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映画づくりの影の立役者“フォーリーアーティスト”の音作りに密着!【中条あやみが学ぶ、プロたちの⼼意気VOL.2】

中条あやみがゲストエディターとなり、憧れのプロたちから仕事の流儀や人生の哲学を学ぶ人気連載。第2回目は映画の効果音を制作するクリエイター、北田雅也さんの仕事現場を訪問! 同じ業界にいながら、普段はまったく接点を持つことがない二人。ベールに隠された仕事の面白さを、お仕事体験を通して紐解きます。


 

 

数ある職種の中でも中条あやみがずっと気になっていたのは、足音や衣ずれなどの動作音、犬やモンスターの鳴き声まで、ありとあらゆる音をクリエイトして映画に奥行きを与える「フォーリーアーティスト」という仕事。「あるとき自分の出演した映画を観ていたら、収録時になかった音が足されていることに気がついたんです。現場でお会いしたことがなければ表舞台に出られることもほぼない、まさに縁の下の力持ち。一度その仕事ぶりを覗いてみたかったんです。(中条)」。

調布にある音響効果専門の録音スタジオで私たちを迎え入れてくれたのは、30年にわたって「効果音」を作り続けるこの道のプロ、北田雅也さん。「音だけを専門に録るのは、映像に臨場感や厚みをもたせる目的だけでなく、海外で吹き替え版が作られることなども想定し、環境音や人間の動作音はセリフとは切り離して個別にボリューム調整できるようにする必要があるため。仕上げのミキシングの時に個別に用意した音を適切にミックスするのが映画音響の作り方です。登場人物の心理を描く心臓の音や、サスペンス感を演出する足音は、役者さんたちがクランクアップした後に、僕たちフォーリーが映像を見ながら録音しているんです(北田)」

スタジオにある一見ガラクタに見えるものは、すべて効果音づくりに必要な商売道具。一見脈略なく並ぶものが、北田さんやアシスタントさん達の手にかかれば、まったく想像できないようなシーンの音をつくり出す。「人が銃で撃たれるシーンは、パイナップルを人体に見立ててそこに鞭を打ち付けたり、内臓が飛び出るシーンは、びしょびしょの雑巾を床でギュッと絞って音を出すなんて……驚きです。そして映画の濃厚なキスシーンも、フォーリーの方が自身の腕と唇を使って作り出した音を、上から重ねていると聞いて、今度から映画の見方がガラッと変わりそう(中条)」

今回、話を伺ったのは…… 効果音を操る達人、北田雅也さん。

仕事内容によって、サウンドデザイナー・サウンドミキサー・フォーリーアーティストと複数の肩書きを使い分ける北田さん。効果音の制作だけでなく、作品の音全体をデザインしたりミックスを手がけたり、ときには一人で何役もこなしているそう。これまでに塚本晋也、豊田利晃などカルト的人気を誇る監督の作品から、『ハウルの動く城』や『ドラえもん』、『バイオハザード7 レジデント イービル』といった話題作まで、ジャンルを限定することなく幅広い作品に携わっている。「とはいっても、僕は最初からこの道を志したわけでなくて。運任せでここまでやってきた部分が大きいんです(北田)」

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ガラクタのような小道具から生まれる、 豊かな効果音の世界を体感!

フォーリーの世界に触れるために、まずは手始めとしてアクション映画でよく見かける、決闘シーンを再現することに。使ったのはパティシエ用のパレットナイフや、音が良く出るように工夫された音響効果用の刀。作られている刃の長さや形の違いで、音が長く伸びたり、逆に乾いた音が出たりと、響き方が異なってくるところが面白い。「本当の刀って実はいい音が出ないんです。なので鉄職人の方と、もっと重厚感のあるフォーリー用の刀を開発しました(北田)」。

この日は、北田さんが現在担当しているアニメ『ドラえもん』の音入れを一緒にお手伝い。アルマジロの出演シーンに足音をつけるために、パーティグッズの魔女の付け指を使って、実際の音出しにチャレンジ。「ヘッドフォンで自分が出した音を聞きしながらやるのですが、臨場感があってドキドキ! アフレコとはまた違った面白さがありました(中条)」。ウォーミングアップが済んだら、課題として自身が登場したVOGUE GIRLの企画「GIRL OF THE MONTH」のムービーに、セリフと効果音をつけてみることに。どんな仕上がりになったかは、画面を下にスクロールしてチェック!


 

この道30年のベテランながら、どこか飄々とした自由人の気質を漂わせる北田さん。そのキャラクターの裏に隠されたユニークな人生物語を、中条あやみがあぶりだします!

「音響という裏舞台に飛び込んだきっかけを教えてください。

中条あやみ(以下N):北田さんは、なぜこのお仕事に就こうと思ったのですか?

北田雅也(以下K):中学生のときに観た映画『ミッドナイトクロス』に、音響効果の仕事に携わる主人公が登場するんです。こんな仕事があるんだと、その頃、はじめて興味を持ちました。高校ではじめてミニコンポを買ってもらい、そこからいろんなオーディオ収集に熱中するように。ビデオ屋でもバイトをしていたので、自宅のオーディオ機器に映画のソフトウェアを組み込んで、無料で映画を観まくっていたんです。すると日本の映画って海外に比べて音の質がよくないなと気づいて。「これなら自分のほうがうまくできるかも」と思ったんです。

N:技術は専門の学校で学ばれた感じですか?

K:一般の大学に進学したものの、まったく行かずにやめて、音響の専門学校に入り直しました。その後、就職活動もまったくせず(笑)、たまたま求人がきていた音響効果の会社に入社したという流れですね。

N:私もスカウトされた流れでこのお仕事を始め、気づいたらだんだん好きになっていた感じだったので、すべての人が「この仕事をやりたい!」と志して、将来が決まっていくわけではないんだなと改めて思いました。

K:うん、僕の場合はとにかくやる気がなくて、運と流れ任せっていうか。根はすごくいい加減なんです(笑)。

N:仕事をこなしていくうちに、好きという感情や追求したい欲求が生まれたりしてきた感じですか?

K:僕の場合は、音響会社に就職をするも、仕事に打ち込み過ぎて6年で「好き」が一旦、燃え尽きています。そこから会社を辞めて、妻と東南アジアを貧乏旅行したのがきっかけで、世界の広さを改めて感じたり、「仕事」と「自分」をもっと俯瞰で捉えようと、意識が変わったんです。お金が尽きるまでフラフラしていた時に、僕の師匠にあたる方が盲腸になり、仕事を肩代わりして欲しいという声がかかり、仕事復帰することに。映画1本の音響効果を仕上げることで報酬を50万円をゲットしたんです。1本をやりきって、またこの仕事をやろうって、思えたんです。

N:モノポリーのような人生の展開ですね!

K:仕事がどんどん楽しくなってきたのは、独立をしてフリーランスになった2000年くらいから。CGを使った娯楽映画も増えて、フォーリーとして求められる音の幅が劇的に広がったこと。音作りのテクノロジーも進歩してるから、自由度もすごく増えたんですよね。例えば、昔はワンテイクで失敗が許されなかったものが、今はデジタルだからいくら試しても電気代がかかるくらい。才能溢れる若いアシスタントも交えて、試行錯誤でいろんな音を作り、新しいアプローチをする。面白おかしくやっているうちに、みんなでスゴイことができる感覚が、今はとても好きです。

「立ち止まったり、寄り道するのも選択肢。自由なムードは奥様の影響?

N:北田さんのユニークな経歴を拝見したところによると、仕事に再復帰されたあと、激務で月に3日くらいしか帰らない生活。奥さんに呆れられたとか(笑)。一緒にバックパックでアジアを巡った奥さんは、どんな方なんですか?

K:彼女は通訳&翻訳業をしています。今でも大学で講義したりと、好きなように働いていますね。僕が「仕事やめたいんだけど」といったときも「やめればいいじゃん」ってすぐ言ってくれたし、「生活費として月11万くれたら大丈夫だから」と足りないお金はなんとかしてくれて。たぶん奥さんの影響で、僕はこういう生き方をするようになったんだと思います。

N:なんて懐の深い! 北田さんの放つ自由な空気感って、奥さんからの影響もありそうですね。ちなみにおふたりの出会いは?

K:25歳のとき、ベトナムを舞台にした映画の音響効果を手がけたのですが、ラッシュ映像(音声が入る前の未編集テープ)に日本語でアテレコしていたのが、通訳として同行していた後の奥さんで。めちゃめちゃいい声だったんですね。

N:ドラマティック! そしてお仕事柄ならではの理由ですね(笑)

K:声フェチだから「この声の持ち主、最高だな」と思って。打ち上げのときに声かけたんです。それで27歳で結婚しました。家族はいま九州にいますが、今年から始まった『ドラえもん』の仕事の関係で、僕だけ週1で東京に通っています。

「この道30年。北田さんが大事にしてきた、プロとしての心意気とは?」

N:自分にはどういう仕事が向いてるのか。情報や選択肢がいろいろありすぎて、見つけにくい時代だなって思うんですけど、1つの仕事をずっと続けていくためにどうしたらいいのかなって。

K:僕が思うに、例えばある仕事が一人前にできるようになったら、それと関連するものでもいいし、少し違うものでもいいので、新たなスキルを身につけるために5年か10年費やすのがいいと思います。メインストリートに近いところを掘っていくと、いずれメインと新しいものが合体して、さらにパワーアップするイメージです。よくアメリカでは、俳優がプロデュース業も手がけていたりしますよね。

N :それはどの職業にも言えますね。その人自身の幅も広がるし、もともとやってた仕事の魅力も、またほかをやることで再確認でそう。では最後にお聞きしたいのですが、北田さんが思う「プロ」としての在り方って?

K:映画を一本担当するようになって思ったのは、監督は孤独だなということ。いつも矢面に立つのは監督で。だから僕は常に味方でいようと思ったんですね。もしプロデューサーから修正依頼がきても、僕に指示できるのは監督だけ、というルールを自分の中でつくって、「監督」より偉い人ということで「観客」を設定しています。

N:監督の上に、さらに観客がいると?

K:やっぱり映画はお客さんが楽しめないと良くないから、監督が独りよがりな演出に陥りそうなときは、反論します。監督と観客の間に入って、良い着地点を探すようなイメージですかね。要するに「対象を絞っていい仕事をしたい」っていうのが僕のこだわりです。いろんな方面でうまく立ち回ろうとすると、絶対にいやらしい人間になっちゃうから。

N:わかります(笑)。わたしも監督の指示に従うか、自分がやりたい演技を優先するか、常に葛藤があって。監督に言われて納得できない場合は、そのとき「はい!」って答えても、実際に演技では変えたりすることもありました。でも確かに「観客に伝わりやすいように」っていう意識って大切ですね。

K:役者さんだと難しいとは思いますけどね。例えばおじさんの脚本家が書いたセリフで「いまの女の子ってこんな喋り方しないな」と思うこと、きっとありますよね。そういうときは、自分の感覚を信じて、意思表示することも大事なのかもしれない。

N:結局のところ俯瞰で見たときに「作品のためになるか、ならないか」ってことですよね。


 

 

「GIRL OF THE MONTH」の映像に、 台詞と効果音をプラスしてみました!

-STEP1:⾜⾳
まずは地下鉄の階段を上がってくる男女の足音を録音。スタジオに作られたコンクリートスペースの上で、中条さん含むフォーリー役の3人が、モニターの登場人物の動きに合わせながら、パンプスや紳士靴で実際にウオーキング。

-STEP2:傘
撮影日はあいにく雨だったので、傘の開閉音も入れながらムービーに臨場感をプラス。「もう少し動作に情緒を持たせたほうがいいですか?」と、中条さんから発せられた女優らしい発言に、一同がどよめく。

-STEP3:⾐摺れやカバンの音
階段を上っているときや指差しするシーン、横断歩道でステップをしたときなど、動作が印象的なときは、服と服がこすれる音や、カバンが揺れる音も足して映像に奥行きを。「中条さん、出す音やタイミングがすごくいい。素質あると思いますよ!」と北田さん。

-STEP4:バブルな話し声
最後に自身が口パクしているシーンに、バブルっぽいアフレコをつけて80sなエッセンスを。ガヤとよばれる背景の音も別録りして重ね、CMさながらのユニークなショートムービーが完成!

 

<仕事の感想>
映画って五感で楽しむものだから、自分で音を作れたことがすごく嬉しかったですね! 思っていた以上に地道な作業の積み重ねというか、細かいプロセスが多くて大変だなと感じましたが、緻密に計算された音が重なってくることで、映画って生き生きするんだなって。これから自分が出演するシーンも、いろんな目線で見ることができそうです(中条)。

MODEL: AYAMI NAKAJO @ TEN CARAT
PHOTO & MOVIE: TAKAKI IWATA
STYLING: SHIZUKA YOSHIDA
MAKEUP & HAIR: MAI OZAWA @ MOD’S HAIR
WRITER: YURI TANAKA
EDITORS: YUKIKO MOROOKA
SPECIAL THANKS: FOOTPRINTS STUDIO
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