時空を超えた出会いや、世紀のスーパースターとの奇跡の交流。その後の人生に豊かな輝きをもたらす運命の出会いを描いた、心あたたまる3本の新作映画を堪能して。
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©︎2021 Lilies Films / France 3 Cinéma
『秘密の森の、その向こう』
娘、母、祖母という3世代の、時空を超えた温かいつながりを描いた『秘密の森の、その向こう』。神秘的で静寂な森の中にたたずむ家で、少女たちの交流が丁寧に紡がれる。『燃ゆる女の肖像』でセザール賞撮影賞を受賞したクレア・マトン監督の新作だけあって、映像の美しさはお墨付きだ。
8歳のネリーは大好きな祖母が亡くなった数日後、片付けのため両親とともに祖母の家を訪れる。子ども時代を過ごした家での思い出で胸がいっぱいになった母は、何も言わずにひとりでどこかに行ってしまう。残されたネリーは、かつて母が遊んだ森を探索するうちに、自分と同じ年の少女と出会うのだが……。
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©︎2021 Lilies Films / France 3 Cinéma
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©︎2021 Lilies Films / France 3 Cinéma
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©︎2021 Lilies Films / France 3 Cinéma
/時空を超え8歳の母と出会う奇跡の物語、
静かなときの流れは喪失感をやわらげ余韻を残す。森で出会った少女は母と同じ「マリオン」という名で、その家を訪ねると見知った祖母の家だった。時空のいたずらを察したネリーは、正体を名乗らぬままマリオンとの仲を深めていく。同じ年の“お母さん”と遊ぶ不思議さ、まだ生きている“祖母”と話せる安らぎは、ネリーの喪失感を埋めていく。
ネリー&少女のマリオンには、本作が映画初出演のジョゼフィーヌ&ガブリエル・サンスという双子姉妹が抜擢された。クレア監督はリハーサルなしで即興演出を行い、ふたりのナチュラルさを引き出す。自然な演技により、映画の持つファンタジー感と現実の境目はよりシームレスに。奇跡の出会いの物語は深い余韻を残すはず。
『秘密の森の、その向こう』
公開中
https://gaga.ne.jp/petitemaman
配給:ギャガ
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http://mimosafilms.com/beatles/
『ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド』
今年でレコードデビュー60周年を迎えたザ・ビートルズ。彼らの最高傑作と名高い『ホワイト・アルバム』誕生に遭遇した青年が、ビートルズとインドで過ごした8日間を振り返る『ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド』。ヴェールに包まれていたインド滞在期のビートルズの素顔が明らかになる、貴重なドキュメンタリーだ。
1968年、23歳のポール・サルツマンは失恋の傷を癒しに北インドにある僧院の門を叩く。そこで思いがけず出逢ったのは、世界的ロックバンド、ザ・ビートルズのメンバーらだった。ポールは瞑想を学びながら、ビートルズと過ごした8日間を多くの写真に残した。そして、32年後の今、振り返る旅に出る。
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© B6B-II FILMS INC. 2020. All rights reserved
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© B6B-II FILMS INC. 2020. All rights reserved
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© B6B-II FILMS INC. 2020. All rights reserved
/旅先でのザ・ビートルズとの出会いが、
青年の人生を変えてゆく……!?世界的人気&知名度を誇り、誰もが虜だったビートルズ。そんな彼らが世間から遠く離れた場所で、リラックスして作曲していた風景を、ポールの回顧や当時の関係者のインタビューを中心に紐解いていく。セレブリティの彼らが、ポールととても近しく過ごしたという出来事こそ、旅が起こした稀有な出会いだ。
本作の製作総指揮者のひとりには名匠デヴィッド・リンチが名を連ね、さらに全体のナレーションはモーガン・フリーマンが担当という豪華さ。ビートルズのファンはもちろん、あまり馴染みがないというガールでも、観たらきっとビートルズの曲を口ずさみたくなる1作だ。
『ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド』
公開中
http://mimosafilms.com/beatles/
配給:ミモザフィルムズ
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©︎2021「川っぺりムコリッタ」製作委員会
『川っぺりムコリッタ』
松山ケンイチ演じる孤独な男が、アパートの住人たちと触れ合うことで心のエナジーを取り戻していく『川っぺりムコリッタ』。『かもめ食堂』の荻上直子監督が、自ら小説を書きおろし映画化した本作は、食卓を囲むシーンが多い。“人と温かいごはんを食べられる幸せ”が全編を通して感じられ、胸がいっぱいになる。
家族も生き甲斐もない山田(松山ケンイチ)は、北陸のイカの塩辛工場で働き始め、安アパートの「ハイツムコリッタ」に住むことに。彼のささやかな楽しみは、風呂上がりの冷えた牛乳と、炊き立ての白いごはん。人と関わらず生きていきたい山田だったが、隣の住人・島田(ムロツヨシ)が毎日のように来訪し、彼の静かな日々は一変する。
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©︎2021「川っぺりムコリッタ」製作委員会
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©︎2021「川っぺりムコリッタ」製作委員会
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©︎2021「川っぺりムコリッタ」製作委員会
/人と人とのつながりが希薄ないま、
リアルな人間の出会い&やり取りが胸を熱くさせる。山田の周りは、島田以外にも大家でシングルマザーの南(満島ひかり)や、息子とふたり暮らしで墓石を販売する溝口(吉岡秀隆)など、癖の強い住人ばかり。なりゆきで彼らと関係を深めていくことになるのを面倒に感じる一方で、その出会いにより、山田は自分のすぐそばにあった小さな幸せ、喜びに気づいていく。
コロナ禍になり、人と人とのつながりが希薄になってしまった現代において、リアルな人間同士が交わる必要性について改めて考えたくなる本作。それぞれの事情を抱える住人たちが支え合う姿に、こわばっていた心がほどけていく感覚を味わえるはず。
『川っぺりムコリッタ』
公開中
https://kawa-movie.jp/
配給:KADOKAWA
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