映像、音楽、ファッション、アート……etc。目覚ましい活躍を見せる、若きミレニアルズの肖像に迫るスペシャル企画。第4回となる今回は、ミュージシャンのメイリンさん(ZOMBIE-CHANG)にフィーチャー。彼女のバックグラウンドや、影響を受けたものを掘り下げることで、内なる才能と向き合い、育んでいくヒントを探ります。
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ユースな時代を象徴する存在としておなじみのメイリンさん。電子音を駆使したゆるいローファイサウンドで注目を浴びる彼女は、ZOMBIE-CHANG(ゾンビーチャング)というソロプロジェクト名を冠に、シーンを牽引する若手バンドや、日本語ラップ界の重鎮、スチャダラパーらとギグを重ね、耳の肥えたファンの心を着実に捉えてきた。
「音楽をやろうと思ったのは15歳のとき。最初はギターの弾き語りから始め、電子音だけで曲をつくるようになりました。よくニューウェーヴ系って形容されるんですけど、自分ではよくわからなくて。もともとはパンク好きで、カジュアリティーズとかを聴いていました。あと古い歌謡曲やポップスとかも。どうやら70~80sの音楽に自分のルーツがあるみたいです」
古いものに惹かれるのは、音楽に限らずカルチャー全般だそうで、いまはウディ・アレンの思想やスタイルに大きく影響を受けているという彼女。彼の映画から創作のヒントをもらうことも多いそう。
「『カフェ・ソサエティ』(2016年)という作品を観たとき、すごく腑に落ちるものがあって。彼はサルトルの教えを大事にしてるので、そこから哲学に関する本を読んでみたり……。心がときめくものとの出合いって、歳を重ねるにつれて少なくなってくるので、そのキラキラした原理を理解していくしかないなって。今は自分の世界を輝かせてくれるものを探して、フランス語を習ったり本を読んだり、感性を磨くことに集中しています」
自分と真摯に向き合うことで、自然と生まれてくる心の変化。それは演奏のスタイルにも色濃く表れていて、最近はバックバンドを携え、打ち込み音だけでなく生音を織り交ぜたライブを行っているという。
「もっと内から湧き上がるものをアウトプットしたいと思うようになって。その答えがバンド編成でライブを行うことだった。やっぱり生音ってエネルギーがあっていい。昔と変わったなって感じる人もいるかもしれないけど、そこはあまり気にしてないです。音楽ってその場しのぎものじゃなく、経験や歩んできた歴史が自然と表れるものだと思うから」
すべてを自己完結させるスタイルから新たなフェーズへ。絶えず内面を掘り下げ、ベストな表現方法を模索している彼女。幻想のような“キラキラとしたもの”を追い求め、メイリンさんの表現者としての長い旅路は続いていく。
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根っからのヴィンテージ好きとして知られるメイリンさん。この日も下北沢のヒッコリーで調達した古着のタートルとスカート、ドクターマーチンのシューズという、どこか懐かしさを感じさせるスタイルで登場。「ブランド物もいいけれど、やっぱり自分で掘り出しものを見つけるのが好き。その過程を経ないと、なんだか変な感じがしちゃって(笑)。物への愛着も増す気がします」。ゆるさのなかにある譲れないこだわりが、誰ともかぶることのない、インディペンデントな個性を作り上げる。
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彼女のパーソナリティを知るうえで手がかりになる、私物のキーアイテムがこちら。「音楽はいろんなツールで聴きますが、好きなのはレコード。浅川マキさんの歌は、地に足がついてるどころか、足が沼にはまってるようなディープさがあって。この『浅川マキの世界』は部屋でひとりで聴いていますね。ジュール・ルナールの『にんじん』という本は、人に勧められて手に取ったのですが、主人公の淡々と強く生きる姿がすごく印象的で。共感する部分がたくさんありました。あと家で曲作りをするときに欠かせないのがフィギュア。デスク周りに置いて、集中力がきれたときにプロレスごっこなどして遊んでいます(笑)」