先日、8枚目のアルバムとなる『フォークロア』をサプライズリリースしたテイラー・スウィフト。発売から4週連続で全米アルバム・チャート1位を獲得するなど、快進撃を見せる最新アルバムに収録された全17曲を解説。
出典:GLAMOUR US
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アルバム『フォークロア』とは?
タイトルの『フォークロア』は民族伝承の意味。リリースに際してテイラーは「この状況において、ペンを手に取り、ファンタジーや歴史、思い出にふけることが私なりの現実逃避方法だったんです」とコメント。そんな言葉通り、本アルバムでは架空の登場人物の恋や人生のあれこれがノスタルジックなメロディにのせて歌われており、アルバム全体が1つの大きな物語かのごとく壮大かつストーリーテリングな内容に仕上がっている。さらに、今作ではこれまで活躍していたカントリーやポップといったジャンルを飛び越え、新たにオルタナティブロックやインディーフォークを取り入れた楽曲作りに挑戦。テイラーの友人で以前より共同でアルバム制作をしているジャック・アントノフに加え、「ザ・ナショナル」のアーロン・デスナーも共同プロデューサーとして参加した。「これまでは新しい音楽を発表する“完璧なタイミング”について多分考え過ぎていたと思います。けれど、(新型コロナウイルスの感染拡大を経験した)今となっては私たちが生きる時代に保証されたものなんてないことを教わった」と前作からたった11ヶ月でサプライズリリースに至った経緯を説明。
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『フォークロア』全17曲を解説!
ここからは本アルバムに収録されている全17曲についてブレークダウン。海外ファンたちの考察も交えてお届け! まるでアルバム全体がひとつの物語のようだと言われる、その内容とは?
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“the 1”
「あなたが運命の人だったら楽しかっただろうな」「私たちの間には確かに何かがあったはずなのに」「何か1つでも違う行動をしていれば、違う結末になっていたのかな?」と過去の失恋に対する素直な想いをしたためた1曲。
“cardigan”
全米シングル・チャートで初登場1位となった『フォークロア』のリードシングル。多くのファンたちはこの曲はテイラーの恋人ジョー・アルウィンについて歌ったものでは?と考えている模様。「誰かのベットの下に放置された古いカーディガンのような私を、あなたはお気に入りだと言ってくれた」という歌詞は、メディアの執拗なゴシップ報道やセレブとの確執により表舞台から消えていた彼女が、ジョーと出会い、徐々に幸せを取り戻してきた姿と重なる。
“the last great american dynasty”
この曲に登場するレベッカという女性は、2013年にテイラーがロードアイランドに購入した別荘の元オーナー。もともとは中流階級出身&バツイチだったものの、資産家と結婚したことで成り上がりを遂げたレベッカ。そんな彼女が周囲の雑音を跳ね除けながらたくましく生きる様子をユーモアたっぷりに描いている。
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“exile”
インディー・フォーク・バンド「ボン・イヴェール」をフィーチェリングに迎えた1曲。「状況を良い方に変えられなかった、だって君は何の合図も出してくれなかったから / あなたは何も変えてくれなかった、私はたくさん合図を出していたのに」とすれ違う恋人同士の悲痛な叫びが歌われている。テイラーの優しい歌声とジャスティン・バーノンの渋い低音ボイスがミックス&マッチ!
“my tears ricochet”
タイトルを直訳すると「飛び跳ねる涙」。「あなたが私を埋めるとき、あなたは私があげたジュエリーを身につけている」という暗喩的な歌詞が示すように、この曲はテイラーの楽曲の原盤権を勝手に売買したビッグマシーンレコードの創設者スコット・ボーチェッタ&音楽プロデューサーのスクーター・ブラウンに宛てた歌ではないかと推測されている。
“mirrorball”
この曲のテーマは一途な恋心。「あなたに知っておいてほしいの、私はミラーボールだって / 今夜、あなたのいろんな一面を見せてあげる」「あなたのためだけに輝くから」といったピュアな歌詞が並んでいる。あるファンは、テイラーが恋人のジョーと初めて出会ったメットガラで着用していた衣装がミラーボールのようなシルバーのミニドレスだったことを指摘。
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PHOTO BY GETTY IMAGESテイラーとジョーが初めて出会ったとされる2016年のメット・ガラ。
“seven”
故郷のペンシルベニアでの幼少期の思い出を歌った「seven」。共同プロデューサーのアーロンはVultureとのインタビューのなかで「子供時代を振り返って、その時の気持ちや記憶に思いを馳せたんだ」「この曲で1番重要なのは『フォークソングのように私たちの愛は語り継がれる』というフレーズ。この歌詞こそ『フォークロア』を通して伝えたかったことそのものなんだ」とコメント。
“august”
本アルバムの8曲目に収録されているのは、1年の8番目の月について歌った“august(8月)”。ファンたちは“august”について、”betty”(後述)に登場するジェームズの浮気相手の目線から綴られた曲ではないかと推理。「8月はワインのボトルのようにすぐに過ぎ去ってしまった」「あなたから連絡が着たときのために予定をキャンセルしてたのに」と都合の良い関係に甘んじる女性の切なく苦しい心情が、メロウな音色にのせて綴られたサマーアンセム。
“this is me trying”
この楽曲は、壊れた恋愛関係やキャリアにおける障害について歌ったと思われる。「状況を理解しようと努力している」「輝くタイヤは今では錆だらけになってしまった」「私は努力しているって知って欲しかった」などと、もう戻ってこない誰かに宛てた後悔の言葉が綴られている。
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“illicit affairs”
タイトルの日本語訳は「禁じられた関係」。「誰にも見られないように家を出て、フードを被って誰とも目を合わせないようにしよう」「友達にはランニングに行ってくると言ったから、家に戻るときは顔を火照らせなきゃ」といった歌詞が並んでいる。道ならぬ秘密の恋に走ってしまう主人公の切ない思いは、聴いているだけで胸が張り裂けそう!
“invisible string”
この楽曲では、異なる環境で育ったテイラーとジョー・アルウィンが「目に見えない糸(=日本で言う“赤い糸”)」によって引き寄せられる様子が描かれている。また、「私の心をズタボロにした男の子たち/ 今では彼らの赤ちゃんにプレゼントを送ってる」という一節はテイラーの元カレであるジョー・ジョナスについて言及されたものだと思われる。ファンたちは、ここで登場する“赤ちゃん”というのがジョー・ジョナスと妻ソフィー・ターナーとの間に先日生まれた第一子のことを指しているのではないかと予想。ソフィーがテイラーのファンであることを公言していることもあってか、現在の2人の間には友好な関係が築かれている模様!
“mad woman”
“mad woman”で語られるのは、音楽プロデューサーのスクーター・ブラウンの悪事。テイラーの原盤権を買収したり、たびたび彼女を公の場で侮辱してきたことから、テイラーとは長年に渡って犬猿の仲。「私がそれを言ったらあなたはどう思ったかな?/ サソリの毒で反撃して殺していたかも/ 私だってそうするもの」「あなたは私から全てを奪った」という恨み節や、テイラーにしては珍しいFワードが歌詞に盛り込まれていたりと、彼に大切なものを奪われたテイラーの怒りがひしひしと伝わってくる1曲。
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“epiphany”
キリスト教の祝祭日であるエピファニー。アルバムのライナーノーツでテイラーは、祖父のディーンが第二次世界大戦中の1942年にガダルカナルで戦っていたことを告白。この楽曲ではそんな祖父の戦争体験が、キリスト教らしいホーリーなメロディにのせて語られている。
“betty”
高校のクラスメートであるベティに恋したジェームズが、過去に彼女を裏切ったことへの後悔を伝えているこちらの楽曲。ジェームズは女性の名前としても捉えられること、さらに近年テイラーがたびたびLGBTQコミュニティへの支持を表明していることから、この楽曲は女性同士の恋を歌ったものではないかという見解も。
“peace”
常にパパラッチに追われ、長年プライベートと仕事の境界がない生活をしてきたテイラー。そんな彼女が恋人に「私はあなたに平穏な生活を送らせてあげることができないの」「この先ずっとそんな感じでも良い?」「私が炎になって、あなたの脆い心を温めてあげる」と優しくささやくような内容に、「つまり、テイラーは(恋人の)ジョー・アルウィンと結婚するっていう解釈で良いかな?」と期待のコメントを寄せるファンも。
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“hoax”
“hoax(騙し)”で歌われているのは、不誠実な恋人にストレスを抱きつつも、その関係を絶ちきれずにいる主人公の心の叫び。「ヒーローが死んだらその映画は終わり」「あのときの傷がいまだに奥深くで痛むの」「本当に辛かった」などといったエモーショナルなフレーズが並んでいる。
“the lakes”
もともとフィジカルのCDにのみボーナストラックとして収録される予定だったけれど、アルバムの大ヒットを受けて急遽デジタル版でも配信を開始。この楽曲の舞台はかつて著名な詩人たちが愛したイギリスの湖水地方。「詩人たちが死に行った、あの湖に連れて行って」「そこでは崖の下で水浴びをしていても誰にもツイートされないの」「ウィンダミア(湖水地方の町の名前)の山頂は涙を流すのに完璧な場所」と安らぎの地での思い出を綴っている。なお、テイラーとジョーは以前この地を訪れたと言われており、そのときの記憶がベースとなっているのでは?と話題に。