「素敵なお姉さん」をフィーチャーする今月は、友達や恋人、家族とも違う、年上の“メンター”について考えてみよう。年の差があってこそ、素直に耳を傾けたり、刺激を受けながらも安心できる特別な仲って、実は同年代の女友だちでは叶わないことだったりも。ドラマ共演をきっかけに絆を深めた水川あさみ&中条あやみも、悩みや喜びを分かち合う関係。ふたりの親密なトークを通し、改めてメンターをもつことの大切さが目えてくる。
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ニット¥185,000 スカート¥222,000 ブレスレット¥68,000 靴¥92,000/すべてCHANEL(シャネル カスタマーケア) ブラウス¥99,000(参考色) スカート¥180,000 ソックス¥53,000 靴¥95,000/すべてPRADA(プラダ クライアントサービス) SNSで見かけるやりとりや、最近公開されたCMでもとっても和やかな雰囲気のおふたり。出会いは2019年のドラマ「白衣の戦士」だそうですが、お互いの第一印象は?
中(中条あやみ以下、中): 水川さんとダブル主演をさせていただくと聞いて、とにかく足を引っ張らないようにしなきゃってソワソワした記憶があります。いつもは気合いで乗り切るタイプなんですが、神社まで行って、この時ばかりは神頼みしたくらい(笑)。
水(水川あさみ、以下水):はじめて会ったのは衣装合わせだったのかな? ナース服を着てバランスを見る日だったのですが、まあー、第一印象はキラッキラでしたよ! “第一印象は”な(笑)! スタイルが抜群で顔も信じられないくらい小さくて、なんかこの世では見ないような子が来た!って印象でした(笑)…“最初は”な。
中:えー、ありがとうございます。水川さんはクールな役柄のイメージが先行していたのと、キャリアも長いので、ひょっとしてめちゃくちゃ怒られるんじゃないかって、内心では身構えていました。でも会ったら、なんか本当にバリバリ関西弁の……(笑)。
水:「おばちゃん」っていいたいん(笑)!?
中:いやいや、お姉さんって感じでした!(笑) お互い大阪出身だし、12歳年が離れた姉と(水川さんは)は歳が近いので、最初から「あ、お姉ちゃん!」って感じでしたね。
水:でも最初は、あんた人見知りしてたな(笑)。
中:うん。でも水川さんは会った瞬間からフランクに話しかけてくださって、安心しました。
水:私はわりと誰にでもフランクに話しかけますけど、相手のそれぞれの距離感が違ったりするから。
中:あ、そういう距離感って意識してるんですか? していないかと思ってた(笑)!
水:誰でもグイグイいくの、ヤバい奴やん(笑)! でも彼女はグイっといっても大丈夫やったし、現場では若いってことで、遠慮もしているんだろうなっていうのも感じたから……それも“最初は”ね!
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それにしても、おふたりの会話は息ぴったり。プライベートで会うときも、中条さんは今みたいに敬語ですか?
水:こんなに仲良くなった今でも彼女は、崩すことがあっても、基本は敬語を使ってくれますね。
中:はい、大尊敬しているので(笑)! 私は今まで学園物語に出演することが多くて、まわりはだいたい同年代。演技について訊ける人が撮影現場にそれまでいなかったので、はじめて相談したいって思える年上の方ができたことがうれしかったんですよね。しかも私がそれを訊いたとき、水川さんの目がウルウルしたんです。この一件がきっかけで本当に“お姉ちゃん”って存在に変化したのだと思います。一緒にお芝居をしたあの期間は、不思議であり、とってもいい時間でしたね。
水:ウルウルっていうか……ね(照)。普段私は(中条さんのことを)ポーって呼んでいるんですけど、ポーにとって「お芝居」がどんな意味をもっているのかなっていうのが、正直はじめは解からなくて。もちろん一生懸命やっているのですが、どんな気持ちでお芝居しているのかなって、気になっていました。でも、それを私が尋ねるのもちょっと違うなって思っていたなか、撮影の待ち時間に「どうやったらお芝居って上手になるんですか?」って唐突に訊かれたんです。お芝居が好きとか嫌いとかっていうことよりも、もっと上手くなりたい、お芝居と向き合いたいって考えていたことに感動したと言うか、グッときたんです。それをほかでもなく、私に質問してくれたっていうのもすごくうれしかったかな。「そんな風に思っているんだったら、上手になるから大丈夫じゃない? 一緒に楽しくやりましょう」ってその時は伝えました。具体的なアドバイスとかではないんですけどね。というのもそれって、ポー本人が自分で見つけるものであって、私が答えを教えられるものでもないから。
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中条さんにはとっても大きな出会い。いろんな共演者がいるなか、水川さんのどんなところが、特別しっくりハマったのでしょうか?
中:いろんなタイプの主演の役者をみてきたし、自分でも主演の作品をやらせていただいてますが、「白衣の戦士」で水川さんが見せてくださった主演としての姿がシンプルに素敵だったのだと思います。当時、ダブル主演という状況で私自身は「どう立ち振る舞ったらよいのだろう?」って、探りながらの状態でした。でも水川さんは、そんなの関係ないというか……(笑)。「私、主演の水川です!」みたいなムードはまったく出さないんです。いつもうるさいくらいに大笑いして、知らず知らず現場が明るくなるし、空気感を変えてくれる。もちろん真剣にお芝居するけれども、カットがかかった瞬間にいつも笑ってましたね。みんなを引き込むエネルギーをもっている方。私もそうなれたらいいなって、自分の姿を重ねてみたくなる部分があったんです。
水:めっちゃ、今日褒めるやん(笑)! 作品やっている当時はよく言ってくれていましたが、久々に聞きました。
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水川さん流の“リーダシップ”というか“お姉さんシップ”って、とってもエネルギッシュで楽しそうですね。それって年齢や経験を積んでから身についてきたことでしょうか?
水:う~ん、どうでしょう。無意識なところでもあります。
中:いや、もうこの方の場合は才能! 面白い才能ですね!! ドラマで3ヶ月、一緒にいたというのもあって、みんなのことも、私のこともよく見てくださっているから、今でもこうやって安心して心を開けるのかもしれません。それに水川さんの発言はどれも的確。ドラマをやっていた当時は「あんた今、ちゃんと考えてへんかったやろ!」って、ピシャッて指摘してくれました。その度にハッとするんです。なんか面白いことに、全部がこの方にはバレているし見透かされているんですよね。
水:あー、芝居しているときにね! ポーッとしてるのを指摘すると、ハッとなる姿がすごい面白かった。
中:見ていないようで、しっかり見ていてくれてるんですよ。
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どんな状況でもあたたかい気持ちで見守ってくれているのって、年下からしたらとても心地よいこと。水川さんからみて、中条さんのどんなところが可愛いですか? ドラマが終わってもお付き合いを続けたくなる、彼女の魅力とは?
水:私がポーについてすごく良いところだなって思うのは、超ヘナチョコなとこ。
中:(爆笑)
水:パブリックイメージがあるから、表現についてはちょっと事務所さんと相談してください(笑)。でもそのヘナチョコが、すごく素晴らしいんです。しかもヘナチョコを自分で認めているんですよ。「これはできるけど、これはできない」って、自分でわかっている“頭がいいヘナチョコ”。抜けているところももちろんあるんですけど(笑)、とにかく潔いし気持ちがいい。こちらとしてもきちんと言ってあげたくなる人柄なんですよね。だいたいのみなさんは、硬くガードをしていたりクールを装いますから。
中:えー(笑)! そんなヘナチョコに、なにか言っても、伝え甲斐あるんですか?
水:コンニャクみたいなヘナチョコなわけじゃなく、ちゃんと伝えたら響くからいいの。私も冗談のフリして言いたいことをドラマの撮影中はちゃんと言えてました。ポーも徐々に私の顔色を読んできたり、「今、何にも考えてないのバレてた?」みたいなときは、テヘって顔とかもしてましたけど。制作期間中でお互いに築いた関係性があってこそ、その素晴らさに気づけたし、彼女のすごく好きなところ。一番の彼女の……なんだろう(笑)? 素質かな!
中:え、そこが? ヘナチョコが(笑)?
水:ヘナチョコというか……。武装せず、カッコつけないところ? とはいえ、ちゃんと頭がいいこと言ったりするんですよ、ヘナチョコなのに(笑)。切り替えの早さやギャップが魅力的ですよね。
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それはとびっきり素直で、変なプライドをもっていないことですね。簡単なようだけれどなかなかできないこと。中条さんは、誰に対してもそのヘナチョコ感をさらけ出せるのですか?
中:う~ん…(悩)。
水: いや、もともとそういう人なんじゃない(笑)? 違うの?
中:ちょっと待ってください! 私だってどこでもヘナチョコじゃないですよ。自分がいちばん年上の現場とかもあったりするので、そういうときはやっぱり「ちゃんと年上らしくいなきゃいけないな」って思うから、ヘナチョコは隠したりもします。
水:「ヘナチョコは隠す」って(笑)! 「武装」とかって言って。
中:そもそも水川さんになんでヘナチョコな自分をさらけ出したかというと、そうでもしながら水川さんからもっといっぱい話を聞きたいって思ったから。「私はこのような者なのですが、あなたはどんなご経験や考えを持っていらっしゃるんですか?」と相手に迫るようなノリですかね(笑)。
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確かに「相手をもっと知って、学びたい」という好奇心とリスペクトがこの関係には大切ですね。水川さんにも、20代の頃にお姉さん的な存在はいましたか?
中:知りたい!
水:私は27歳くらいの頃に大河ドラマで宮沢りえさんとご一緒したときに、初めて年上の女性と仕事の話ができました。何かにすごく悩んでいたから相談したというより、当時のりえさんは、先にいろんなことを投げてくれる感じでした。「こうした方がもっといいんじゃない」って、さらっとヒントをくださるタイプ。そのときの私はまだ舞台を1度しか経験でしたが「私は30のときにやったけど、やってみるといいと思うよ。向いていると思うから」ってりえさんがおっしゃって。こっちが尋ねる前に、自分で考えるきっかけになるような言葉を投げてくれるんです。メンターという存在って、必ずしも真似やお手本にする対象ではないけれど…「考えるきっかけをくれる人」っていう感覚なのかも。
中:新しい刺激をもらえる人、みたいな?
水:そうかもね!
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では、おふたりから見た「素敵なお姉さん」像とは?
中:ちょっと生意気に聞こえるかもしれませんが…考えを押し付けることなく、程よい距離にいて、いざとなったら背中を押してくれるような人。うちは父親が外国人ということもあり、「やりたいと思ったことをやればいい」といった自由で放任主義な家庭で育ちました。だからかな。立ち入り過ぎず、自らの背中で何かを指し示してくださる大人の女性はいっしょにいて心地よいし、憧れますね。
水:ポーの環境と共通するものが私にもありますね。うちは加えて母が「まわりと一緒」なことをよしとせず「多様性を楽しみなさい」と言ってランドセルも持たせてもらえなかったです。誰にだって得意・不得意があるし、考えも個性もさまざま。自分の考えだけが正しいと思ってしまって、排他的になってしまうと、もったいないですよね。お互いの違いこそ面白がれて、とにかく何事も面白がりながら生きている人は素敵だなと思います。
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中条さんは、こんなに人生を面白がりながら謳歌しているお姉さんが側にいると、きっと心強いですよね。バリバリ仕事をしながらご結婚された水川さんのニュースも、刺激になったのでは?
中:はい! 私は旦那さまとお仕事をさせていただいたこともあったので、格別にうれしかったです。
水:仕事もしているし、普段から飲んだりもしているしね。
中:おふたりを見ていると、すごくお互いを支え合っているし、努力を続けられる関係が大切だと気付かされますね。ドラマ中にずっと忙しいときも、水川さんって旦那さまにもおにぎりとか作っているのです。お互いをそうやって支えながらも、結婚後も変わらずに自分らしく仕事をされているのも素敵なことですよね。
水:結婚はもともと「この歳でしたい」という願望があったわけではなく、むしろ年を重ねるほど結婚に対する意識が薄れていったくらいです。物事って、何かを手放そうとすると縁があるんだなって、思いません? 仕事もそうだし、いろんなことがそう! 1回リセットすると、驚くほどさらっと舞い込んでくるの。でも私はポーくらいのときに、一番結婚したかったかも。
中:へぇ~!
水:なんか憧れのほうが大きくて。
中:私はもうノリで生きているタイプなので、今は結婚にたいするプランはないし、とりあえず自分らしく幸せでいられたらって思います(笑)。
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シンプルで潔いですね。今日のお話を重ねたなかで、改めて年の差があるからこそ築ける、おふたりの特別な関係について振り返らせてください。
水:ある意味友達ですし、先輩と後輩といえばそうだし……なんだろう? でもさっき言ったように育った環境も似ていたりとか、同じ関西出身ということもあるし、「親戚の人」って感じ。たまに会う可愛い姪っ子みたい(笑)。
中:そういえば、先日も急に私が「会いたい!」って水川さんを呼び出して、ごはん食べましたが「あんた、親戚やと思ってるやろ!」って言ってた(笑)。
水:そう、お昼ごはん食べながら「私のこと親戚だと思ってるやろ!」ってね(笑)。共演したドラマでは彼女が作品に全うした真摯な姿を側で見ていたこともあるので、もちろん普通に知り合った年下の子とも仲良いですが、それと彼女はまた全然違う存在ですよね。
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「親戚みたい」というのは、絶対的な安心感とほどよい距離感を含んでいるのかもしれませんね。今日も水川さんがさっと、中条さんに朝食のおにぎりを渡しているのをチラッとお見かけしました。それに会った瞬間から、中条さんはずっとうれしそうにちょっかい出して。
中:あれは今日の旦那さまのお弁当だか朝食の残りなんです(笑)。いつも「食べな」って、気にかけてくれんですよね。
水:(残り物って)よくお分かりで(笑)! この子、会った瞬間からずっと絡んでくるんです。本当になんなん(笑)?
中:まあ単純に大好きなのと~、触れば触るほど、面白いものが出てくるんです。コメディアンなので(笑)。これからもいろんなことを話したいし、本当は私はもっといっぱい会いたいんですよ……(小声)。何か話をしたり真面目な相談をしても結論がないことも多いんですが、聞いてもらえたり、側にいるだけでなんかホッとするんです。本当にほどよい距離感。
水:なんの話だったか、分からない日もあるよね(笑)。
中:仕事の真面目な話から、お天気の話くらいのどうでもいいことまで。さらに冗談も全力で言い合えるこんな存在は、ほかにはいないです。まわりにもすごいびっくりされるもん。「めっちゃ仲良くない? なんで?」って(笑)。
水:ほんと? それおもしろ! 私もほかにいないですね。
中:仕事でもプライベートでも「もう本当に~!」「何やってるの~!」みたいな感じであたたかく見てくださっているので甘えちゃいます。これからも、ヘナチョコだろうと受け入れてくれるんだろうなって(笑)。
水:いやいや、ちょっとは遠慮しぃ(笑)。
年の差があっても、限りなく対等な立場からお互いを刺激しあっていることがわかるおふたりの和やかなやりとり。心地よい距離感と互いへの敬意がしっかりあるからこそ、メンターは大人になってこそ大切なのかもしれない。職場でもプライベートでも「ちょっと素敵だな」と思えるお姉さんがいたらチャンス! 豊かな人間関係が花開くことを信じて、素直な気持ちを一度ぶつけてみては?