VOGUE GIRL LINE Twitter Facebook Pinterest Instagram mail
VOGUE GIRL+ マイページへ

写真からラーメンまで!? マルチな顔をもつクリエイターが実践する軽やかな働き方とは。【中条あやみが学ぶ、プロたちの⼼意気VOL.5】

プロの仕事の極意に迫る、中条あやみの人気連載。今回はファッション業界でも活躍する写真家、嶌村吉祥丸さんがラーメン屋をオープンさせたと聞きつけ、訪ねてみることに。写真表現にとどまらず、ユニークなプロジェクトを次々と仕掛け、周りを巻き込んでいく彼。そのジャンルにとらわれない柔軟な発想力や、人生を豊かに楽しむための「新しい働き方」についてお話を伺いました。


 

お話を伺ったのは…
写真家の嶌村吉祥丸さん。

大学在籍中にアーティストのキャリアをスタート。ポートランドに留学後、広告代理店で働きながら、自身の個展も開催するなど、独自のコミュニティを築いてきた吉祥丸さん。現在は広告やファッション撮影などを手掛ける傍ら、武蔵小山のオルタナティブスペース「same gallery」を運営しつつ、渋谷のコミューン的複合施設「JINNAN HOUSE」でギャラリーのキュレーションを担当。写真を本業としながらも、映像監督やギャラリーキュレーター、アートブックフェアやフリーマーケット、ラーメン、陶芸と多彩な企画・展示などを、驚くほど軽快に仕掛ける。「吉祥丸さんって、今、何屋さん?」と思わず口にしてしまう、そんな気になる存在に、中条さんがインタビュー。仕事を通じて会うのは2回目だけど、びっくりするくらい早く打ち解けていたふたり。クールに見せかけて人懐っこく、人の心にするっと溶け込む、そんな不思議な魅力を持つ新しいカタチのクリエイターと、その素顔に迫ります。

写真を撮りはじめたきっかけと、
自由な両親からの影響。

中条あやみ(以下A);吉祥丸さんが写真をはじめようと思ったのは、何歳の時?

嶌村吉祥丸(以下K):10代の終わり頃です。祖父が趣味で写真をやっていたので、ある時初心者用のデジタルカメラを借りて写真を撮り始めました。

A:生まれはどちらなんですか?

K:東京です。

A:え、もしかして大金持ちの息子さんだったりして!?(笑)

K:いえ。実家は持ち家ではなかったので、普通の家庭です。

A:あ、そうなんですね。名前が個性的だったから、つい(笑)

K:名前は親父の思いつきらしいです。

A:ご両親は何をされている方だったんですか?

K:母親はもともとNPO団体でDVやいじめをなくすための活動をしていて、いまは大学で非常勤講師をしています。父親は元々スタントマンをしていたり、ジャーナリストと一緒に世界中を旅して、地雷除去の活動に参加していたりしましたね。小さい頃は、家にいないことも多かったです。

A:やっぱり! そんな自由なご両親から、吉祥丸さんみたいな人が生まれるのは、すごく納得。

背景の「ストーリー」に思いを巡らし、
どう関わるのがベストなのかを考える。

中条あやみ(以下A):仕事をする上で、気をつけていることは? 例えば私の場合は、言葉ひとつで人に影響を与える可能性があるので、発言にはすごく気をつけるようになりました。

嶌村吉祥丸(以下K):そうですね…。言葉に比べると、写真は解釈の余地が広くて、より自由度が高い気がします。一方で、自分が撮った広告が人の目に触れることで、何かしらその人の人生に影響を与える可能性もある。だからこそ、誰かを傷つけていないかとか、その仕事のエネルギーが何に向かっているかは特に気にしていますね。

A:撮ったら終わりじゃなく、その先にも想像力を膨らませることが大事だと。じゃあ、仕事が動き出すまでのストーリーや、背景をすごく大切にされていますか?

K:人を撮るときは、その人がどのような経緯で現在に至っているのか、そして手がけている音楽や映画などがあれば作品をできるだけ観るようにします。そうすると現場での理解や接し方が全然変わってくると思っています。

A:吉祥丸さんに初めて撮ってもらったとき、「あれ、前から知っていたんだっけ?」と不思議な気持ちになったのを思い出しました。ひとりの人間として見てもらっている嬉しさ反面、見透かされているような怖い感覚もあって。

K:その感覚はうれしいですね。しかし、事前にいくら準備していても自分が思い描いた通りにならないことも多いです。シュミレーション通りにならなかったとしても、リスペクトをもって相手に寄り添い、その状況に合わせてどう関わるのがベストかを考え続けるようにしています。

A:吉祥丸さんって人の懐にすっと入っていくというか、被写体との距離の取り方がすごく上手なんですよね。それが写真にも表れていて、写真を観る人も、撮られる人も、惹きつけられちゃうのかも。

K:俳優やモデルなど、表で活躍されている方のイメージは誰かに演出されていたり広告的に作りこまれていたり、外から作られることが多いと思います。だから僕が写真を撮るときくらいは、そういった「作られてしまった」イメージをなるべく剥ぎ取ってあげて、その人間らしさを捉えたいという思いがあります。

この記事の続きを見るには
LINEでVOGUE GIRL+の会員になる必要があります。

VOGUE GIRL+についてはこちら!
  • VOGUE GIRL+は有料サービスです
  • すでに入会済の方は、VOGUE GIRL公式LINEアカウントより、このページへアクセスしてください
  • VOGUE GIRL+限定記事の対象環境は、スマートフォンLINEアプリのみとなります。パソコン・タブレットは対象外となりますことご注意ください
  • 利用にはLINEの最新バージョンが必要となります

仲間との陶芸プロジェクトでは、
寄付を通して、社会問題にもコミットを。

中条あやみ(以下A):写真家として活動しながら、ギャラリーのキュレーターを務めたり、ラーメン屋をオープンしたり、ほんと多才ですよね。最近は「conel」という陶芸プロジェクトも始められたと聞きました。

嶌村吉祥丸(以下K):ラーメン屋のオープンにあたって、せっかくならドンブリも作りたいねと思い立ち、アーティストのKotaro Yamada氏の協力のもと、身近な友人に声をかけてスタートしました。参加者は陶芸未経験者ばかりですが、だからこそその人らしさが陶芸のプロセスに出ていたり、毎回新鮮な気持ちで土を捏ねています。完成した作品はギャラリーで展示し、オンラインでも販売しています。

A:これは社会活動の1つでもあって、売り上げの20%は寄付されているとか。

K:陶芸を構成している「土」と「水」と「火」という原始的な要素にちなんで、例えば「水」なら海洋汚染、「火」なら再生可能エネルギー、といったテーマに対して売り上げの20%が支援団体に寄付される仕組みをとっています。どの団体に寄付をするかは、作品の内容や貢献したいテーマによって、作家自身に選んでもらっています。

A:ステキな試みですね。プロジェクトは全部ひとりで仕切っているんですか?

K:そうですね。参加者のスケジュール調整や、アトリエまでの送迎をしたり、作品のブツ撮りから寄付先のファクトチェックなども行っています。

A:えーすごい。いつ寝てるんですか?

K:それが全然寝てるんです。今日なんか9時間くらい寝てました。

A:吉祥丸さんって表現のアウトプットの幅がすごく広いですよね。寄付だってプロジェクトの一環としてちゃんと組み込んでいるし、企画力がすごいなって。

失敗も、捉え方次第でプラスになる。
まずは行動しなければ始まらない。

中条あやみ(以下A):吉祥丸さんってフットワークが軽いのはもちろん、自分が関わったことが社会や人にどんな影響を与えているか、しっかり考えて行動できていますよね。

嶌村吉祥丸(以下K):まず自分のできる範囲で形にしてから、少しずつ軌道修正したり組み立て直していけばいいと思います。どんなに小さい規模でも、実際に行動してみることが大事。

A:写真も独学だし、興味があることにどんどん挑戦して、周りをうまく巻き込んで形にする力がすごいなって思うんですが、怖さはないんですか?

K:もちろんありますが、周りを巻き込む以上は責任を持って事前にしっかりと準備をしたり、様々な視点で物事を捉えるように心がけています。

A:じゃあ、これまで失敗はしたことはない?

K:ありますよ。大学生の時、起業を思い立って30人くらいのチームを作ってプロジェクトを動かしていたのですが、結局その話は会社設立まで行かずに終わってしまいました。自分がやりたいと言って仲間が集まってくれたのに、自分の責任でそれがなくなってしまったことは、仲間に対して申し訳なかったですし、とても悲しいことだと学びましたね。

A:でもそのときの苦い経験が、今に生きているんでしょうね。

K:そうですね。ある側面から見れば失敗でしたが、別の面から見たらそうでもなかったと信じたいです。すべての事象がプラスなものかマイナスなものかは、視点や捉え方次第だなとも思います。

大好きなラーメンでみんなを喜ばせたい。
思い立ったことは、シンプルに形にするのみ。

中条あやみ(以下A):そして、今日はラーメン吉祥丸のオープン日とのこと!

嶌村吉祥丸(以下K):中条さんが一人目のお客さんです!

A:おお、責任重大! なぜラーメンを始めようと思ったんですか?

K:昔からラーメンばかり食べていたので、よく友人におすすめのラーメン屋さんを聞かれたりもしていました。いつかやりたいと冗談半分、本気半分で昔から言っていて。元々ラーメン屋をしていた料理人の横山祥太郎氏に声をかけて、ヴィーガンでも食べることのできるラーメンを考案しました。

A:(早速食べて…)さっぱりしてるけど、ダシや旨味がしっかり出ていておいしい!ラーメンといえば、普段私はとんこつ派なんですが、これはまた別の味わいですね。

K:ありがとうございます。醤油ベースのスープに、仕上げにお茶で香りを出した油を入れています。味はしっかりしているのに、いつでも食べたくなるような味にしています。麺も卵は使っていません。

A:うん、麺もおいしいし、本当にバランスがいいし、さらっと食べられる! 私も、いつかおにぎり屋さんをやりたいって、ずっと思ってるんですけど、思いたてばいくらでも形にできるのかなって、今日、いろんな話を聞いて思っちゃいました。

K:ここのラーメンは金曜日しかやっていないので、木曜日とかにおにぎり屋さんをやったらどうですか?

A:いつもこうやって会話しながら、自然と人を巻き込んで、いろんな企画がはじまるんですね!

目指すは、みんなを繋ぐ「ハブ的」存在。
関係することで、誰かが少しでも幸せになれば。

中条あやみ(以下A):今日見せてもらったのは、プロジェクトのほんの一部だと思うんですけど、全てに共通して大事にしていることってありますか?

嶌村吉祥丸(以下K):やっぱり誰かが辛い思いをしたり、自分も寝れない日々が続くっていうのは良く無いと思います。無理をしない範囲で、自然な流れを大切にするようにしています。ちょっとでもやりたくないことはやはり続かないと思いますし、本当に自分がやるべきことに向き合っていきたいですね。

A:でもオファーをいただいた義務感もあるなか、やりたい仕事を選んでいくって結構難しいですよね。でも吉祥丸さんって、ピュアな感覚で自然とできてそう。だからこそ、今のスタイルが成り立つのかも。

K:僕がいつも思っているのは、人と人を繋げたり、人とものの間にいたり、何かのきっかけをつくる“媒介者”として存在したいということ。「これは吉祥丸が撮った写真です」というよりも、そこにただ「写真が存在している」くらいが理想。自分の存在は、極力ゼロに近づけたいです。

A:存在をゼロにしたいっていう思いと、吉祥丸さんの「顔出ししないポリシー」がやっと繋がりました!

K:最近感じたこととして、SNSやインターネットを通して社会全体を誰でもインスタントに知ることができる一方で、個人が必要以上に大きなスケールで物事を考えてしまうことがあると思います。もちろん、俯瞰の視点を持って社会全体を考えることも重要だと思いますが、まずは隣にいる人とか、目の前にいる人と向き合っていくことが大事だと思います。自分が関係することで、誰かが少しでも幸せになったり良い影響を与えることができるのなら、そこに僕が存在する意味がある。それでいいんだと思います。

いつの時代も、求められるのは人間性。
何事もこなさず、真摯に向き合いたい。

中条あやみ(以下A):では最後にお聞きしたいのですが、吉祥丸さんにとって「仕事」とは?

嶌村吉祥丸(以下K):「働く≒生きる」ということなのかなと思います。客観的に見たら仕事をしているとも言えますが、実際はただ生活をしている中の一場面に過ぎないとも言えます。

A:生活の一場面、と思えたら最高ですよね。

K:それでいうと、女優業ってオンオフの境目が難しそうですよね。

A:写真にしてもお芝居にしても、必ず「素」は出てしまうと思っているので、自分がどうしたいのかは常に考えているし、所作にもすごく気をつけていますね。

K:日常の些細な言動が、その人の“人となり”を形成していますよね。いまはAIやテクノロジーも発達していますが、だからこそ人間らしさとか手触りみたいなものが求められているとも思います。

A:結局、誰かの人間的な部分を、みんな求めているんですよね。機械的になっちゃえば便利なことも多い世の中ですが、私は心を込めてひとつひとつやりたい。

K:こなしたら、それまでになってしまいますよね。その時々によってスタイルを変えながらも、根本的な思想や姿勢はきっと変わらないと思います。

A:いろんな仕事に、軸はブラさず真摯に取り組む。今日はその醍醐味を学んだ気がします。ありがとうございました!

  • AYAMI'S WARDROBE

    ザ・ロウ・ジャパン 03-4400-2656
    ノウハウ ジュエリー 03-6892-0178

  • ラーメン吉祥丸

    ラーメン吉祥丸

    毎週金曜日夜にオープンするフードトラックスタイルのラーメン店。ビーガンでも食べることのできるラーメンは、料理人の横山祥太郎氏(@yokoyama.shotaro)とともに開発。

    ラーメン吉祥丸に合わせて、JINNAN HOUSE内にあるHAUS STUDIOでは、 陶芸プロジェクトconel(@conel_lab) の作品を販売中。普段陶芸に関係のない様々なジャンルの人たちが集結して作られたラーメン丼や器、花瓶、お香立てなどがラインナップ。conelでの売上は、20%を”水”: 海洋汚染 ”土”: 自然保護 ”火”: 再生可能エネルギーに対して寄付される。

    東京都渋谷区神南1-2-5 JINNAN HOUSE内
    https://jinnan.house/

PHOTO & VIDEO: SOPHIE ISOGAI @ KIKI inc.
HAIR & MAKE-UP: MAKI
STYLING: SHIZUKA YOSHIDA
WRITER: YURI TANAKA
EDITOR: YUKIKO MOROOKA

INDEX

Swipe!
Swipe!