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注目のブックストアにおすすめの書籍をセレクトしてもらう連載企画【BOOK STORE RECOMMEND】。今回書籍のセレクトをお願いしたのは、自由が丘の住宅街にオープンしたアットホームなブックストア「COOK×BOOK:クック・バイ・ブック」。店主・上村武男さんが選りすぐって取りそろえた“食”に関する数々の書籍から、春の新生活シーズンにあわせて手に取りたい5冊をピックアップ!
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『ウー・ウェンの家庭料理 8つの基本』ウー・ウェン(文藝春秋)
一生役立つ! 8つの基本で料理をレベルアップ。
料理研究家ウー・ウェンさんが長年の経験からたどり着いた料理の基本をわかりやすく解説。シンプルだけど、身につけておくと役に立つ料理の知識が盛りだくさんの1冊。
「料理の基本について書いた本はたくさんあるのですが、王道すぎる“THE・レシピ本”ではなく、楽しみながら読めるものを選んでみました。筆者であるウー・ウェンさんはお名前からも分かる通り中国出身で、専門は中華料理。一方で家族の台所を預かる主婦としての顔も持っていて、この本は家庭料理全般の基本を8つのセオリーに落とし込んで教えてくれます。シンプルでわかりやすく、すぐに真似できそうなレシピもたくさん掲載されているので、ベーシックで飽きのこない料理を身に付けたい人におすすめです」
掲載されているレシピはどれも家族のために実際に作っているものばかり。パパッと手軽にできあがるのに驚くほどおいしく、しかも栄養たっぷり。2~3種類の食材でも、じゅうぶんご馳走が作れることを教えてくれる。
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『Tokyo Eatrip』野村友里(講談社)
東京がもっと楽しくなる、ディープな食案内。
原宿の一軒家レストラン「eatrip」を主宰し、フードディレクターとして活躍する野村友里さんが足繁く通う東京のごはんやさんをまとめたグルメガイド。浅草の昔懐かしいおでん屋さんから、麻布の街角にある洋食屋さん、表参道のビルに潜む日本茶専門店まで、東京の食&カルチャーのトレンドを感じられる1冊。
「東京のグルメガイドって本当にたくさん出版されているのですが、この本は日本語だけでなく英訳付きで、外国の方も楽しめるようになっているところがユニーク。ペーパーバックスタイルの装丁にもひねりを感じます。実は、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されてから、日英併記した和食のレシピ本がとても増えたんですが、食のガイドブックでこのスタイルはあまりなくて。内容も多様で、懐石料理のお店からラーメン屋さんまで、ジャンルをまたいで東京の食を楽しめます」
食+αで巡る東京街歩きMAPや日本の食文化を知るコラムなど、野村さんならではの食の視点で東京を切り取った読み物もこの本の魅力。これ1冊持って街を歩けば、東京の食を一段深く潜って楽しめるはず。
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『花と料理』平井かずみ, 渡辺有子, 大段まちこ(リトル・モア)
1年365日、毎日1枚の写真にテキストを添えて。
3人の女性クリエイターが、“部活”と称してはじめたスタイリングを1冊の本にまとめたビジュアルエッセイ集。それぞれの日が1枚の写真とさりげない文章で構成され、季節を感じる花と料理を伝えるこの本には、たおやかで風流な感性と美意識が散りばめられている。
「平井かずみさんがフラワースタイリスト、渡辺有子さんが料理家、大段まちこさんがフォトグラファー。女性クリエイター3人が集まって作った本は、それぞれの季節を織り込んだビジュアルが本当にきれいで、パラパラと眺めるだけでも楽しい。料理やフラワーリースといった手の込んだアイテムの日もあれば、食材や花だけのシンプルな日もある。文章も同様で、レシピがきっちり説明されている日もあれば、ほんの一言のつぶやきのような日も。自分の誕生日や記念日、思い出の日を思い浮かべながらページをめくってみるのもいいと思います」
暮らしに彩りを与えるスタイリングの数々は、どれもとても軽やか。毎日を愛おしく感じられるビジュアルを綴じ込めた1冊は、贈り物にもおすすめ。
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『わるい食べもの』千早茜(ホーム社)
冴え渡る毒っ気が心地いい、異色の食エッセイ。
『男ともだち』で高い評価を得るなど文芸界のスターダムを駆け上がる作家・千早茜さんの、“食”をテーマにしたWEB連載エッセイを書籍化。幼少期の記憶から創作の裏側、世の中への疑問までを鋭い目線で切り取り、じわじわファンを増やし続けている話題の作品。
「この本は、タイトルにひとめぼれした本。“わるい食べもの”という響きに惹かれて、思わず手にとってしまいました。内容は、プライベートな話を中心に、食べ物にまつわる執着と記憶を包み隠さず書き綴ったエッセイ。筆者は著作生活で家に引きこもっていることが多いそうなのですが、甘いもの好きで、スイーツを食べ歩きするとなると何軒も何軒も巡るという、食についてはちょっとぶっ飛んだところを持っている人。彼女が食べものを見つめる視線がちょっぴり”ワル”くて、とてもユニーク。彼女ならではの視点で描かれた、とても面白い1冊です」
ひと目みたら忘れられないユニークな表紙は、イラストレーター北澤平祐さんが手がけたもの。可愛らしさと毒々しさを兼ね備えたイラストは、まさに本書の内容にぴったり。ページ内には挿絵もたくさん収録されているので、こちらにもぜひ注目を。
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『香草・ハーブレシピ』ワタナベマキ(産業編集センター)
料理のレベルアップを狙いたいならこの1冊。
暮らしに馴染むレシピが人気を集める料理家・ワタナベマキさん。忙しくても、料理がちょっと苦手でも「作ってみたい!」と思わせてくれる。等身大のレシピを提案する彼女が題材として選んだのは、いっけん扱いづらそうに思える食材、香草とハーブ。
「ワタナベマキさんは、とてもたくさんの本を手がけている方で、その出版冊数は日本で5本の指に入るほど。基本的なレシピ本も何冊も出されている方なのですが、この本は“香草とハーブ”という観点でレシピをセレクトしているところが面白い。収録されているのはどれも真似しやすいレシピばかり。サラダに煮込み料理、揚げ物に麺とバラエティに富んでいて、春夏秋冬楽しめるレシピが満載です」
取り入れ方を知れば、普段の料理がぐっとおしゃれにおいしく。そんな香草とハーブの魅力が満載の1冊。中の写真もアートワークのようにおしゃれで色鮮やか。暮らしをぱっと華やがせてくれるレシピをマスターして、料理の腕をステップアップさせよう。
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<ABOUT COOK×BOOK>
「COOK×BOOK:クック・バイ・ブック」は、、本屋スペースとキッチンスペースが一体となったハイブリッドなスペース。自由が丘の閑静な住宅街に位置するアットホームな空間には、“食”がテーマの新刊書籍がずらり。料理家によるレシピ本はもちろん、栄養についての知識を深める本やエッセイ、小説、雑誌まで、“食”にまつわる多様な本が店主ならではのセレクトで並べられている。キッチンスペースはレンタル可能で、料理教室やパーティなど、幅広い用途で利用OK。今年2月にオープンしたばかり、食をキーワードに新しい本屋のあり方を模索するスポットに、ぜひ足を運んでみては?