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大自然と生き抜く海女さんに学ぶ、たくましさと謙虚な心。【中条あやみが学ぶ、プロたちの⼼意気VOL.4】

中条あやみが憧れのプロにインタビューする人気連載。今回はドラマをきっかけに存在を知り、その生き様に惚れたという「海女さん」のもとに1日弟子入り。素潜り体験や対談を通して、海を相手に身ひとつで勝負する女性のたくましさ、自然に身を委ねたシンプルな暮らしの魅力を紐解きます。


 

今回、話を伺ったのは………
海女の鈴木祐美子さん。

千葉の南房総で古くから行われるアワビの素潜り漁。この伝統をいまに受け継ぐのが、今回のゲストであり海女歴15年のベテラン、鈴木祐美子さん。この地域は、三重の志摩、石川の能登と並び、素潜り漁が盛んな地域。鈴木さんが潜っている地区は特に高齢化が進んでいて、いま漁を行うのは、男性の海士さんと、女性は鈴木さん一人だけ。そんな話も織り交ぜながら、母娘3代に渡って継承される“海女の極意”についてインタビュー。一度はやってみたかったという素潜りも体験させてもらうことに。

まずは漁に欠かせない4つの神器をチェック。左のヘラがあしらわれた棒は、アワビを岩から剥がすときに使う「磯がね」。その右にあるコの字型の金具がアワビを測る「尺棒」で、漁業組合が定める規定サイズ(12cm)より1mmでも小さければ、海に戻す決まりになっているそう。収穫したアワビは「タマリ」と呼ばれる筒形の網へ。木製の「浮き樽」は沖に出るときや水上で休憩するとき、浮き輪がわりとして使用。樽には長いロープがついていて、潜水する際の命綱となるそう。

規定サイズに満たないアワビは海に返すほか、海の生態系を守るために、漁にはいくつか決まりごとが。その1つがウェットスーツの禁止。海に長時間入ってアワビを乱獲しないよう、ダボシャツに半股引(はんたこ)というスタイルで漁を行っている。ちなみに取材時はまだ水温が低かったので、中条さんは下にラッシュガードを着て参加。「海女さんの衣装といえばこれですよね。白装束の理由は、海で目立つことに加え、魔除けの意味もあるそうで。改めて神聖なお仕事だなって思いました(中条)」

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実は今回教わるアワビ漁、漁業権をもつ人しか行えないという厳しいルールがあり、違反すると罰則も。ということで今回は漁業組合の監修のもと、事前に用意されたアワビを使って、岩から剥がす練習を行うことに。ベテランの鈴木さん曰く、アワビは傷をつけたり、変に刺激を与えると吸い付きが強くなってしまうので、優しく勢いよく剥がすのがコツ。名人と呼ばれる人で、1回の漁で30枚くらいは採ることができるそう。

南房総・千倉で獲れるアワビは、黒潮の荒波に揉まれているため、ほかの地域に比べて肉厚なのが特徴。そのぶん採るのも大変で、600グラム以上ある激レアな黒アワビに至っては、1キロあたり5万円以上の市場価格になるのだとか。「今回は赤アワビで練習を行いましたが、それでも吸着力がすごくてびっくり(笑)。傷つけないように捕獲するには、力も知恵もすごく必要で。この一連の流れを水中で行うなんて、海女さんってやっぱり只者じゃないなって(中条)」

アワビの剥がし方を習得したら、鈴木さんといざ海へ。素潜りは体力を消耗するため、海に入っていられるのは1回の漁につき3時間。岸から1kmほど離れた場所まで泳いでいき、そこを拠点に漁を行うそう。潮の流れによっては、ポイントにたどり着くまで片道で1時間くらいかかることも。「漁は誰かに教わるものではなく、先輩たちの背中を見ながら、自らのカンと経験を頼りに行うもの。私もやっと15年かけて、脳内に自分だけの宝の地図をつくることができました(鈴木さん)」

沖まで泳いでいくときは「浮き樽」が大活躍。上にお腹を乗せて泳ぐには、かなりのバランス感覚が必要だけれど、特技が水泳というだけあって、中条さんは難なく1回でクリア。ダイビング免許を持っていることもあり、潜水も見事にこなし、持ち前の運動神経の良さを発揮。「潜れたといっても、思っていたより身体が早く浮き上がってきちゃって。これで水深5-6mも潜るなんて、神業でしかないですよね(中条)」

最後はお借りしたアワビを手に、お決まりの「とったどー!」ポーズ。水の冷たさはどこへやら、憧れの素潜り体験に大満足の中条さん。師匠の鈴木さんからも「こんなに楽しそうに潜る人はなかなかいない。海女に向いていると思いますよ!」とお墨付きの言葉をいただきました。


 

冷え切る身体と闘いながら、何度も海へ。
想像以上に過酷な「海女」という職業。

中条あやみ(以下N):30分海に入っただけでも、身体ってかなり冷えますね。いつも漁のあとは、こうやって小屋で火を囲むんですか?

鈴木祐美子(以下S):そうですね。1回の漁でトータル3時間ほど海にいるのですが、ほんとうに身体の芯まで冷え切ってしまうので、終わったときの疲労感は想像以上です。着替えて2-3時間は火の前で暖まらないと、汗も出てこなくて。夏は日焼けで真っ黒になるし、海女さんって大変だなと、幼いころから思っていました。

N:水深5-6メートルまで潜るとなれば、さらに疲労は何倍にもなりますよね。

S:そうですね。1時間くらい潜ったら、陸に上がって火にあたり、また海に戻って…を繰り返す感じで。昔は祖母や母親、仲間の海女さんたちと、小屋で火を囲みながらいろんな話をしました。

N:海女さんの数が減っているのは、地域に若い人がいなかったり、過酷な仕事内容も影響しているんですか?

S:結局、肉体労働に近いので、やりたいって言う人があまりいないのかなと。そもそも海女になるには漁業権が必要なんですが、その権利を取得すること自体も大変で。やりたい思っても、なれる保証はないんですよね。私も親から権利を譲り受けて、いま海女をやっているので。

N:そういえば昔、この地域の女性のほとんどが海女さんだったと聞きました。みなさん上半身裸で漁をされていたとか。

S:私の母親世代だから、いま80歳前後の方々までですかね。いまは祖母も母も他界し、先輩たちもみんな引退しちゃったので、私がこの地区の最後の海女です。最近はひとりで漁に出ることが多く、仲間がいない寂しさはあります。

N:今回はじめて素潜りを経験し、アワビ1つ採るのにも物凄い労力が必要ということがわかり、食のありがたさを痛感しました。これからは気持ちを正して、1つ1つ噛み締めていただかなきゃって。

海の生態系を守ることも、海女の使命。
謙虚な気持ちで、自然と向き合う。

中条あやみ(以下N):お母さんの大変な姿を見ていたのに、なぜご自身も海女さんを目指すように?

鈴木祐美子(以下S):歳を重ねたせいなんですかね。若い時は東京に出て、ファッション系の仕事をしていた時期もありました。でも結婚を機に地元に戻ったら、海女さんの数がぐっと減っていて。周りから勧めもあり、嫌々ながら私も手伝うようになったんですよね。すると思いのほかハマってしまい、気づいたら15年が経っていました(笑)

N:昔は無理だと思っていたのに、楽しいと思えるようになった。その理由とは?

S:海に入ったときに、なんともいえない心地よい気持ちに包まれるんですよね。受け入れてもらっているという感じで。自然ってほんとうに偉大だなと。

N:謙虚な気持ちで、自然に身を委ねるみたいな感覚でしょうか?

S:まさにそうで。焦って探していると、1時間探しても1個も見つからない時もあるんですよ。精神的に落ちついていないとダメで。気持ちを沈めて挑むしかないんです。

N:アワビ漁は限られた期間で行われ、必要以上に採ってはいけないなど、掟もあるそうですね。

S:海水の温度が上昇したり、台風で土砂が流れこんだことによって、年々アワビが少なくなっている状況もあって。1cm成長するのに1年と、アワビは大きくなるまでに時間がかかるのでしょうがないですね。

N:酸素ボンベを使って漁をしないのは、乱獲を防ぐためという話を聞いたんですけど、やっぱり採りすぎるとダメなんですかね?

S:そうですね、たくさん採りすぎてしまうと、次の世代まで引き継げないとか、そういった理由もあるし。10年、20年後の未来のために、みんなが約束を守っています。

N:海女になりたいといったとき、お母さんはなんておっしゃいましたか?

S:すごく喜んでくれました。実は私が海女になると決めたとき、母は体調不良で漁を休んでいたのですが、私と一緒に潜り始めると、いきいきと仕事をするようになって。

N:跡を継ぐ人ができて、お母さんも嬉しかったんでしょうね。いまは漁の時期以外は、何をして過ごされていますか?

S:海が見えるカフェ「ストロベリーポット」を営んでます。地元千倉産の天草から作った みつまめやあんみつ、ところてんを提供しています。ほかにも農業をしたり、季節の流れに身を任せながらのんびり暮らしています。

伝統の火を絶やさぬよう、
80歳まで、海女を続けていたい。

中条あやみ(以下N):ちなみに海女さんは、一回の潜水でどのくらい潜っていられるものなのですか?

鈴木祐美子(以下S):潜水はおそらく30秒ぐらいだと思います。プールのような穏やかな環境なら、もっと長い時間潜れると思うんですけど、海は潮の流れもあるし、アワビを捕まえるには脳をよく使うので、酸素がすごく必要なんですよね。だから思ってるほど長く潜っていられないんです。

N:ベテランの方になるほど、潜水時間も長くなるのでしょうか?

S:そうですね、潜水時間も長いですし、丘の上では歩くのもやっとみたいな人も、海の中では生き返るように動き出したり。

N:じゃあ縁側に座ってたようなおばあちゃんが、実は漁に出るとすごい!みたいなこともあるんですね。

S:そうです、海に入ったら別人のように!

N:鈴木さんは海女歴15年だそうですが、いつまで海女のお仕事を続けるつもりですか?

S:身体が動く限り、できれば80歳くらいまでは続けたいと思っています。いま、南房総の女性の海女は私1人になってしまい、伝統を残したいという気持ちがすごく強くて。正直、この白い衣装を着なくても海に入れるんですけど、私が海女でいる間は、母の代から引き継いだスタイルをそのまま残そうと。なので、カフェ用に立ち上げたブログでは、海女の暮らしについても発信しています。

N:ネットを通じて、もっと若い世代に海女さんの魅力が伝わるといいですよね。では、最後にお聞きしますが、鈴木さんがプロとして大切にしている信念とは?

S:自然への感謝の気持ちを忘れず、ルールを守って漁を行うということですね。海女という仕事を未来に受け継いでいくには、海の生態系を壊さないことが大切で。先代から引き継いだ古きよき伝統をしっかり守りながら、これからも漁を続けていきたいです。

N:大自然のなかで生かされているという謙虚さと感謝の気持ちが何より大切ですね! 本日はありがとうございます。

 

 

※ 無許可でのアワビやサザエ、伊勢海老の捕獲は禁止されています。本企画は漁協組合監修のもと撮影しています。

  • PHOTO & VIDEO: SOPHIE ISOGAI @ KIKI inc.
    HAIR & MAKE-UP: MAI OZAWA @ MOD’S HAIR
    WRITER: YURI TANAKA
    EDITORS: GEN ARAI, YUKIKO MOROOKA
    SPECIAL THANKS: YOICHI HORIE @ MASAEMON

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