世界最大の海外ドラマの祭典、エミー賞まであと少し。コロナ禍でもどかしかった日々を盛り上げてくれた作品の頂点にたつのは? 世界中で話題になった壮大なラブストーリーから、マニア必見のスポ根ドラマ、日本初上陸のマストウォッチ作まで。ノミネ―ション作品から有力候補をご紹介!
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最終回でサーバーダウン!?
全米が夢中になったサスペンス。
『メア・オブ・イーストタウン / ある殺人事件の真実』オスカー女優・ケイト・ウィンスレットが中年の女性刑事を演じる、HBO制作のサスペンスドラマ。フィラデルフィアの田舎町・イーストタウンを舞台に、残忍な少女殺人事件の真相に迫っていく。本格サスペンスと銘打つだけあってケイト演じる主人公メア以外、全員が犯人候補! 謎が謎を呼ぶミステリーに多くの視聴者が釘付けになり、なんとアメリカでの最終話配信時には、HBO Maxのアプリがサーバーダウンする事態に。SNSでも犯人がだれか予測する投稿が目立つなど、話題に事欠かなかった本作。エミー賞ではドラマ部門作品賞や主演女優賞をはじめとした16部門でノミネートを獲得している。
本作一番の見どころは、主役を演じたケイト・ウィンスレットの役者魂。映画『タイタニック』や『愛を読む人』をはじめ、『アンモナイトの目覚め』、『ブラックバード 家族が家族であるうちに』など、数々の映画に主演するケイトが、約10年ぶりにテレビドラマシリーズに出演。イギリス訛りの英語を封印しアメリカ英語での演技に挑んだり、ベッドシーンではあらわになった自身のおなかのたるみを修正しないようクリエイターにリクエストしたりと、ストイックに役作りを追求。くたびれた表情や目じりの皺、おなかのたるみが、様々な不運に見舞われ疲れ切ってしまった中で、なんとか踏ん張って生きる中年女性メアをリアルに描き出している。
サスペンスの真相、メアのリアルさだけでなく、メアが抱える複雑な家族関係からも目が離せない! 同居する母や娘、小さな男の子、近くに住む元夫…と、初回から不穏な空気が流れている本作。メアの家族たちは何を抱えているのか、メアの人間関係やヒューマンドラマにも注目。今年のエミー賞を席巻するであろう本作、エミー賞での有終の美を見守って!
『メア・オブ・イーストタウン / ある殺人事件の真実』
U-NEXTにて見放題で独占配信中。
https://www.video.unext.jp/title_k/mare_of_easttown
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マニアの間で話題沸騰!
『ベスト・キッド』の後日譚を描く、スポ根ドラマ。
『コブラ会』ユニークなフォントで綴られ、はちまきを巻き、胴着をきた白人の中年男性が登場するキーアートはインパクト大! Netflixヘビーユーザーであれば、一度は作品名やアイコンを目にしたことがあるであろう『コブラ会』。
1984年に公開された映画『ベスト・キッド』の公式続編である本作。大きな空手大会で競い、結果勝敗が見事にわかれてしまった高校生のジョニーとダニエル。本ドラマシリーズでは、彼らの34年後を描いている。主役がイタリア系移民でいじめられっ子だったダニエルだった映画と打って変わって、ドラマではダニエルを執拗にいじめていたジョニーが主役に! 映画でダニエルに完敗し長くそのコンプレックスを抱えて生きてきたジョニーが、本ドラマである移民高校生に出会い、空手を通じて再起することを誓うところから物語はスタートする。本作では「空手」を通じて、一度は落ちぶれた中年男性ジョニーが成長し、再び人生の喜びを手にしていく過程が描かれるだけではなく、アラフィフを迎えるジョニーやダニエルの子どもたち、つまりティーンエイジャーたちのストーリーが連動して描かれているのが魅力。禁断の愛や複雑な友達関係などを描いた刺激的なドラマで、幅広い年齢層の心をキャッチしている。
スポーツに対する考え方に現代要素を挿入した点にも注目を。「勝つためなら何をやってもいい」時代から、「スポーツマンシップにのっとり、相手を敬いフェアに勝負する」時代へ。誤ったスポ根精神を塗り替える描写こそ、視聴者の心をつかんで離さない理由の一つ。ファンの間では大人気な作品だけど、あまりにパンチが強すぎて公式なアワードでスポットを浴びるのは難しいと言われていた本作。シーズン3にしてはじめてエミー賞コメディ部門作品賞のノミネートを獲得したとあって、SNSはファンの歓喜の声で大盛り上がり。これで実際に受賞となれば、まさに歴史が変わる瞬間かも!? キーアートだけ見て「私好みじゃないかも」と敬遠していた人も、イメージに引っ張られずぜひ一度視聴してみて。
『コブラ会』
Netflixシリーズ。シーズン1~3まで独占配信中。
https://www.netflix.com/jp/title/81002370
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Netflixで最も視聴された作品に。
イギリス貴族の令嬢による壮大なラブロマンス。
『ブリジャートン家』2020年のクリスマスシーズンにNetflixで配信開始されたラブロマンス。配信から1カ月で世界8200万世帯が視聴し、当時Netflixで最も視聴された作品に! アメリカやフランス、イギリスやブラジルなど世界83か国では、「今日の総合TOP10」で1位を記録するなど、世界中の人々を魅了した。
本作は、19世紀初頭のイギリスを舞台にしながらも、テーマが「貴族ご令嬢たちの婚活競争」と非常にキャッチー。女性たちはある一定の年齢になると、結婚相手を探すために婚活市場に躍り出て、少しでも早く競争から抜けられるよう血眼になって相手を探す。出会い方やパーティーの質は違っても、構図は今の婚活市場とまるで同じ。当時の女性たちがいかにしてパートナーをゲットしたのか、現代女性たちの関心を集めている。
大河ドラマに新たな解釈をいれた点も現代的! 本ドラマでは、性に奔放なヒロインや、アフリカ系の公爵など、当時のイギリスでは見受けられない設定が多く登場する。当時の様子を緻密に再現してなんぼな大河ドラマのルールを打ち破った点が斬新で爽快。周りの女の子が婚活に夢中になる中、結婚に一切興味がなく自立を望むダフネのキャラクターも魅力的で、性別や人種に関係なく、私たちは自分の納得いく道に進んでいい!と、勇気づけてくれる。
「婚活」という誰もが興味のわくテーマで視聴者を魅了し、その実は多様性を受け入れ歓迎する構成をとる新感覚大河ドラマ。シーズン2の制作が既に決定するほどの話題作なので、エミー賞前にぜひチェックして。
『ブリジャートン家』
Netflixシリーズ。独占配信中。
https://www.netflix.com/jp/title/80232398
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世界を守るヒーローたちがまさかの悪役!?
逆転の法則で笑いを誘うアンチ・ヒーロードラマ。
『ザ・ボーイズ』2019年にシーズン1の配信がスタートし、現在シーズン2まで配信されるAmazon Prime Videoのアンチ・ヒーロードラマ。“スーパーヒーローだからって誰もがクリーンなわけじゃない。中には裏の顔をもつ大ヒーローだっている”をテーマに、俗にいう世界的に有名なスーパーヒーロー集団「セブン」と、セブンに恨みをもっていたり、誇れることが何もない平凡な人々が織りなすグループ「ザ・ボーイズ」の仁義なき!?戦いを描く。
正義をふりかざすやつに限ってろくなやつがいない。真向からヒーローを否定する姿勢で本シリーズはスタート。大企業に雇われたヒーローたちは、地球平和を守る兵士かと思いきや、地位や名声、権力に溺れ、平気で汚職に手を染めるようになっていた。正義とは何か、ヒーローとは何者なのか。正解がわからない、昨今の社会を風刺するかのような過激な描写も話題に!
人種差別に女性の犯罪被害、セクシュアリティ、ドラッグ問題……。ヒーロー対アンチヒーローの戦いの中でリアルな社会問題が描かれる本作。目を閉じたくなる問題がまざまざと登場し、深く考えさせられる。堕落してしまったヒーローたちがそうなってしまった理由や、ザ・ボーイズが抱えるトラウマなども映し出し、人間ドラマも見応えたっぷり。リアルなシーンに、思わず感情移入してしまうはず。一部では振り切りすぎた作品との批評もあるけれど、エンタメ、風刺、人間ドラマのバランスが絶妙な本作。賞レースにどこまで食い込むのか、その結果を見守って。
『ザ・ボーイズ』
Amazon Prime Videoにてシーズン1~2まで独占配信中。
https://www.amazon.co.jp/dp/B08BYJL8KY/
©Amazon Studios