デビューから約35年、魅惑的な雰囲気と輝きを放つポジティブなオーラで、女優として第一線で活躍を続ける高岡早紀。私生活では結婚、出産、離婚を経験しながら1人の女性として、母としても豊かな人生を歩んできた。「大切なものはシンプルで、そのために選択をするだけ」そう力強く語る、高岡早紀が見つけた人生の歩き方から、彩りのある毎日を生きるヒントを見つけて。
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女優のおもしろさを探してみよう…。戸惑いながらスタートしたキャリア。
デビューのきっかけは、クラシックバレエの留学資金のために受けたCMのオーディションだったそうですが「芸能界の仕事に腰を据えてやってみよう」と思えたのはいつ頃ですか。
19歳、20歳くらいのときですね。デビューした頃は、芸能界に興味があったわけでも、女優や歌手になりたかったわけでもなく、流れで“そういうことになってしまった”という思いの方が強かったんです。私は、ただバレエがやりたかっただけで、芸能界に入るつもりでオーディションを受けたわけではないのにどうしてこの場所にいるんだろうと…。デビュー後もありがたいことに仕事が続いて、悩みはどんどん大きくなっていきました。リセットしようと行動に移せたのは、高校を卒業するタイミング。まわりが就職したり、大学進学したりするときに、私も1回休憩しようと思ってロンドンに行ったんです。2ヶ月半くらいの短い期間でしたが、好きなバレエをしながら語学学校に通い、自分がやりたかったことをする毎日を過ごすことができました。ロンドンにいるときに仕事があるからと呼び戻され、そのときにやらせていただいたのが『忠臣蔵外伝 四谷怪談』という映画。この作品がきっかけで、女優という仕事をやってみようと思いました。10代の頃から、女優やモデル、歌手と幅広いジャンルで活動されていましたが、どのお仕事をしているときが一番自分らしいと思っていましたか。やはり女優のお仕事でしょうか。
そんなこともないですね。10代はいろんなことをやらせていただいて、正直自分が何者なのか、何が自分らしいのかがわからなくなっていました。『忠臣蔵外伝 四谷怪談』の深作監督に「女優っておもしろいだろ」と言われたときも「え、どこがおもしろいかわからなかった」と…。けれど、でき上がった作品でたくさんの賞をいただいたんです。大変な撮影期間だったので、その苦労が報われた気持ちはあったけれど、監督が言った「女優っておもしろいだろ」という言葉の意味はまだ見つけられていなかったので、それを探す旅に出るのはおもしろいのかなと思いました。それが、女優としての覚悟を決めたタイミングですか?
やってみようくらいで、覚悟までは決まらなかったかな。覚悟というならば、この仕事のおもしろさを探す旅に出てみようという覚悟でした。
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頭で考えすぎず、体を動かす。直感を信じて進む力強いエネルギー。
どんなフィールドでも鮮烈な存在感を放たれているので、何事も器用にこなすイメージがあります。人生の中でスランプや挫折を感じた経験はありますか。
多分、あるんだと思います。多分というのは?
今、あんまりこれだっていうことが思い出せないから(笑)。挫折もスランプもきっと経験しているんですが、そのときの自分は失敗やスランプだと思ってやっていないんです。自分で挫折だと思ったらそれは「挫折をした経験」になるけれど、挫折したという自覚なく前に進んでいるで、振り返ったときに失敗や挫折をしたことがあまりないと感じるのだと思います。スランプも、どれだけやっても出口が見えずに迷宮入りしてしまうってことですよね? 私の性格のいいところなんですが(笑)、とりあえずやってみようと物事を楽観的にみている部分があるので、とことん落ち込むことが少ないんだと思います。どんなときも、ポジティブな気持ちの方が強いんですね。
立ち止まることは悪くないと思うんです。けれど、あまり悩まない。今、自分が何をやりたいのか、どうしたいのかということを直感で考えて、それを実行するだけ。実行せずに頭で考えているだけだと、体が動かなくなってしまうので、とりあえずやってみる、飛び込んでみるという気持ちを大切にしています。4月からの新情報番組『ポップUP!』では、初のコメンテーターにも挑戦されるとか。このお仕事も「飛び込んでやってみよう!」という思いからでしょうか。
そうですね。「悩んでもしょうがないから、やってみようか」と。あとから、すごいことを平気で「やります!」なんて言っちゃったなと気づくんですけど、「やります」と言った手前、やるしかないじゃない(笑)? それに、自分がまだ経験したことがないことに挑戦することは嫌いではないタイプなんです。チャレンジしようという気持ちや、50歳目前の私に新しいことをやらせてみたいなと思ってくださる方々に感謝をしたいですし、私にできることがあるのであれば、やってみたいなという気持ちです。
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生きるために、選んでいく。30代で見つけたシンプルな人生観。
今もなお新しい変化を受け入れて、チャンレンジを続ける高岡さん。年齢を重ねるにつれて、仕事への向き合い方で変化したことはありますか。
それはすごく変わったと思います。今みたいに、柔軟な気持ちになったのは、30代後半くらいから。それこそ20代は、もっと肩肘はっていたと思います。あれはできないとかこんなことをしたい、こんな自分でありたいと、できる限りかっこつけていたと思う…。そんなふうに思っていた気持ちが変化したのは、30代で離婚を経験してから。とにかく自分で稼いでいかないと、という思いが強かったのでよく仕事をしましたね。体がひとつしかないので、スケジュール的にも無理はできないという意味で、仕事はある程度選んではいましたが、今思うとそのときの私の目標は、生きること。生活をしていくために何ができるか、何をしなければいけないか、という選択をしていたと思います。少し極端な言い方かもしれないですが、仕事はもちろん責任感を持ってやらなければいけないし、やってはいるけれど、たとえ失敗をしたとしてもそれが人生の挫折にはならない。私の場合、仕事とプライベートだったら、プライベートの比重の方が大きいんです。そのなかでも特に大切にしているのが子育て。血の繋がりがあっても子供の人生は自分の人生とは違うから失敗できない。もちろん失敗をすることもあるんですが、なるべくそうならないようにしようと。お金も含めてなるべく豊かな人生を過ごしてもらいたいと思っているので、そのために私が何をすべきかを選ぶようにしています。
生きるために選ぶ、シンプルですが、それこそが人間の本質の部分かもしれないですね。
余計なものはそんなに必要じゃないですね。家族がいて、自分がいて、仕事があって、仕事にともなってお金が入ってきて…。それだけあれば十分だし、そこが豊かに回って、楽しく過ごして入れれば、外に出たときにも自然と楽しそうな人たちが集まってくるんです。だから家族が平和に楽しく過せること、それが今の私が望む幸せの形です。現在3人のお子さんのお母さんですが、出産や子育てを経験したことで、ご自身のなかで広がった考え方はありますか。
子供を育てるというのは、すごく大変なこと。子供から教えてもらうことはたくさんあるのですが、3人の子供を育てると三者三様の価値観や考え方に触れることになるんです。その考え方や価値観はできる限り尊重したいと思うので、私自身が何かに執着するということは、あまりしなくなりました。私とは違う考え方や生き方を持つ子供たちの人生を理解したいという気持ちが、仕事も含めて自分自身の糧になっていますね。
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“魔性”という言葉が自分を否定することにはならない。40代を迎えてさらに心が柔軟に。
インタビュー中も真摯に、ときにユーモアと茶目っ気のある笑顔を混じえながら、空気を一気に“高岡早紀色”にする。吸い込まれそうな魅力があります。
大丈夫だよ、食べないから(笑)!男女問わず“モテる”イメージもある高岡さん。魅力的ゆえに“魔性”という言葉が使われることもありますが、昔はそう言われることが嫌だったそうですね。年齢を重ねて、ご自身の中で変化があったのでしょうか。
“魔性”と呼ばれることを受け入れられるようになったのは40歳を過ぎてから。あくまでも人が私に抱く印象であって、人からどう思われるかということが自分にとってそんなに重要じゃないと思えるようになったからです。今も自分から、あえて魔性ですと言うことはないですが、そう思った人がいるならそれでいいじゃないか、その言葉が自分を否定することにはならないと、こだわりを捨てられたからかもしれないです。人とのコミュニケーションの中で、気をつけていることはありますか。
人を不快にさせないことですね。今もこのお仕事を続けられているということは、そうじゃなかったのかもしれないですけど、昔は本当に人を不快にさせることしかしていなかった気がして…(笑)。昔はお仕事でご一緒する人たちに、楽しいと思ってもらいたいなんて考えたこともなかったんです。でも、数年前くらいから今はせっかく出会ったのだからどんな人にも「早紀さんと話して楽しかったな」とか「お仕事してよかったな」とか、そういう印象を持ってもらえたら嬉しいと思うようになりました。客観的にご自身を見たときに、自分が評価されているポイントはどこだと思いますか。
私もこうやって長い間仕事を続けさせていただているから、時々考えるんです。なんでこんな風にずっとお仕事をいただけるのかなって…。だけど、はっきりとした答えはわからないです。変わっているからかな(笑)。人と何が違うのかよくわからないですけど、私だけの個性を見つけていただいているということですよね、と好き勝手に自由に想像することがあります(笑)。4月は新生活を始める人が多いタイミング。スタッフや新番組『ポップUP!』にも、後輩にあたるフレッシュな方々がたくさんいるのではと思います。高岡さんが一緒に仕事がしたい後輩は、どんな人ですか?
とにかく一番は明るい方かな。あとは、礼儀。私が20代のときに目上の方とお仕事をするときにも、基本的なことですが礼儀や挨拶には気をつけていました。
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明るい道を選んで行けば、自然と未来が開けてくる。
最後に、自分の好きなことを表現して仕事をしたいと思っている20代の読者が今、身につけておいた方がいいスキルや考え方は何だと思いますか。
この時代、何が成功かは一概には言えないけれど、今、自分に合っていると思うことが、将来の自分に合っているかなんてわからない。だから、できるだけ視野を広く持てるような努力や経験を今からたくさんしておいたほうがいいと思います。私の場合は、習い事が好きでいろいろとやってみたんです。たとえば、英語を習うとか海外の語学学校に通うとか。それに、お金をかけなくてもできることがたくさんありますよね。私たちの時代はそんなことなかったですけど(笑)、今はみんながPCを持っていて、手に入れたい情報をすぐに調べることができる。一度視野広げてみて、自分にできることを何でもやって、経験してほしいですね。インタビューに答えていて、自分の子供たちにもこの話をしたいなと思いました。直接はなかなか言えないんですけどね(笑)。
チャレンジの中で失敗をしてしまったときは、どういう気持ちで立ち直ればいいでしょうか。
若い頃の失敗なんて全然、失敗じゃない! 今見えている世界は、生きた年数の経験や考え方でしかなくて、年齢を重ねていくうちに見るものも、経験することも、会う人も増えていく。失敗したと思ったことも、あとから考えると笑えるようになるから、やっぱりまずはいろんなことに挑戦してほしいですね。やってみなかったら何が楽しくて、何がつまらないかもわからないから。長く生きていると、もっと楽しいことが結構あるのよって断言します(笑)! そういうポジティブな気持ちで向かっていけば、道も自然と開けていくし、ポジティブなものしか自分に寄ってこなくなる。もし、選択に迷うことがあれば、自分にとって輝いてみえる方を選んでみてください。明るい道と暗い道、2つの道があったとしたら、わざわざ暗い道を選んで歩いていかないですよね。虹色に輝く明るい道を選んでいけば、きっと視界が開けていくはずです。 -