映像、音楽、ファッション、アート……etc。目覚ましい活躍を見せる、若きミレニアルズの肖像に迫るスペシャル企画。第3回となる今回は、『ハイアーマガジン(HIGH(er) magazine)』の編集長、haru.さんにフィーチャー。彼女のバックグラウンドや、影響を受けたものを掘り下げることで、内なる才能と向き合い、育んでいくヒントを探ります。
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日本でも急速に広まりつつあるZINEカルチャー。自由な発想で作り上げられるリトルプレスがムーブメントとなるなかで、切り口や写真のおもしろさで抜き出ているインディペンデントマガジンがある。それがharu.さんが編集長を務める『ハイアーマガジン』だ。東京藝術大学でアートを学ぶ彼女は、2年前に紙媒体を立ち上げ、フェミニズム、政治問題など、社会性のあるテーマを盛り込みながら、自分達のフィルターを通した“今”を発信している。
「初めてZINEをつくったのは高校3年生の頃。3.11がきっかけでドイツに移住していたのですが、言葉の壁もあり、思いをうまくアウトプットできないことに苛立ちを感じていて。最初はイラストや文章を綴ることから始め、卒業式のときにはクラスメートにTシャツをデザインし、その姿を写真に収め、冊子にして配ったりしました。そこから“他者と自分との関係”を表現する楽しさを覚えていった感じです」
帰国後は、藝大の先端芸術表現科に入学。写真や音楽、演劇と、さまざまな技法を学んでいくなか、“紙”というツールを通して自己表現することにおもしろみを見出した彼女は、友人らと共に『ハイアーマガジン』を創刊。メンバーとの共通言語だったファッションをテーマに、自分達が見たいものを形にすることをスタートさせる。
「友人にモデルを頼んで、衣装を制作し、撮影をして。身近な人たちのスナップや、映画や音楽にまつわるコラムも差し込み、とにかく自由に作りました。エディトリアルに関する知識が全くない状態から、すべて実践で学んでいった感じです。2号目はガールズエンパワーメントをテーマに、フェミニズムや性について掘り下げたのですが、制作途中に熊本で震災が起こったので、それを記事として急遽取り上げたり。常に自分たちが置かれている状況を反映した誌面作りを心がけてきました」
現在、マガジンは計4冊発行されているが、すべてソールドアウト。その間にも「フェンディ」とファッション媒体とのトリプルコラボでスペシャルなZINEを制作したり、シブカル祭の隔月誌を手がけるなど、社会を巻き込みながら発信力を高めている。
「作っていていちばん楽しいと感じる瞬間は、自分と仲間の成長を肌で感じるとき。ひとりでやってると、引き出しが増えてることがわからないんですが、メンバーを見ていると、“あ、こんなことも出来るようになってる!”って気づかされることが多々あります。雑誌ってひとりじゃ絶対できないもの。人との関わり合いが、創作の大きなモチベーションとなっています」
最後に雑誌という表現媒体にこだわる理由を聞くと、「ふとしたときに手に取れるような気軽さがいいんです。オブジェなどのアート作品と違い、カバンに入れて持ち運べてところも好きですね」と語ってくれたharu.さん。自分達の心に正直に、読み手の心の奥まで響くようなものを届けたい。彼女のまっすぐな思いは、同世代だけでなく大人達の心も震わせ、世界をつき動かす。
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デニムジャケット¥36,000 シャツ¥30,000 デニム¥28,000 シューズ¥70,000/以上HOUSE_COMMUNE(バロックジャパンリミテッド) その他私物柔らかさのなかに芯の強さを秘めた、自然体な雰囲気が魅力のharu.さん。そんな彼女がいま関心を寄せるのが、ギャル文化をはじめとする都市と若者との繋がりについて。「昔から文化社会学的なことにすごく興味があって。渋谷の街も、オリンピックに向けて宮下公園が取り壊されたりと、街も人も様変わりしていてハッとさせられることが多い。そのかわりゆく姿を、メインビジュアルと言葉で伝えられたらと思っています」
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自身が制作する『ハイアーマガジン』ほか、創作のインスピレーションとなるものを見せてもらった。「創刊号の表紙には、友人でモデルの奈衣瑠を起用。売店のレジ袋でつくったオリジナルの衣装を着用しています。『teen VOGUE』は中学校のときに定期購読していたもの。ジャスティン好きなので捨てられなくて(笑)。雑誌はファッション誌に限らず、いろいろと読みます。古本屋でみつけたレイアウトの本は、デザインを組んだりするときの参考に。音楽はダウンロードじゃなく、CDで聴く派。このポータブルプレーヤーは高校のときから愛用していて、今はカーティスという友達がやっていたバンドのアルバムをよく聴いています」