持ち前の美貌とセンスで、雑誌やテレビで引っ張りだこ。さらに、デザイナーとして本気の服作りに目覚めたガールズ・クリエイター。最新のコレクションとともに、仕事の舞台裏やアイディアの集め方など、クリエイションの秘密に迫ります。第2回目は「GROWING PAINS(グローイング ペインズ)」を手がけるマドモアゼル・ユリアに密着!
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自由に目覚めた大正時代の”モガ”に、パンクなスピリットを加え表現した18年春夏シーズン。
音楽とファッションに愛される、イット・ガールの感性。
DJ、シンガー、そして世界が注目するファッション・アイコン、マドモアゼル・ユリア。デザイナー兼プロデューサーを務める「GROWING PAINS(グローイング ペインズ)」も、早6シーズン目。17年春夏コレクションからはショーも開催し、今ではすっかり「Amazon Fashion Week TOKYO」のハイライトとなる存在に。ジャンルを超えたマルチな活動から生み出されるエッジィな世界観でトウキョウガールを夢中にさせる、そのクリエイションとは? -
”モガ”がテーマの18年春夏コレクション。モダンに昇華された大正時代を感じさせるディテール使いにも注目。
ブランドをはじめたきっかけは?
これまでにも色んなブランドとコラボレーションで服を作ることがあったのですが、コラボってでも相手があってこそのもの。全部を自分の好きなようにできるわけではないから「思いっきり自分の世界観で服作りができたら楽しいだろうな」という思いをずっともっていました。「自分のブランドで、自分がディレクターとして服を作れないかな」って色んなところで話をしていたところ、今のブランドをやってくれている会社の方が「一緒になんかやろうよ」と声をかけてくれて、その場で「やる」って即答。自分だけじゃどうにもならない、でもどうしても叶えたい、っていう夢は色んなところで言うようにしています。
デザインの勉強はしていないのですが、中学と高校が美術系の学校で画塾にも通っていたので、絵の描き方はなんとなく学んでいます。高校ではグラフィックデザインも勉強して、フォトショップの使い方も学びました。でもスケッチは手描き派。その方がいつでも、思いついたときにできるので。
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デザイン作業を行うのは、自宅のリビングルーム。
「GROWING PAINS」ってどんなブランド?
「GROWING PAINS」では、毎シーズン異なるテーマを設けています。18年春夏コレクションでは、大正時代のモダンガール”モガ”をテーマにしました。私自身、色んな服装が好きで色んなものに興味があるので、テーマを1つに絞りたくなくて……。だけど毎回一貫して同じところがあって、それは強い女性であること。自分の人生を謳歌している女性像を掲げています。背景となる時代や国、描く女性の年齢も違うけれど、芯の部分は同じ。自分自身もこうありたいって思う部分なので、毎回その女性に共感しているし、自分が憧れる女性像を作っています。
初めてショーをやった17年春夏シーズンのとき、作っているものが毎回違う分なおさらストーリーを大切にしようと思い、より細かいストーリーまで考えるようになりました。ストーリーを共有してもらった上で、ショーを見てもらえると嬉しいです。次のショーももう目の前に迫っているので、頑張ります。みんなの反応も気になります。
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18年春夏コレクションのクリエイションにも影響を与えた、絹をキャンバスに作品を描くアーティスト、佃紀章の作品。
服作りのインスピレーションは?
私の場合、わざわざ探すというよりも、日々楽しく過ごしていたらアイデアが浮かんできたり「それいいな」と思うことがあったり。実際、18年春夏コレクションの”大正ロマン”は、まさに自分の趣味の世界。でもインスピレーションの源ってどこからくるか分からないから、日々色んなことにアンテナを張るようにしています。ファッションとは関係なくても、色んな情報をもらうことが大事かな。
私はその世界に入り込みすぎてしまうことがあって……。そういうときは、客観的な視点に立って俯瞰で見るようにしています。“モガ”がテーマの前回のコレクションでは、小笠原伯爵邸というまさに大正ロマンにぴったりのベニューでショーを行いました。最初『華麗なるギャッツビー』のようなフィンガーウェーブにダークなリップのヘア&メイクを考えていたのですが、一旦立ち止まって「でも今20年代じゃないし、それだとつまらないよね?」って。完全に20年代の世界観を表現するなら、きっとそっちが正解なんだろうけれど、でも私の服を着てくれる子ってストリートとかの格好が好きな子。そう考えて、ヘア&メイクはちょっとパンク寄りにしました。
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佃紀章の作品からインスパイアされたドット柄のコート。
色んなキャリアを積んだからこその強みって?
実は美容師免許を持っています。ヘア&メイクになりたかったので、美容学校に通っていました。中学・高校では美術をやっていたし、DJは高校のときに始めて、その前にバンドをやっていたことがDJに繋がっています。ショーをやるとなると、音楽も大事だし、ヘアメイクも大事。だから、ある程度全部を勉強しておいて良かったな、と思います。結果何一つ無駄はなかった。私が歌手、マドモアゼル・ユリアとして活動しているときは、セルフプロデュースという面で今までやってきたことを生かせていたけど、今はそれが自分をプロデュースするという枠から、服やショーといった別のものを作り出すということに変わったのかな、って思います。
自分の強みはないかな?よく旅行に行ってるのは強みなのかっていったら、それだけではダメ。自分で手に入れたいものは自分で取りにいくしかないし、自分で作り出すもの。よく「行動派だよね」って言われるんですけど、全然そんなことないんです。結構悩むし、動き出すまでに自分の中でめちゃくちゃ葛藤します。「行動しなきゃ」って意識して行動してるだけ。私は、興味のあることに対してはものすごく掘り下げていくタイプ。だけど、興味のないことに関して何にも知らない人。無知なことがすごく多いので、特にファッションに関しては意識的に情報を収集しようと思っています。自分のスタイルだけ作るのであれば好きなことだけでいいけど、自分のためではなくて人が着る服を作っているわけだから、自分の知らないことも知ってないといけないな、って。
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実は無類のアニメ好き!「いつかはキャラクターとコラボしたい」
クリエイター同士の交流ってどんな感じ?
プロダクトのコラボに関しては「一緒に面白いことやりましょう」って思ってくれて、自分たちのやってることと波長の合う人としていきたい。RMKさんは「GROWING PAINS」のコンセプトに共感してくれてコラボが始まりました。今季はイギリスのブランド「HYDRA」ともコラボしましたが、実はデザイナーは昔から仲のいい友達で、ロンドン行く度にその子の家に泊まってます。彼女の作ったコートが実は着物とかにインスパイアされてるということだったので「じゃあ次のコレクションぴったりじゃん」となり、グリーンのラテックスのコートが出来上がりました。アニメ好きの私なので、今後はアニメとコラボしたい。キャラクターを自分で調理したいです(笑)。
毎シーズンパリコレにも行っていますが、海外デザイナーのクリエイションも勉強になります。規模もお金のかけ方も作っている体数だって違うから参考にはできないけれど、でも「こんなことできるんだ、あれってどいういう生地使ってるんだろう」という風に。お客さん的な見方をしていたときは、ショーを見に行っていてもリリースにあまり目を通していなかったけれど、最近は会場に着いたらまず読むようにしています。よくわからないテーマとか出てきたりもするのですが、そのときは調べる。テーマにしているものも勉強になったりします。
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ファッションアイコンならではの圧巻のシューズクローゼット。
未来のクリエイターガールへのアドバイス。
「今さら新しいこと始めるのなんて」って思っている人がいたら、それってすごくもったいないこと。何かをやるのに、遅いってことはないって思うから。歌舞伎だったりとか、子どものときからやっていなきゃっていうものだと難しいかもしれないけれど、でもファッションってそうじゃないこと。全然いつ始めても遅くない。臆病になっちゃうことがもったいないしその間にもどんどん時間は過ぎてくから、思い立ったらまずやるしかない。自分のやりたいことって、自分から飛び込んでいくべきだし、自分からどんどん発信していくしかないこと。有名とかそうでないに関係なく「自分はこういうことやりたい」って、ツイッターやインスタで発信するのでもいいし、周りの友達に言うのもいい。まさか繋がるって思ってなかったとこから、繋がったりすることもあるから。SNSだったらダイレクトにそういう人に繋がるかもしれないし、友達から「こういう人と知り合いだから、紹介しようか?」って意外なところから関係が生まれるかもしれない。強くやりたいと思うことを、周りにも知ってもらう。それってすごく大事なことだと思います。そして、いざチャンスがきたときに備えて、勉強する。私自身、30歳の節目を迎えたけれど、これからもどんどん新しいことに色々挑戦してみようと思っています。
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