1月も後半に差し掛かり、ちょっぴり疲れ気味なこの時期は、パワフルな女性キャラクターから元気をもらいたい。我が道をゆく母親に翻弄されるティーンエイジャーや病院で子どもを取り違えられた女性、夫とのセックステープが流出してしまった著名人まで。逆境から逃げず、強く生き抜く女性たちを描くドラマをピックアップ!
-
責められるのは女性だけ!? セレブセックステープ流出事件のリアル
「パム&トミー」2022年のエミー賞や2023年のゴールデン・グローブ賞にノミネートされた話題作『パム&トミー』。人気ドラマ「ベイウォッチ」や『プレイボーイ』誌で名をはせた俳優のパメラ・アンダーソンと、伝説のヘヴィメタバンド、モトリー・クルーのドラマー、トミー・リー夫婦に実際に起きた、セックステープ流出事件の裏側を描く。
「ベイウォッチ」でのセクシーな水着姿など、90年代のセックスシンボルだったパメラことパム。1995年にトミーと出会い、一週間足らずで結婚。その後、新婚旅行中に二人で撮影したセックステープが2年後の1997年、思わぬ形で流出することになる。キム・カーダシアンやジェニファー・ロペスなど、セックステープの流出は、その後ハリウッドを揺るがす大問題へと発展していくのだけれど、パムとトミーのトラブルは間違いなくその先駆け。今ほどネット上での拡散スピードが早くなかった90年代に、セレブのセックステープ流出はどのようにしてはじまり、どう決着したのか。その一部始終が若きパムとトミー夫妻の視点を通じて展開される。
ヘヴィメタバンドのドラムだけあって、セックステープ流出を受けても「俺には影響がない」と言い切る夫のトミー。一方、セックスシンボルといわれても、実際の行為のテープが流出したことで、バラエティ番組でひどくいじられたり、ドラマの撮影現場で色眼鏡で見られたり、仕事に大きなダメージを受ける妻のパム。男性は芸の肥やしといわれ、女性ばかりが責められる。世間の潜在的な性差別の描写が実にリアルだ。
妻として、母として、俳優として、人生最大の危機を必死に乗り越えるたくましい女性・パムを演じるのは、実写版の『シンデレラ』や『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』などに主演するリリー・ジェームズ。正統派のイメージが強いリリー・ジェームズだけれど、本作ではセクシーで妖艶なパムを見事に再現。これまでのイメージを覆している。
一度ネット上に流出した映像は、どんなに手を尽くしてもすべてを回収することはできない。パムと同じ状況になった時、私たちはどう声をあげればいいのか。SNS最前線の現代を生きる私たちは、被害者のリアルボイスから学ぶことが多い。
「パム&トミー」
ディズニープラスのスターで独占配信中。
(C) 2023 Disney and its related entities
-
メキシコ発! 病院で赤ちゃんを取り違えられた2人の母の選択
「母と母と娘」病院で赤ちゃんを取り違えられた2人の母のドラマを描く、メキシコ発のヒューマンドラマ。
一人は、母子家庭で育ち、自身も未婚のまま出産した若き母・マリアナ。もう一人は、事業で成功し、すでに2人の子どもを育て、社会からの信頼も厚いアナ。年齢も収入も育った環境も価値観も全く異なる2人の母親は、ひょんなことから同じ病院で出産をすることに。
出産後、しばらくしてから赤ちゃんの取り違えを告げられたマリアナとアナ。ここまで育ててきた赤ちゃんが実は他人の子だったなんて、受け入れられるはずもない。2人は気持ちの整理がつくまで、アナの豪邸でそれぞれの家族、赤ちゃん含め同居生活をすることに。
他人からどう思われるかなんてまるで気にしない自己肯定感の高いマリアナと、子どもにも夫にも部下にも規律を重んじ失敗を許さないアナ。タイプの違う2人だけれど、「強さ」だけは共通。子どもが幸せになるためならどんなことでもする一方で、自分の未来も同じように大切に考えている。夫や男たちに人生のかじ取りをさせず、外的環境に振り回されながらも、自分の人生を自身でコントロールしていくさまは見ていてすがすがしい。
人生は、思わぬ出来事の連続だけれども、その時々でどう考え、どう決断するかは自分次第。自身で選択と決断を繰り返した結果、人生が思わぬユニークな方向に向かっていく2人の行く末は、最新シーズンでチェックできる。
「母と母と娘」
Netflixシリーズ。シーズン1~3を独占配信中。
-
母はたぶらかし魔女!? ティーンエイジャーの数奇な人生
「ジニー&ジョージア」若くして2人の子の母になったジョージアと、自由奔放なジョージアに翻弄される娘のジニーの不思議な母娘関係を描くヒューマンドラマ。
長身で細身、ブロンドヘアに小顔、ついでに最高にキュートな顔立ちを誇るジョージアは、高校生の子をもつ母親には到底見えない。自分をよく知るジョージアにとって恋愛はゲーム。狙った獲物を逃がすことは決してない。
そんな最強女子・ジョージアの子どもたちは、気は強いものの少し奥手なジニーと、純粋無垢なオースティンの二人。ジョージアが何かやらかすたびに引っ越しを繰り返してきたけれど、新しく引っ越してきたウェルズベリーでは、ジョージアが新しい恋人と婚約したり、ジニー自身も恋をしたり、友達ができたりと何かと忙しい。
これまで以上に母娘関係がうまく行き始めた矢先、ジニーが母の驚きの過去を知るところでシーズン1は終了。シーズン2へバトンを渡していくのだけれど、子どもたちに責められても、嫌われても、平然とした顔で「完璧な女」を演じ、打算的に生きられるジョージアはまるで鉄の女。母親にはしたくないし、絶対に敵には回したくないタイプ。でもたくましく生きる彼女がそばにいたら、人生に怖いものなんかなくなりそう。
そんなジョージアだけれど、幼少期に大きなトラウマを抱え、名前と故郷を捨てた過去がある。だからこそ、どんな逆境が訪れても動じない強さを持ち合わせているのだ。対する娘のジニーは、クレイジーな母のもとで育っただけあって、高校でいじめられても、母親のとんでもない過去を知っても、ぐっと耐える忍耐力がある。
Netflixの今日の総合TOP10(グローバル・テレビ部門)で1位にランクインするなど、世界で話題のドラマシリーズ。シーズン2で訪れる母と娘の対決ではどちらが勝つのか。強き二人の生き様を見守ってほしい。
「ジニー&ジョージア」
Netflixオリジナルシリーズ。シーズン1〜2を独占配信中。
-
アメリカ最大の政治スキャンダル。
巨大勢力に挑戦状を叩きつけた女性の素顔
「ガスリット 陰謀と真実」1970年代に起きたアメリカ史上最大の政治スキャンダル「ウォーターゲート事件」を現代の解釈で描くドラマシリーズ。
@gaslitstarzウォーターゲート事件とは、1972年、ニクソン大統領時代に起きた政治スキャンダル。ニクソン率いる共和党政権の野党であった民主党本部に盗聴器が仕掛けられたことにはじまり、事件への関与を強く疑われた共和党やニクソン陣営が結果的に1974年に辞任するまでを総称するもの。このドラマでは、そんなニクソン政権下で司法長官をつとめたジョン・ミッチェルとその妻マーサ・ミッチェル夫婦の葛藤と苦悩、そして挑戦が描かれる。
ジョンをショーン・ペン、ジョンの妻マーサ・ミッチェルをジュリア・ロバーツが、限りなく本人によせて演じたことでも話題に。関係者みんなが沈黙を貫く中、マーサが、共和党の事件関与をマスコミに言ってまわったことで事態はとんでもない方向に進む。彼女の発言は果たして本当だったのか。当時は、ニクソン大統領の辞任を持って幕を閉じたが、昨今、マーサの発言を振り返るドキュメンタリー番組が登場するなど、彼女の存在や発言に再び注目が集まっている。
@gaslitstarzこのドラマで注目したいのは、女性差別が根強く残る70年代のアメリカで、アメリカ二大政党の一つである共和党という巨大政治勢力に危険を顧みず立ち向かった彼女の度胸だ。命の危険を感じながら、夫のキャリアへの影響に悩みながら、マスコミの前では毅然とした態度をとり続けたマーサ。妻として、母として、女性として、悩みながらも強く正しく生きようとする、マーサの素顔が赤裸々に描かれる。
本作には、ジュリア・ロバーツが主演するドラマ「ホームカミング」でエグゼクティブ・プロデューサーを務めたサム・エスメイルや、ドラマ「シリコンバレー」のマット・ロス、「MR. ROBOT/ミスター・ロボット」のチャド・ハミルトンらが名を連ねる。
名俳優と気鋭の制作陣によって再現されたアメリカ史上最大の政府スキャンダルと、その裏側にいた女性マーサ・ミッチェル。知られざる彼女の存在をぜひ目に焼き付けてほしい。
「ガスリット 陰謀と真実」
Amazon Prime Video、または、Apple TV+内の「STARZ」にて配信中。