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注目のブックストアにおすすめの書籍をセレクトしてもらう連載企画【BOOK STORE RECOMMEND】。今回書籍のセレクトをお願いしたのは、2019年9月27日(金)にオープンする「誠品生活日本橋」。“アジアで最も優れた書店”にも選ばれた話題のショップが、満を時して日本初上陸。オープンに先駆けてショップに伺い、「誠品生活日本橋」の責任者である潘幸兒(ルーシー・パン)さんに、この秋おすすめの5冊を教えてもらいました。
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誠品時光: 誠品と創業者 呉清友の物語 各¥2,700
話題の書店、その歴史を紐解く。
1989年、台湾の台北市にて呉清友(ロバート・ウー)氏が創業した誠品書店。1999年には24時間営業店をスタートし、“世界初の眠らない書店”として話題に。その後カルチャー体験型店舗「誠品生活」をスタートし、豊かなコンテンツにあふれた文化の場として愛される存在に成長。現在では全世界で49店舗を展開し、台湾カルチャーを代表する百貨店として存在感を発揮している。
「今回、誠品は日本初上陸。台湾では誠品という存在に馴染みを持ってくださっている方も多いのですが、日本のみなさんには初めましてです。この本は、なぜ誠品を創業したのか、創業の理念、経営していくうえで立ちはだかった困難や、周囲からのサポートなど誠品30年の歴史を丁寧にしたためたもの。これを読むことで私たちの思いを感じ取ってもらえればと思い、おすすめの1冊に選びました」
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ハルカノイセカイ 01 台湾 ¥1,800
まだ見ぬ台湾の魅力をナビゲート。
次におすすめしてくれた『ハルカノイセカイ 01 台湾』は、女優・綾瀬はるかが世界10都市を巡り食べるプロジェクト「ハルカノイセカイ」の第1弾。夜市での食べ歩きに朝食専門店、台湾のソウルフード魯肉飯に名物鍋料理まで、ローカルグルメを思う存分堪能する“食べる、綾瀬はるか”を、写真家の佐内正史が撮り下ろした。
「このフォトブックに出てくる台湾の景色は、普通の台湾ガイドとは一味違うローカルな魅力あふれる風景。わたしたち台湾人には見慣れた風景なのですが、そこに綾瀬さんという女優が佇んでいることでまた違った魅力を見せてくれています。1枚1枚の写真からは、その街で暮らす人たちや風景、空気感がひしひしと伝わってきます。台湾が好きでディープな場所にも行っている方にとっては、“ここ、行ったことある!”と思えるでしょうし、台湾未訪問の方なら、ガイドブックを読んでいるだけではわからない一味違う台湾の雰囲気を感じられる。綾瀬さんの魅力と“まだ見ぬ台湾”を同時に楽しめる1冊です」
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向左走・向右走 ¥1,680
心に染みる大人の絵本。
誠品書店のみどころのひとつが、日本ではなかなかお目にかかれない台湾で人気の書籍に出合えること。『向左走・向右走』は、台湾の絵本作家・幾米(ジミー・リャオ)が1999年に発表した大人向けの絵本。20周年を迎える人気作家が活動初期に発表したロングセラー絵本では、アパートの隣部屋に住んでいながら、運命のいたずらですれ違いを繰り返す男女が描かれる。
「彼のデビュー時に誠品で作品お披露目会を行うなど、幾米さんは誠品と関わりの深い絵本作家。台湾では若い世代を中心に人気を集めています。この絵本は一見ラブストーリーのように思えるのですが、恋愛だけでなく、偶然がもたらす幸福や人生の意味など、より深い部分で気づきを与えてくれる作品。彼が描く繊細で美しいスタイルのイラストが、物語の奥深さをより一層引き立てます。“人生にはいろんな偶然があって、もともと平行線だったはずの人生が、ある日交わるかもしれない”という言葉が作中に出てくるのですが、私はこれがとても好きで。都会で暮らす人なら、彼の作品にどこかした共感できる部分があると思うんです。どうしても疲れてしまう都会での暮らしのなかで彼の作品に触れると、心がふわっと軽くなるんじゃないかと思います」
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菜市夜市(2冊セット) ¥4,560
言葉を超えて伝わる台湾の魅力。
フルーツにソーセージ、名物B級グルメ……大きな一枚絵に緻密なイラストがところ狭しと並ぶ2冊の絵本がセットになった『菜市夜市』。絵巻物のように広げられるユニークな絵本を眺めれば、台湾の市場を訪れたような気分に。細部まで繊細なタッチで描かれたイラストを通して、私たちに台湾のローカルな魅力を伝えてくれる。
「ぜひ手にとって見比べてもらいたいのですが、この2冊で描かれる菜市と夜市、実は同じ場所。昼間は主婦が食材を買い物する市場だった場所が、日が暮れると夜市に変わる。そこには、台湾を訪れた人なら“これ、見たことある!”とか、“実際食べておいしかった!”と思える事柄が緻密に、だけど優しいタッチで描かれています。絵本の良いところは、言葉を超えて内容が伝わっていくところ。この本や先ほど挙げた『向左走・向右走』は中国語の本ですが、パラパラとめくって眺めるだけでその世界が伝わってきます。国境や言葉を超えて、文化を伝えてくれる1冊です」
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センス・オブ・シェイム 恥の感覚 ¥1,400
“恥ずかしい”から探る文化の違い。
何を恥ずかしいと思うかは、人それぞれ。『センス・オブ・シェイム 恥の感覚』は、恥をテーマに他者との関わり方について描く短編エッセイ集。普段なかなか意識することがない“恥の感覚”について、改めて自分を振り返り、一歩立ち止まって考える機会を与えてくれる1冊だ。
「この本は、文化の違いって面白いなという思いで選びました。日本人って、周囲の目をすごく気にする民族だと言われることが多いですよね。台湾人の私から見て“そんなに気にしなくてもいいんじゃない?”と思うこともあったりして。でも、逆に同じようにそれは恥ずかしいよねと思うこともある。この本の作者は、そういった恥についての感覚が人と人との関係性を深めるきっかけになるのではと考えているんです。この本を読んで、“日本の人ってそんなことまで気にしてるの!?”ということに気づかされる部分もありました。逆に、日本の方がこの本を読むとどう思うかも聞いてみたい。国を超えて文化を考えてみるきっかけになればと思って、おすすめします」
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ルーシーさんがANSWER!「誠品生活日本橋」のみどころは?
「心も体も安らぎ、羽を休められるような文化的な場を提供するのが誠品。空間デザインはもちろん、商品のセレクトやイベント企画などを、出店するそれぞれの土地とリンクさせ、特色あふれるお店づくりを行なっています」
「おすすめの場所は、窓際に約30メートルの長さで続く文学の廊下。書棚には世界的な名作文学が並び、窓際に用意されたソファに腰掛けて読書を楽しめます。本を読みつつ窓の外の景色を眺めていると、忙しい生活の中にホッと一息つく時間が生まれ、疲れた心が休まるはずです」
「文学の廊下では、どの店舗にも必ず1脚設置されている、イタリアの家具ブランド・カッシーナの椅子もぜひチェックを。紳士のように店舗の片隅にひっとりとたたずむこの椅子は、創業者である故・呉清友氏が創業当時から大切にした“おもてなし”の心を象徴したもの。呉氏の読書空間を再現すべく、椅子の隣には小さなテーブルとランプが配置されています。ぜひ実際に座って、読書の時間を楽しんでみてください」
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<ABOUT 誠品生活日本橋>
2019年9月27日(金)COREDO室町テラス 2Fにオープン。“くらしと読書のカルチャー・ワンダーランド”をコンセプトに、多彩な文化情報を発信するカルチャーの集積地。約2,800㎡のゆとりある空間は、誠品書店(書籍)、誠品文具(ステーショナリー)、セレクト物販・ワークショップ、レストラン・食物販の4つのゾーンで構成。文化人によるトークセッションや音楽イベント、アート展、クッキングの実演など、バラエティ豊かな企画も楽しめる。「誠品書店」(書籍ゾーン)では、世界的に評価の高い誠品の選書ノウハウを活かした空間を実現。時代やジャンル、知名度にとらわれずにセレクトされたオリジナル企画“誠品選書”では定期的にブックフェアを開催。まだ見ぬ書籍との出会いがきっと見つかるはず! 台湾を代表する建築家、姚仁喜(クリス・ヤオ)氏が、日本橋の歴史・文化をインスピレーションに手がけた空間デザインにも注目を。