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注目のブックストアに今読みたいおすすめの5冊を教えてもらう連載企画【BOOK STORE RECOMMEND】。今回は、青山ブックセンターで文芸を担当する青木麻衣さんに、新生活シーズンにあわせて“前向きになれる本”をお尋ね。読書時間が充実すること間違いなしの5冊を早速チェック。
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『のどがかわいた』大阿久佳乃(著)(岬書店) ¥1,300
まっすぐな言葉で綴る“詩の感じ方”。
三重在住、学校生活になじめない高校生だった著者が、茨木のり子や吉野弘といった詩人たちを取り上げ、詩を読むことの面白さを伝えたいと制作したフリーペーパー『詩ぃちゃん』。今までに発行した数冊のフリーペーパーの再録に、19歳になった著者が綴った書き下ろしエッセイを加え、1冊の書籍にまとめた。
「この本に収録されている文章のうち、一番最初に書かれたものは作者が17歳のときのもの。現在筆者は19歳で大学生なのですが、17歳当時に書いたものも、19歳になって書き下ろしたものも、その文章は10代ならではのフレッシュな魅力にあふれています。みずみずしいフィルターを通して、読む人に“詩の魅力”をまっすぐに届けてくれる。10代の頃の新鮮な気持ちを思い出させてくれる、原点に帰ったような気持ちになる本としておすすめします」
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『渡り鳥』岩谷香穂(著)(さりげなく) ¥2,500
4年に一度だけ出会える本。
文庫サイズで全366ページの分厚い本でありながら、文字が記されるのはたった8ページ。イラストレーターopnnerこと岩谷香穂さんが、“見えないものと見えるもの”をテーマに綴ったエッセイ一篇のみを収録する本書。店頭に並ぶのは閏年だけ。4年に一度だけ本屋にやってくる、美しい“渡り鳥”のような本。
「4年に一度しか発売されない。そんな本って珍しいですよね。閏年も今年だけですが、こんなに目まぐるしく世間が変わっていっているのも今だけ。つらく苦しいこともあるけれど、今という時を忘れてはいけない、そして4年後にまたこの本を手にとって、4年前に思いを馳せる時間が過ごせたら、と思っておすすめの本に選びました。余白のページにを日記帳のようにして、今の思いを書き綴ってもいいし、ただ手元に置いておくだけでもいい。布張りに空押しという加工を施したシックな佇まいの装丁もおすすめポイントです」
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『野中モモの「ZINE」 小さなわたしのメディアを作る』野中モモ(著)(晶文社) ¥1,500
色鮮やかなZINEの世界をご案内。
日本にいち早くZINE文化を紹介し、自らも制作してきた著者が、自身の経験を語り、同じくZINEのとりこになった人たちの声を交えながらその魅力を伝える1冊。商業出版とは異なり、流通を通さないからこそ発信できるそれぞれの個性。ZINEの歴史や文学フリーマーケットの成り立ちなども丁寧に記されたこの本を手に取れば、たちまちその面白さに引き込まれてしまうはず。
「この本は、何か新しいことを始めたいなと思っている人におすすめの1冊です。たくさんの人たちから発行され、最近は身近なものになりつつあるZINE。その内容もバラエティ豊かで、面白いものがたくさん。この本では、前半に著者である野中さんのZINEにまつわる半生を、後半に実際にZINEを作っている人へのインタビュー的な読み物を収録。何かを作って発信するって、楽しい! そんな想いにあふれた本なので、読んだ後きっと何か新しいことを始めたくなるはず。創作意欲を掻き立ててくれる1冊です」
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『センスのABC』岡尾美代子(著)(平凡社) ¥1,800
自分らしい“センス”を探そう。
ファッションから暮らしの道具、生き方にまでついてまわる“センス”との付き合い方について、スタイリスト・岡尾美代子さんが考察するフォトエッセイ集。センスがいいってなんだろう? センスを磨くにはどうしたらいいの? 誰だって一度はセンスについて悩んだことがあるはず。ぬくもりのある写真にショートエッセイを添えて、“センスとは?”のヒントを散りばめた1冊。
「パラパラとめくると、スタイリッシュな写真がいっぱい。おしゃれだけれど気取りすぎない、岡尾さんの独自の感性が伝わってきます。本のなかで印象的だったのが、イントロダクションに記された、センスを磨くのに必要なのは“選ぶこと”だという一文。そのどちらもが間違いではなく、選ぶことを積み重ねて磨かれていくのが自分だけのセンス。おうちで過ごす時間が長いこの時期だからこそ、改めてものを選ぶ視点を見つめ直してみるのもいいかもしれません」
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『旅の効用: 人はなぜ移動するのか』ペール・アンデション(著) 畔上 司(訳)(草思社) ¥2,200
人が“旅に出たくなる”理由を考える。
お金も時間も労力もかかるのに、なぜ人は旅に出るのか。旅に出ることは、私たちに何をもたらしているのか。インドを中⼼に世界を旅してきたスウェーデン人のジャーナリストが、自身の旅にまつわる記憶を丁寧に辿りながら“⼈が旅に出る理由”を重層的に考察するエッセイ。旅好きではなくとも興味をそそられる、味わい深い旅論を展開する。
「今は気軽に旅に出かけられない時期ですが、そういう時期だからこそぜひ読んでほしい本です。普段旅行に行くと、自分が楽しむことがどうしてもメインになるというか、どうやって旅先で自分の欲を満たすかということに目が向いていることが多いのではないでしょうか。でも、この本を読むと旅というのは“観光”だけが楽しみ方じゃないということがわかるはずです。遊びに行くのではなくて、世界の真の姿と出会い、その土地を感じることこそ旅。巻末で紹介されるおすすめの旅行記も一緒に読んでみると、さらに深みのある読書体験になると思います」