によっては、何かを秘めていたり、不幸が起こることもある。今まで多くの人生経験を積んでいる方や、物事を繊細に深く考えてきた方は実感を伴ってそういう役を演じることも多いと思うんです。そういう意味では私には向いていないなと思うことがあります。

 

悩む時間があるなら今、できることをやろう!初舞台で気づいたスランプの乗り越え方。

仕事でスランプに陥ったり落ち込んだりすることはありますか?
そうですね。今年の11月に初めて舞台を経験したのですが、共演者もベテランの方ばかりで。経験が豊富な方にしてみたら、どうしてできないのかわからない、というようなことが、できない、わからないというレベルでした。いろいろな緊張もあったし、自分って本当に全然できないんだという事実を目の当たりにして心がぐしゃっと折れましたね。超えなきゃいけない壁を身近に感じました。

どういう風に気持ちを立て直したんですか。
なるべく毎日早寝早起きをするようにして、夜に考えごとをしないようにしました。そうしたら、初舞台だからしょうがなくない?と思えてきて。自分にとっての初めてって1回しかないのに、それをこんなに悩んで過ごしてももったいないなと。今自分にできることをする時間にした方がいいと思って、悩むのをやめました。

悩みを誰かに相談をすることもありますか。
愚痴は友達に聞いてもらいます。そういうときは話す前に、これは相談でもなくて、答えを求めてるわけでもなくて、最後は自分で決めるから話を聞いてほしいと前置きをして話すんです。付き合いが長い友達はそれがわかっているので、アドバイスのようなことをくれても途中から「でもこれ意味ないな。どうせ見上、自分で決めるな」って言いはじめるんですけど(笑)。その考え方は私にはなかったなと思うこともあって。答えのヒントになることは友人たちからたくさんもらっていると思います。

もともと好きだった舞台の世界、好きなことが仕事になっているその感覚はどうですか。
当たり前ですが、観るのとやるのとは違うんだなと思いました(笑)。観るのはただ純粋にすごく楽しいのに、舞台に立つってこんなに大変なんだとか、いつも見ている俳優さんたちはこういうふうに取り組んでるんだとか、こんなに難しいことだったんだと思いました。

一番のカルチャーショックってどんなことですか。
映像と舞台では声の出し方や振りの大きさ、そういうことが全く違います。映像作品で今まで演じてきた役は、表情を表に出さず、思っていることをいかに隠して演じるかというところに重きを置くことが多かったのですが、今の舞台はどうすれば感情や表現がわかりやすく伝わるかということも大切。観ている側のときは映像と舞台の違いをあまり考えずにいましたが、声のトーンや間のとり方、動きのスピード感で伝えるということを実際にやってみると、違いにびっくりしてカルチャーショックでした。それを当たり前のように俳優の方々が使い分けていること、映像作品の合間に舞台の稽古をされているのを見て、一瞬で切り替えていることにもただただ脱帽します。

忙しい毎日だと思いますが、舞台観劇もしていますか。
はい。稽古がはじまる前に「イキウメ」という劇団の作品や以前ご一緒した加藤拓也さんの作品を観ました。

そんな見上さんが演劇で今、一番共演してみたい方はどなたですか。
うーん、たくさんいすぎて(笑)、難しいですね。劇作家・演出家KERAさんの作品にいつか出たいという夢があります。舞台の稽古をはじめて、今の自分の実力じゃ出られたもんじゃないなということも痛感しているんです(笑)。もしチャンスをいただけるなら全力で頑張りたいです。

お気に入りのリラックス方法はダラダラしながらアニメを見ること。

女優の河合優美さんとは大学で見上さんが声をかけて仲良くなったとか。人と仲良くなったりコミュニケーションをとるのは得意ですか。得意意識はあまりなく、信じられないと言われることもあるのですが結構人見知りします。舞台の顔合わせのような大勢の場では一言もしゃべることができなかったな、と思う日があるくらい。ただ、一対一のコミュニケーションは大丈夫なんです。優実の場合は、一人で歩いてて、しかも本当にかわいくて、今を逃したら一生この子に会えないのかもしれないと思ったら、嫌われてもいいから今この瞬間を逃したくないなと。声をかけたときは女優をやっているなんて知らなかったので、声をかけたはいいものの何を喋ろうって(笑)。何学科ですか?みたいところから入って気づいたら仲良くなっていました。

ここからは見上さんのよりパーソナルな部分も聞かせてください。今見上さんが一番興味があることは何ですか。
最近は、陶芸にはまっています。近所に住んでいる中高の同級生の友人が彫刻家なんですが、陶芸もするからって家に窯を買って。大きい電気窯みたいなものがあるんです。粘土や釉薬を割り勘で買って、自分の家で作ったものを乾燥させてから、自転車で友人の家に持っていって焼いてもらいます

今日頑張ったなと思う日に食べるご褒美ご飯は?
冬だったら白子かあん肝を食べます。夏だったら牡蠣。最近は白子のパスタを食べました(笑)。

好きな香りはありますか。
シトラスとウッディが混ざっているような香りが好きです。2つ好きな香りがあって、そのうちの1つはハンドクリームやルームフレグランスを出してるのでそれを使っています。私の家の中は、完全に森の香りがしています(笑)。

お気に入りのリラックス方法はありますか。
ダラダラしながらアニメを見ること。今期はおもしろいものが多いのですが、アニメ『モブサイコ100 Ⅲ』に間に合うように、過去のシーズンを見はじめたら本当におもしろくてハマっています。

見上さんが思う自分のチャームポイントはどこですか。
表情豊かだねとよく言われるので、それですかね。顔に全部出ちゃうみたいな(笑)。

怒りの感情が出ることもあるんですか。
それはあまりないですね。人に対しても自分に対しても怒りを覚えることがあまりないかもしれません。絶対に怒った方がいいことや自分に厳しくした方がいいこと、憤りやもどかしさも、さっき話したみたいにあえて笑い話にしたりヘラヘラしたりすることでちょっとポップにしたりして(笑)。良くも悪くも重い負の感情になる前に消化してしまいます

今日の“普通”や“当たり前”が、明日には違うかもしれない。だからこそ、順応し続けられる自分でいたい。

今後、チャレンジしてみたいことを教えてください。
やってみたいことはたくさんあります。喫茶店をやりたいというのはずっと言っていて、友達とは雑誌を作りたいねと話をすることもあります。映像、写真、アートなど、異なる分野でそれぞれ得意なことがある友人が多いので、以前展示会をしたこともあるんです。そのグループ展も楽しかったので、もう1回やりたいなと思っています。

見上さんにとって素敵な大人ってどんな人ですか。
生活をきちんと大切にできる人。仕事に一生懸命な方はもちろんかっこいいと思うのですが、それだけじゃなくて毎日の生活にも重きを置いている人。今日はちょっといいコーヒーを飲もうとか、友達や家族と過ごす時間を大事にするとか。そういうことは心に余裕がないとできないし、余裕って自分で意識しないと生まれないところがあると思うので、丁寧に生活できる人は素敵だと思います。

見上さんが同世代のガール読者に伝えたいことはありますか。
何かに縛られていたり、プレッシャーを感じたりしている人たちが私のまわりにも多いなと思うのですが、人って思っているより他人に無関心だったりもするし、世界は意外と広くてどうとでもなったりする。みんなもっと自由に生きて大丈夫だよって思います。私は今、自由に生きていて楽しいので。

今度、女優という仕事を通じて、世の中とどういうふうに関わっていきたいですか。
今は、ものすごいスピードで世の中が動いていて、今日の“普通”や“当たり前”が、明日には違うかもしれないと思うことがたくさんあります。だからこそ、その空気や流れみたいなものに順応し続けられたらいいなと思いますね。私から何かを発信するというよりは、何かに固められてこういうふうに考えなきゃいけないとか、こういうものなんだみたいな自分のルールを作り過ぎずにいられたらと思っています。

 

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  • PROFILE

    見上愛2000年生まれ、東京都出身。女優。2019年デビュー後は、ドラマ「きれいのくに」(2022・NHK)やW主演映画『衝動』などに出演。2022年、JRAの年間キャラクターに長澤まさみとともに抜擢され注目を集める。映画『異動辞令は音楽隊!』やW主演ドラマ「liar」など、活躍の幅をさらに広げた2022年。現在初舞台となる「ツダマンの世界」に出演。2023年1月27日より公開予定の映画『レジェンド&バタフライ』にも出演する。

  • SHOP INFO

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MODEL:AI MIKAMI PHOTOS:YUTARO YAMANE @ TRON STYLING : MICHIE SUZUKI HAIR & MAKE UP : MASAYOSHI OKUDAIRA  EDITOR:SAYA YONEKURA
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