2021年に10年在籍した乃木坂46を卒業してから1年。生田絵梨花は今もなお、幅広い分野で“表現”し続ける。「考えすぎてしまうんです」という、何事に対しても熱心に取り組む彼女は、楽しんだり悩んだりしながらいろいろなことを吸収して、より一層ステップアップをしている最中。これまでとは違った環境に身を置く今の、心の中を覗いてみた。
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コート¥577,500 ヘアアクセサリー 右¥42,900 左¥57,200 グローブ¥77,000 /すべてGUCCI(グッチ ジャパン)
ファッション撮影で出会う、いつもとは違う自分。
ヴォーグ ガールの連載「ガール・オブ・ザ・マンス」ではスイートでちょっぴりビター、失恋で傷心中の女の子が“ハート”を求めて奮闘するストーリーの主人公を演じてもらいました。ドレスアップしたチャーミングなキャラクターでしたが、撮影の感想を教えてください。
私自身とは全く違ったキャラクターで、とても楽しかったです。特に、ホリデーシーズンのスペシャル感のある服には気分が高まりました。撮影で使用した小道具や写真の雰囲気など、ところどころで感じられたレトロなムードもツボでした。
ご自身と全く違うとのことでしたが、普段のファッションやヘアメイクはどんなスタイルがお好きですか?
少し前まではスカートばかり履いていたんですが、最近はもっぱらパンツ派。プライベートでは出かける機会が減ったり、お仕事では車移動が増えたり、リラックスできるスタイルのほうが都合がよいので今ではカジュアルなファッションが定番になりました。この日の私服も例に漏れずパンツスタイル。だからこそ、今回の撮影で着たようなスタイリングは新鮮でしたし、テンションもあがりました。ハートのピンをつけたウェーブヘアも、キラキラしたアイメイクも、普段はあまりしないのでいつもとは別の自分に出会えてうれしかったです。
今回演じてもらった主人公は、失恋後に自分磨きや、新たな恋の行方を追いかけていました。もし、ハートブレイクしている友達がいたら何とアドバイスしますか?
そうですね。自分磨きもいいとは思いますが、その前に、「もういいや! いっぱい食べて飲んじゃお!」とか、「何もしない!」とか、「1回立ち止まるのもいいんじゃない?」と言ってあげるかもしれません。一度気持ちをリセットして、それからギアを入れ直したほうがメリハリがつきそうじゃないですか。今回のストーリーのワンシーンのようにタロットに運命を託すのも可愛いですけど、失恋した相手のことを引きずっちゃいそうですし(笑)。
ホリデーシーズンの思い出や定番のイベントはありますか?
自然がある場所に行って家族と過ごすのがホリデーシーズンの定番です。以前はなかなか遠出ができなかったですが、車で1〜2時間で行ける滝を探して、マイナスイオンを浴びに行ったことも(笑)。少し時間をつくれるようになってからは、山の上にあるホテルに家族で泊まりに行ったりしました。
時間ができたとは言ってもお忙しいとは思いますが、休暇があったら何をして過ごしていますか?
最近はまっているのが酵素浴。体が温まるし、疲れがとれるんです。Netflixで韓国ドラマを見るのも好き。『その年、私たちは』、『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』はかなり面白かったです! 料理教室に行ったりもしますし、自分の好きなことをしてのんびりするのが至福のときです。
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ジャケット¥324,500 ブラウス¥286,000 パンツ¥195,800 (すべて予定価格)/すべてBURBERRY(バーバリー・ジャパン)頭に巻いたスカーフ/スタイリスト私物
グループから1人に。トライ&エラーを繰り返しながら自分なりの仕事との向き合い方を模索中。
乃木坂46を、2021年末に卒業。心境や周りの環境、変わったこともあるかと思います。
グループに在籍中は、メンバーそれぞれに役割分担のようなものがあって。私で言うと“舞台やミュージカルに出演する人”、ほかのメンバーだとモデルとしての活動をしたり、バラエティ番組で活躍する人もいました。アイドル活動以外では、個々の得意なフィールドで、各々が仕事をしていたんです。それが、卒業して1人になったら、自分がやってこなかったような分野の仕事にも挑戦する機会が多くなって、そこが一番変わったところですね。まだまだ勉強している最中ではありますが、同時に充実感も増しました。今回のようなファッション撮影はもちろん、映像作品への出演もあまり経験がなかったのですが、ここ1年でやらせていただくことが増えて。自分の中では“舞台”が軸にあり以前と変わらず大切ですが、表現の場が広がることは楽しいです。舞台やミュージカルも、映像作品も、ファッション撮影も、“表現する”という点は共通しているので繋がる部分もあると思いますし、相互にいい影響を与えていけたらと。
モデルや俳優の仕事では、舞台やミュージカルとは違うことを求められることもあるかと思います。大変なことや困難にぶつかったりすることはありますか?
この1年は、はじめてのことが多かったぶん、いろいろと感じることがありました。自分の力不足や理想に近づけないことに、とても落ち込むこともありましたし。グループ在籍中は“言い訳をしない”という自分の中のルールを掲げていたんです。もちろん、卒業後もそれを守って仕事をしてきましたが、そのルールが、1人になったら少ししんどくなってきちゃったんですよね。グループで活動しているときは、集団の中で行動するためには必要だったし、忙しさにどう立ち向かっていくかというところで、自分にとってはお薬みたいな言葉だったので言い聞かせてきた。もちろん、その言葉のおかげで乗り越えられたこともたくさんありましたが、自分で自分を縛りすぎていたところも。そんなときに「完璧じゃなくてもいい。その“言い訳をしない”という心構えが自分を追い詰めてしまうなら、どんどん言い訳をしてもいいんじゃない?」とマネージャーさんに言ってもらって、はっとしたんです。
何事にも真摯に向き合っているんですね。真っ直ぐ取り組んでいるからこそ、自分ではなかなか気がつけないこともあると思います。
一本柱をルールとして貫くことだけがいいわけじゃないということに気がつけました。つい1人で考え込んでしまうと、それまでの決め事がどうしても頭を離れなくて。今は自分を潰さないように、ポジティブな言い訳なら言うようにはなりました。もちろん、できる限りのベストは尽くします。そのうえで「できない、できない!」という沼に陥らないように潔く言い訳をして次にいく。そうすると、反省ばかりではなく、よい気づきもできる感じがしています。もう少し、心にスペースをつくりながら仕事していくことを今後は大事にしていきたいです。まだ独り立ちして1年目なので、毎回うまくできているわけではないですが、いいスタートラインには立てた気がします。
今後、悩むことがあった際は乗り越えられそうですか?
会話をすることが大事だな、と思いました。自分の中だけで考えると思考がどんどん偏ってしまうので、人と話して意見を聞くのがいいかもしれません。「でも」と口を挟んでしまいそうですが(笑)、“そういう見方もあるんだ”、“そんな考えもあるんだ”と自分とは違う考えは積極的に拝借して自分の中に取り込んでいく。それができたら乗り越えられそうです。あとは、おいしいものを食べたり、自分の体を労ったり、基本的なことも忘れずにいたいです。
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ドレス¥869,000/VALENTINO(ヴァレンティノ インフォメーションデスク)
先輩方のしなやかな姿勢も、凝り固まった考えに風穴を開けてくれた。
さまざまなメディアで生田さんを拝見する機会が増え、いつも自然体でその場を楽しんでいるようにお見受けしていました。何か意識していることはありますか?
もともとはかなり緊張しいなんです(笑)。“緊張する!”と思うと萎縮しちゃって会話もできなくなってしまう。だから、それがどんな現場であっても特別な場所と思いすぎず、“日常の延長”と思うように意識はしています。気張っていた心もリリースされて、いつものフラットな状態に戻れる気がするし、相手にもフラットな状態で歩み寄れるような感覚が。意識するだけではありますが、それだけでも変わります。
今後演じてみたい役はありますか?
クセのある役とか、ダメダメな役も挑戦してみたいです。これまでは、いい子だったり、優しくて真面目な役が多かったので、その逆を。周りの人を振り回す、トラブルメーカーの役なども興味があります。
生田さんの思う理想の女性像についてお伺いします。こういう人になりたい、こんな女性に憧れる、などのイメージはありますか?
柔軟な人になりたいです。2022年は、いろいろな現場で素敵だなと思う方々にお会いしましたが、みなさんに共通するのが「柔軟性」。私は“こうじゃなきゃいけない”と硬く考えてしまうほうなんですが、素敵だなと思う方々はフレキシブルで対応力に長けていた。例えば、撮影中に想定とは違うことがあったとしても、“そうくるのなら私はこうしようかな”、“なるほど!そういうことならこれもありかも”と、すっと受け入れられている器の大きさに強く惹かれました。予定調和じゃないことも否定するのではなく、寄り添いさらに超えていく。仕方ないって諦めているわけではなくて、次の案を探してアウトプットしている感じ。そのほうが人とのコミュニケーションも取りやすいだろうし、自分自身の可能性がもっともっと広がるだろうし、結果さまざまな選択肢も増えると思ったんです。すぐにはできるとは思いませんが、人生の課題、理想です。
しっかりと自分を俯瞰して、そのうえでものごとを考えられている印象です。
何でも頭で考えてしまう思考人間なんだと思います。その考えたことをきちんと体現できるよう、頭でっかちにはならないように気をつけたいです。考えるだけ考えて煮詰まってしまうのではなく、自分なりに咀嚼して、うまく形にできるようになれたらいいですね。