今、そして未来の自分と向き合うガール世代のために、人生の先輩からのメッセージ。今回は、小劇場の舞台でキャリアをスタートし、年齢を重ねるごとに輝きを増幅させる女優、吉田羊が登場。下積みと言われても遅咲きと言われても、経験したことすべてが必然だったとたおやかな強さを纏い、語る吉田羊の人生観から毎日を前向きに生きるためのヒントを見つけて。
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「素敵だったよ」その感想が悔しくて……。自分らしさを探した舞台での20代。
舞台演劇で20代のキャリアを積まれた吉田さん。その当時は、どんなことを考えながら活動をしていましたか。
雑誌『ぴあ』の演劇欄の欄外に募集要項があって「3ヶ月後に出てくれる女優さんを募集しています」という三行広告に応募したのが、舞台で演劇をはじめたきっかけです。そのとき、20代前半だったので、私の中で20代はそこから数えた10年間。なので、30代前半のことも少し入ります。はじめた頃は、自分らしい芝居とは何か、芝居がうまくなるにはということを考えていました。演出家の方や先輩の俳優さんに「もっと羊らしい芝居が見たいんだよね」と言われることが多くて、自分らしい芝居とは、私らしさとは一体何だろうといつも思っていたんです。芝居が上手くなりたいと考えていたのは、観劇にいらしたお客様に「素敵だったよ、綺麗だったよ」と、言われることが悔しかったから。芝居の印象ではなく、抽象的な感想しか残せなかったと思うとそれが本当に悔しくて……。芝居がうまくなれば、もっと違う感想をいただけるんじゃないかとずっと悩んでいましたね。今思うと、自分らしい芝居をすることも、芝居がうまくなることも、ともに“自分の心を動かす”という答えに行きつくのですが、当時の私は芝居=テクニックだと思っていて、なかなか自分の芝居を更新できなかったんです。その中で、転機になったのがある役との出会いでした。それまで綺麗なお姉さんの役が多かった私に、舞い込んだ初めての汚れ役。血の繋がった弟を愛し、監禁して自分の支配下に置こうとする「姉」の役でした。稽古を重ねても、厳しい演出家からはなかなかOKが出ず、文字通り、なりふり構わず役に立ち向かいボロボロになった頃にやっと「それだよ」と。計算や作意を挟み込む余地もないほど真っすぐに役に向き合った先には、ただ純粋に自分の心と感覚だけが残るのだということを学んだ初めての体験でした。また、その作品での手応えと充実感は大きく、事実、それを見に来た友人たちに「やっと羊ちゃんの心が見えた舞台だったね」と言われたんです。そのことに気づいてからは、自分の殻をもっと破りたいと、どんどん挑戦を重ねていきました。
目標にしていたことはどんなことだったのでしょうか。
スタートからの10年間で私が目標にしていたのは、三谷幸喜さんの舞台にでること。東京サンシャインボーイズはもう解散していたので、『笑いの大学』をDVDで拝見したのですが、そのとき衝撃を受けたんです。ワンシチュエーションの、しかも二人きりの会話劇でこんなにも面白い舞台があるのかと。「劇作家、三谷幸喜さん」というお名前をそのときしっかりとインプットし、いつか三谷さんとご一緒したい、自分がそういう場所に選ばれる俳優になりたいと思っていました。当時、三谷さんに直筆でお手紙を出したこともあったんです。後に三谷さんと知り合ってからその話をしたら「その手紙は僕のところには届いてない」と言われたんですけどね(笑)。 -
常に自分を更新していきたい。年齢という壁を超え、映像の世界へ。
舞台で10年間の経験を積んだ後に、30代でテレビや映画といった映像の世界に進出。きっかけはどのようなことだったのでしょうか。
劇団TRASHMASTERSの演出家・中津留章仁さんとご一緒した3回目の舞台で、川島なお美さんと下条アトムさんとの3人芝居をやらせていただきました。そのとき、川島さんのマネージャーさんに前任のマネージャーさんをご紹介いただいたんです。当時すでに30歳を超えていたんですが、その私を映像で売りたいとスカウトしてくださいました。声をかけられて、吉田さんはどう思われましたか。
19、20歳の女の子ならまだしも、30歳を超えた小劇場出身の女優で、しかも映像で売りたいなんて、この人はどうかしているって(笑)。というのも、私はそれまで何度もプロダクションのオーディションを受けていたんです。でもなかなか決まらなくて、そこで必ず言われるのが30歳を超えているんだねってこと。年齢がネックになるということは身を以て感じていました。でもそのマネージャーさんは、即戦力になる女優、年齢を重ねていてもいいからある程度芝居の経験を積んだ女優を探していて、お互いの利害が一致し、一緒にやることになりました。新しい世界に踏み込むのに、不安や怖さはありませんでしたか。
もともと私は冒険好きなところがあるのと、自分を更新していきたいという欲が強いんです。劇団を続けることに限界を感じていたタイミングでもありました。マネージャーさんからは1週間ぐらい考えてお返事をくださいと言われたんですけど、翌日にはやりますと即決でしたね(笑)。これがラストチャンスだとも感じましたし、新しい景色が見られるかもしれないとワクワクする気持ちのほうが大きかったです。そもそも私は何の取り柄もない人間なので、そんな私でも求められることが単純に嬉しかった。私にも何かできるかもしれないという期待も少しだけあって……。もし駄目だったとしても、もともとなかった人生だと思えばそういう経験ができてラッキーだと思って飛び込むことにしました。 -
今日が駄目でも、明日も駄目とは限らない。時間をかけたからこそ得られた自分の強み。
舞台で積まれた経験とセンスで、映像でもすぐに活躍の幅を広げた吉田さん。舞台時代を下積み、遅咲きブレイクと言われることもありますが、ご自身にとっての20代の10年はどんな時間でしたか。
私自身は、ただただ楽しくて続けていたら気がつけば10年が経っていたという感覚。キャリアを積んでくると、任せていただく役割が大きくなってきて、それと同時にプレッシャーを感じることも増えました。小劇場時代は、今に比べると気楽に、純粋に芝居を楽しめていた時期だったと思います。10年という時間をかけて映像に移行したのも、自分にとってはよかったと思っているんです。簡単に次のステップにいくのではなく、苦しみやもどかしさを経験して進むことで、動じない強さや受け入れるおおらかさを身につけることができた。その経験のおかげで同じ境遇の人に寄り添うこともできるし、そういう役を演じることもできる。すべてが役者としての経験値になっていると感じます。遅咲きという意味では、20代で喉から手が出るほど欲しかった仕事や人とのご縁を年齢を重ねたことでいただけるようになったのはきっと、もっと経験値を増やしなさいということだったんだと思います。そのタイミングが早い人もいるだろうけれど、私はそうでなかったというだけ。それぞれ然るべきタイミングがあって、それは人と比べるものではない。今、これから頑張ろうとしていらっしゃる女優さんと現場でお会いすると、次に会うときは彼女が主役かもしれないと思うんです。それは、自分が実際にそういった経験をさせていただいたから感じることですし、そういう可能性が誰しもに平等に与えられているというのは私の経験値からお話できることだなと思います。
つい急いで結果を求めてしまいがちですが、それぞれのタイミングがある。
“今日が駄目だからといって明日も駄目とは限らない”と、若いときから思ってきました。よくも悪くも人は変わっていくものだから、今日は必要でなくとも明日は必要とされるかもしれない。必要になる日がくるかもと思うと腐らずに、明日もきちんと生きようと思えるんです。実際、私自身がそういう経験をしてきたので、これは自信を持って言える言葉。もちろんそこにはたくさんの方のご縁とご恩があったからですが、自分ぐらいは自分に期待していいじゃないって。物事に対して自分がどれくらい準備をしたかというのは、自分自身が一番よくわかること。自分に期待ができるかというのは結局、自分がどれだけそのことに真剣に向き合えたかということだと思います。自分に期待できるうちは頑張っている、頑張れているということなのかなと思っています。吉田さんはどんなことも前向きに、軽やかに前に進まれる印象がありますが、これまでの人生の中で挫折を感じることやスランプに陥ることはありますか。
私のスランプは大抵、芝居に関すること。思い描いた芝居ができなかったとか、思うような結果が残せなかったことでスランプに陥ることはありますが、そもそも私は自己肯定感が低いんです。割と周期的に、自分を否定する時期みたいなのがやってきちゃう(笑)。最近だと2年前かな。思ったよりも最近の出来事ですね。
結構最近ですよね(笑)。決定打となる出来事があるというよりも、ちょっとしたことの積み重ねでどうにも自己肯定感が上がらない時期だったんです。素敵な言葉をかけてくださっているのに言葉を額面通りに受け取れなかったり、人を疑って裏をかいてしまったりということが少しずつ続いて……。疑ったり自分を否定したりしちゃ駄目だと思って、もう1回自分を信じ直そうとするんだけど、次の瞬間にはまた否定しての繰り返し。それでもそのときは、ギリギリのところで自分を保てていると思っていたんですが、そのタイミングでかかってきた友人からの電話に出た瞬間泣いてしまったんです。友達の声を聞いて、ほっとしたんでしょうね。泣きながら、実は最近こんなことを考えていて、自分を好きになってあげられないんだと、抱えていた思いを言葉にして体の外に出してあげたんです。そうしたら楽になって、本当の意味で荷物を半分にすることって大事なんだと思いました。ごまかして見ないふりをしてきてごめんねって、自分に謝りましたね。一番健全なのは、そういうモヤモヤした気持ちを思い出す暇もないぐらい、仕事や他のやるべきことに集中することだと思うのですが、心の底にあるわだかまりが根本からなくなるわけではない。どうしてもそれを自覚してしまうときは、人に話して半分渡してしまうのも手だなと思いました。それが2年前の出来事ということですが、これまでも悩みは誰かに相談していましたか。
これまでは、結局最後は自分で決めるしかないと思っていたので、人に相談することは苦手でした。私は、自分のことを繊細さんだと思っているんですけど(笑)、人に相談したところで決めるのは私だし、相談された人も困るよなと気を回してしまう性質で……。だって相談って、自分の答えはすでに決まっていて、人に背中を押してもらうためするところがあるでしょう? でも図らずして、悩みを外に吐き出したことで楽になる経験をしたことで、別に自分だけで頑張らなくてもいいかなと思うようになりました。相手が迷惑かどうかというのは、私が決めることじゃないなって。迷惑だったら相手が距離を置くだろうし、電話に出ないだろうしって思うと、そこは割と自分勝手でいいのかなと思いましたね(笑)。 -
仕事を優先する理由はシンプル。どれだけ自分の心が喜ぶかが大切。
以前ほかのインタビューで「プライオリティの一番は昔も今も仕事」とお話されていました。人生の選択肢がたくさんある今、優先順位をつけることはすごく難しいと思うのですが……。
私が仕事を優先しているのは、そこで生きることが、自分が生きる意味そのものだからです。もともと取り柄のない私が、俳優として求めていただけるだけで奇跡ですし、ましてやそれを喜んでいただけたり、励まされたと言ってくださる方がいたりするなら、喜んでこの身を差し出したいという気持ちでいるんですよ。でもそれは自分を犠牲にするということではないです。生きる意味を大切にすることは、自分の心が喜ぶことだから。それが現段階で私にとっては芝居というだけです。仕事を選ぶときも自分の心が動くかどうかが基準になりますか?
そうですね。仕事も割と直感的に選ぶことが多くて、これやりたいとか面白そうとか、この役は誰にも渡したくない!とか。どうしてもスケジュールが合わずに悔しい思いをしたこともありますが、基準は自分がどれだけその作品と役にワクワクして喜べるかです。シンプルですね。
そうですよね。大人になると、どうしてもしがらみや感情だけでは選べないシチュエーションが増えてくるとは思うんですが、意外と勇気を出して選んでみると、その方向に道ができてくる。ごまかしたり無理をしても、結局はそのようにしか見えないし、熱量がないからそれだけの成果しか出せないように思います。何より自分が気持ち悪いですしね。心に素直に選んでさえいれば、健全だし、何かあったときにも結局自分で選んだんだからと思える。自分で自分にOKが出せるんじゃないかなと思います。 年齢を重ねるほどに、求められる場所や役が増えていらっしゃいますが、ご自身は自分を客観的に見たときに「求め続けられる理由」がどんなところにあると思いますか。
選ばれる理由を自分で言うなんて、ものすごく恥ずかしい(笑)! どうなんだろう……。真剣に、とはいつも思っています。私は準備にも時間がかかるし、器用なタイプではない。でもその分、真剣に向き合っているという自負はあります。誰だって自分が作った作品は愛おしいもの。その作品に真剣に向き合って、同じように大事にしてくれる人と仕事をしたいと思うのは当然だと思うんです。作品へのそんな姿勢が評価されているとしたら、報われるなあ。あと、私は普段「無色」の俳優でいたいなと思っていて。どんな役にもなれるように極力イメージや印象をつけたくない。それが、私をキャスティングする時に助けになっていたらいいな、とは思っています。
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年齢を重ねたからこそ求められることがある。デビューから25年で改めて感じたこと。
今年で活動25周年を迎えられる吉田さん。アニバーサリーイヤーを記念した初の音楽コンサート「吉田羊 Night Spectacles The Parallel~ウタウヒツジ~25th Anniversary Special」(9月22日、9月23日)も控えています。25年を振り返って、これまで仕事でかけられた言葉の中で心に残っているものはありますか。
今回のコンサートのアーティスト写真を撮影してくださった写真家の操上(和美)さんにかけられた「笑おうとしなくていいよ。心を動かして」という言葉です。操上さんとはもともと知り合いで、時々ご飯に行かせていただく仲ではあったのですが、仕事としては初めてのセッションでした。オファーを出すのも1週間ぐらい文面を考えて、私にとってはそれくらい緊張するものでした。撮影の日は、操上さんにつまらない奴だと思われたくなかったし、撮りにくいなと思われたくなくて、今思うと、簡単に表情を作って撮られやすい自分を演じていたのだと思います。数枚シャッターを切った後に、操上さんはカメラを置いて近づいてきて、さっきの言葉をおっしゃったんです。その瞬間、見抜かれたなと思いました。「ただそこにあるものをとるだけなんです」とおっしゃっている操上さんのインタビューを散々読んでいたので、こいつ何もないなと思われることが怖かったんだと思います。心のないものは伝わらない、それは俳優の仕事にも通じること。そのことを25周年という節目に、改めて、操上さんから教えていただきました。もう一度、ちゃんと心を動かして表現をしなさいよっていう言葉だったんだろうなと受け止めました。インタビューのはじめに話してくださった、20代のときに節目になった言葉と通じているものがありますね。
経験を積むと、求められていることの予想がついてくるんです。経験値や引き出しが増えていく分、無意識にチャートやパターンにあてはめて考えてしまうことがあるんですよね。そこにたどり着くためには必ず過程となる感情があるのに、むしろそこが大事なのに、慣れてくると飛ばしてしまうことがある。年を重ねた今の私だからこそ出合えた言葉だったと思いますし、きっとこれは10年前でも10年後でも駄目だった。タイミングも含めてすべて必然だったと思わされます。次の25年をどんなふうに生きられたら素敵だと思いますか。
ずっと自分自身にワクワクしていたと思いますし、挑戦していたいと思います。いつ死んでも「今日だったのか、寿命は!」って笑えるぐらい、その日その日を全力で生きていけたら理想ですね。芝居はずっと続けていたいですか。
絶対に続けようと思ってるわけではないです。自分に期待できなくなったらやめます。
ご自身では年齢を公にしていない吉田さんですが、年を重ねることはひとつの事実としてどうしても抗えないもの。女性として年齢を重ねていくことと、どのように向かい合っていますか。
昔は、年齢を重ねることをネガティブに捉えていました。見た目が変わっていくこともそうだし、生殖機能が変化していくことや加齢による症状、若い頃に比べて向き合わなければならない現実は事実としてある。でも、私自身が体験したように、年齢を重ねることで必要とされることや重ねた人間だからこそ出せる雰囲気や生き様があると思えるようになりました。今の社会を見ても、歳を重ねて輝いている女性に光が当っているように感じます。実際に私も歳を重ねてからの方が楽しいんです。なんなら今が一番(笑)!この先、俳優としては、顔に出るシミとかシワとか、見た目の変化でできるようになる役もあるんだろうなと。そういう意味では、一生引退のない仕事だと思いますが、もしその年齢になってもまだ私が女優を続けているとしたら、また新しい景色が見られるだろうとワクワクします。ただ、ひとつだけ言うとしたらこの歳まで一人でいるとは思っていませんでしたけどね(笑)。これまでに結婚についても考えるタイミングはありましたか?
漠然と30代の頃は、50代では籍を入れなくともパートナーがいたらいいなと思っていました。基本面倒くさがりなので、結婚に、というか共同生活に向いていないんです。そういうことを言っている時点で自分から遠ざけてるんですけどね(笑)。もし、実際の年齢になったときに今のような状態だったらと思うとちょっと怖さはありますが、そのときはそのときで終活どうしようかなとか考えているような気もしますね。 -
その気持ちがあれば困難さえも乗り越えられる。幸せを掴むために必要な「好き」という気持ち。
吉田さんが今、人生を見つめてみたときに「幸せになるために大切なもの・こと」とはどんなことでしょうか。
自分の“好き”を見つけることですね。自分の人生を振り返ってみると、取り柄も褒められることもあまりなかったけれど、唯一褒められて好きだったのがやっぱり芝居だったんです。セリフ回しがうまいねとか、聖子ちゃんの歌まねが上手だねとか、小さい頃に褒められたことって残っているもの。好きなものだからこそ頑張れるし、それを仕事にできているからこそ、困難さえも楽しめる。好きという気持ちが全部のモチベーションになってくれます。あとは、24時間365日感謝の気持ちを忘れないこと。私もつい忘れがちなので常に意識して、感謝するようにしています。意識しないとできない感謝だなんて、それは本当に感謝してることじゃないよと言われたらそれまでですが、そうだとしても意識して感謝するようにしていれば、感謝できることを自分から探すようになるんです。万が一本気で思っていなくても、「ありがとう」と言葉にするだけで本当にありがたいことだと思えるようになってくるし、今起きてるものの景色が違って見えるようになるんです。昔、感謝帳をつけていましたが、そうすることで自分がいかに感謝が足りなかったかということも気づいたし、自分だけじゃなく人の幸せをちゃんと願えるようになってくる。感謝は自分のためだけではなくて、他者に対しても心を配れるようになってくるものだと思います。共演者にも後輩がたくさんいると思いますが、一緒に仕事がしたい、芝居がしたいと思うのはどんな人ですか。
距離感がうまい人。距離感ですか?
芝居って対話なので、セリフをどう言うかは二の次でいいんです。大切なのは、役と役との関係性。一方的に感情を投げるだけでなくて、相手の反応をちゃんと受けて、それに対してまた返していく、そうしたキャッチボールがうまい人、関係性や距離感をうまく読める人の芝居は素敵だなと思いますね。自分の感情を投げるだけでなく、受け取る相手のことを考える。芝居だけではなく、人間関係にも通じる大切なことですね。
そうですね。互いに心地よい距離を保てるというのは、相手をちゃんと見てるということなのかな。私もまだまだ悩み、迷いながら、何度も失敗して後悔したり反省したりしながら現在進行形でやっています。でもありがたいことに、朝はまた来るので前を向いて、反省を踏まえて生きていくしかない。学びたいという姿勢でありさえすれば、きっと一生学べるし、自分を更新していけると信じているんです。最後に、自分の好きなことを表現し、仕事にしたいと思っているVOGUE GIRL読者にアドバイスをお願いします。
私たちの世代から言うと、情報が豊かにあり、世界とあっという間に繋がれて、自己表現のプラットフォームが無限にある今の状況が本当にうらやましいと思います。役を一つ作るのにも、その資料集めにまず時間がかかりますが、それが今やネットであっという間に集めることができる。だからそういう恵まれた環境もフル活用して、どんどん挑戦していただきたいなと思います。好きを極めるためにやっていけないことなんてないと思っていて、20代なんて私から見たら最近生まれたばかり(笑)。失敗してもやり直す時間があるし、遠回りをしたとしても前のめりにやっていたとすれば、振り返った時に必要な道のりだったと思える日がくると思います。なので、臆さず遠慮せずにやってみて皆さんの仕事を見せてください。いつか一緒にお仕事しましょう!