映像、音楽、ファッション、アート ……etc 。目覚ましい活躍を見せる、若きミレニアルズの肖像に迫るスペシャル企画。ラストを飾ってくれるのは、れもんらいふ所属のグラフィックデザイナー、永瀬由衣さん。彼女のバックグラウンドや、影響を受けたものを掘り下げることで、内なる才能と向き合い、育んでいくヒントを探ります。
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千原徹也さん率いるデザイン事務所、れもんらいふにて、グラフィックデザイナーとして多忙な日々を送る永瀬由衣さん。女子美術大学でファッション&アートを専攻していた彼女は、在学中からインターンを経験。同社初となる新卒として入社し、ファッション関連の広告や、本の装丁、CDジャケットのデザインを手がけるなど、着実にキャリアアップを重ねている。
「この業界に興味を持ったのは、ファッションがきっかけなんです。中学のとき古着にハマり、原宿のカルチャーに傾倒していって。 当時話題になっていた蜷川実花さん×中川翔子さんの写真集に大きな衝撃を受け、こんなポップな世界観をつくりたい!と思うようになりました。女子美に進学し、先輩の野田凪さんの存在を知ってからは、徐々にアートディレクターという職業に興味が湧き始めて。れもんらいふでインターンとして働いたり、ほかのクリエイションの現場も手伝わせてもらったりと、忙しく動き回っていましたね」
現在、永瀬さんは代表の千原さんのアシスタントとして、デザインの実務作業や撮影の立ち会いをこなしつつ、自身がアートディレクションを務めるプロジェクトも同時に進行。ミュージシャンのCDジャケットを手がけるなど、徐々に頭角を現しつつある。支える側から、皆を引っ張っていく側へ。求められる立ち位置が徐々に変わっていくなか、戸惑いや迷いはなかったのだろうか。
「自分のイメージを伝えつつ、アーティストの要望も取り入れ、スタッフ全員が納得する作品をつくる。実際にやってみると、これがとっても大変で。何をやりたいのか見えないと言われ、正直落ち込んだこともありました。自分が上に立って仕事を進めるには、絶対的なコミュニケーション能力が必要で。下で支えているときはわからない苦労や発見がありましたね」
初めてアートディレクションを経験してわかった、人を束ねていくことの難しさ。だがその悩みも場数を踏むごとに薄れていき、最近はやりがいを感じる瞬間も出てきたそう。
「もうすぐリリースされるSHE IS SUMMERのアルバムは、自分でもすごく手応えがあって。デビュー時から関わらせてもらっていますが、今回はよりよいものをつくろう!とチーム一丸となって挑めた気がします。現場は部活さながらの雰囲気で、“こんなにかわいいって連呼したの久しぶり!”とか、“また一緒にやりたい!”という声もいただいて。それはもう、死んでもいいくらいうれしかったですね」
最後にこれからの目標を尋ねると「もっと自分の世界観を追求し、メディアに“こういうことやりませんか?”と逆に提案できる存在になりたい」と語ってくれた彼女。 ガーリーやスタイリッシュという言葉ではくくれない、自分にしか表現できないかわいさ。その絶妙なニュアンスを追い求めて、永瀬さんのクリエイターとしての実験の日々は続いていく。
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ドレス¥47,000 ブラウス¥40,000/共にG.V.G.V. ブーツ¥39,000/K3&CO.(以上K3 オフィス) その他私物「G.V.G.V.(ジーヴィジーヴィ)」 の新作を纏い、路地裏に佇む永瀬さん。構築的なシルエットの服に目がないらしく、この日衣装として選んだのも、大きなパフが印象的なレースブラウスと、ラメが織り込まれたジャカードのフレアドレスだった。「最近は可愛いから一歩抜けた感じの、キレイなものに惹かれます。盛るだけでは表現できない、引き算によって生まれる大人の美学みたいものを、ファッションでも作品でも表現できたらと思っています」
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永瀬さんのルーツにあるガーリーな世界観。それを端的に表してくれる私物がこちら。「YUKIさんがカバーを飾った90年代の『H』は、古本屋でまとめ買いしたもの。中学生の頃から彼女のファンで、いつか仕事でご一緒したいという思いが、創作の原動力にもなっています。中川翔子さん×蜷川実花さんのコラボ写真集『しょこれみかんぬ』は、ヴィジュアルを通じて自分の世界観を表現してみたいという、きっかけを与えてくれた1冊。SHE IS SUMMERの『Swimming in the LOVE E.P』は、私がアートディレクションをした思い入れの深い作品。11月にはニューアルバムもリリースされるので、そちらもぜひチェックしてみてください」