モデルや芸能人として活躍するだけでなく、デザイナーとしてのキャリアも開花させた才能あふれるガールズ・クリエイターたち。本気で向き合う服作りへのアツい思いや華やかなファッションショーの舞台裏までを聞きました。第3回は、モデルのikumiが登場。
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透け感が魅力のシャツは、幽霊の刺しゅうもポイント。
カラーパレットは白と黒のみ。ユニセックスでワンサイズ。モデル、ikumiによる「IKUMI(イクミ)」は、クールなストリート感と、他ブランドとは一線を画すその潔さも魅力。4度のニューヨークコレクションを経て、2018年春夏シーズンからはパリに進出。持ち前のガッツでゲリラ式のショーやストリートキャスティングを行う、直感を信じて突き進むガールパワーに直撃!
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”お化け”からの透け感やプリントをIKUMIらしく表現した18年春夏コレクション。
ブランドを始めたきっかけは?
24歳のとき、雑誌の撮影でニューヨークでショーを見たブランドが出してるロゴTのコピー商品を着たり、自分の提案していることが人に真似されて、かつ自分もコピー商品のような服を着せられてる。そんな違和感を感じていたときに、友達に「自分でオリジナルの服を作ってみたら?」と言われたのがきっかけになって、ブランドを始めました。雑誌の仕事を通して仲良くなった会社の中でスタートして、そのときはデザインだけの担当。会社に4年ほどいる間に色々経験し、独立。全部1人でやるようになりました。会社の人が繋いでくれたおかげで、なんとかできました。とは言えやることも多いし、中国の工場を回ったときには体調も壊してしまったりと、すごく大変でした。
2年間1人でやっていて、ECの出荷用で家の中には常に段ボールが100箱くらいある状態でした(笑)。私的には、作った大好きな洋服に毎日囲まれて幸せだったけれど、去年の夏に今の事務所に移って、今のマネージャーが家に来たときに埋もれた私の部屋を見て「やばい、これは大変だ!」って。すぐさまトラックを借りて事務所の会議室に運んでくれたんです。「2年間は頑張ったから、次からは変えていこう」って、今は事務所内で一緒に手伝ってもらいながら、IKUMIをカッコよくしていこうと頑張っています。
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仕事中のマストは、コーヒーと動画or音楽。最近はNetflixの『リック・アンド・モーティ』がマイブーム。
モノトーン、ユニセックス。デザインの核はどのように決まったの?
男っぽい服が元々好きで、それが反映されてユニセックスになりました。中学でも制服にスニーカーとキャップを後ろ被りで学校に行ってたり、古着屋でもでかいサイズやメンズの服を着たり、ラフなスタイルが好き。色については始めから決めていたわけではなくて、最初はパステルカラーも入れていました。でも自分の中でパステルとか赤、タイダイが好きになったり……、コロコロ変わるのが落ち着かなくて、独立の少し前から白と黒に絞るようになりました。その分ディテールにこだわったり、1つ1つにより向き合うようになりました。
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パリコレデビューの写真。本人もランウェイを歩くショーは「ikumi」ワールド全開。
服作りのインスピレーションは?
デザインのアイデアは、改まって考えるのではなく、自分のエピソードの中から膨らませていくことが多いです。2018年春夏コレクションは「家の中にお化けが4人いる」って言われたところから始まりました。怖かったけど、逆にずっとお化けのアニメ見るようになって、そこからお化けの透け感やプリントが生まれました。ショーに向けて最大限に出すので、ショーが終わったら頭の中も切り替わる。「家の幽霊もいなくなったね」って言われました。供養できたのかな(笑)?
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定番人気を誇るロゴシリーズも、もちろん白と黒で統一。
どうして海外でショーをやろうと思ったの?
ブランドを始めて、最初に買い付けてくれたセレクトショップがニューヨークのオープニングセレ モニーだったんです。そこの人たちがサポートすると言ってくれていて、モデルのときからショー が大好きだったのもあって「じゃあやっちゃおうかな」って。初めてのニューヨークのショーは、 実はゲリラ。お金を使わなくたって、洋服をカッコよく発表できるはず!と思い、とりあえず乗り込みました!
しかし、4日前になっても好きな会場が決まっていない状態(笑)。ロウアーイーストサイ ドにあるスケートパークが好きで「ここでできたらいいのになぁ」と思いながらよくそこで休憩して いたんです。そんなとき友達を通してスケートパークを仕切ってるチームのボスにたまたま出会い 「3日後にショーをしたい」と伝えたら、びっくりしつつも「君最高!OK、やろう」って逆に気に入ってもらえて、彼らの助けも借りてゲリラでショーをすることができました。
モデルは道で声をかけまくり30人集まってくれました。 インビテーションは出さなかった代わりにインスタで告知したのと、オープニングセレモニーもイ ンスタで紹介してくれたので、人がいっぱい来てくれて反応もすごくよかった。 3 無計画だったから余計に結果化学反応が起きて盛り上がったので、これからもゲリラスタイルは続 けていきたいです。
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半年に1度刊行しているZINE『●▲■』は代官山 蔦屋書店にて発売中。「このシーズンの頭の中みたいな感じです」
初めてのパリコレはどうだった?
大成功!でしたが、大変の方が多かったです。結果ショーにはこぎつけたけれど、また振り出しに戻されたような感 じ。まず会場探しが難航。ニューヨークだと面白がって協力してもらえることが多いけど、パリ だとチャンスが貰えない。ストリートキャスティングも、ニューヨークでは割とすぐショーに出 たいって言ってくれるアジア人を見つけられたけど、パリではそうもいかなくて……。当日の反省 も、今までで1番多かったです。メイクルームが暗くてやりづらかったとか、お客さん呼ぶことと か、改善していかないと。服を作ってくれたアシスタント、工場の人、ヘア&メイクのチーム ……、全員に大満足!最高!と言ってもらえるように、次はもっと、、ヤルゾーーー。
パリコレはあと3回かな?ニューヨークで4シーズンやったので、パリも同じ回数。そのあとはカッコよかったらどこでもいいかな、と思ってます。東京もありだし、札幌とか地元の 十勝とか(笑)。ちゃんと発信して、どこでやってもウエブ上で見てくれる人がいるようなブラ ンドになっていたいです。
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「18年秋冬で予定しているニットのアイテムは、実家のおばあちゃんにも手伝ってもらってます」
ブランドをやっていて楽しいときって?
ショーと、それからZINEを作っているときも楽しいです。絵を描くのも昔から好きで、プリント は今もすべて手で描いています。学生時代はプリクラが好きで、授業中もずっとプリ帳を机の下 で作ってたんです(笑)。こんな絵描いてとか、このページは背景を黒にしよう、次のページはカラフ ルにしようってレイアウト考えたり。コラージュが好きで、それが原点なのかも。お母さんにも 「生かされてよかったね」って言われます。発信するのも好き、ショーも好きで、作るのも好き。 好きなことしかしてない。楽しみすぎていて「仕事だと思ってないでしょ?」って言われること がよくあります。直感型で、計算できないんですよ。やったら止まらない。
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60カ所切り裂いたというダメージワンピ。「工場に頼むと上がりがキレイ過ぎて、全然雰囲気が変わっちゃう」
未来のクリエイター・ガールへのアドバイス。
自分が楽しいと思うことを全部続けていってほしい。絵を描くでもなんでもいいから、好きなことをやり切る。「君はこっちじゃない?」って言ってくる大人がいるかもしれないし途中不安になることもあるかもしれないけど、違和感を感じながら妥協して別のことをするのではなくて、けんかしてでもやりたいことを貫く。そうしたらきっと色んな人が入ってくるから、きっと大丈夫。
そんな私でも、1人でやっているときは「これでいいのかな?やり方間違ってないかな?」って悩むこともあったけど、それでもがむしゃらに続けていたら今みたいに事務所の人がバックアップしてくれるようになったり、それからメイクのUDAさんにもすごくお世話になっています。ショーのメイクだけでなく、本番直前に大量のダメージTシャツをメイクチームも総動員して、いっしょに切り裂くのを手伝ってもらったり……。無謀でもいいから、妥協せずに挑戦すること。そして周りを巻き込みつつ、突っ走るのがいいと思う。
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