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注目のブックストアにおすすめの書籍をセレクトしてもらう連載企画【BOOK STORE RECOMMEND】。今回は、「読書でさまざまな“愛”を体験するなら!」をテーマに5冊をピックアップ。
片思いの切なさを描いた恋愛小説から、家族愛がじんわり伝わるイラストエッセイ、一風変わった書簡体小説まで、個性豊かな5冊をセレクトしてくれたのは、お気に入りの本と一緒に“くつろげる”、リラックススタイルのブックストア「TSUTAYA BOOK APARTMENT(ツタヤ ブック アパートメント)」の店長、本多加奈さん。気になるラインアップを早速チェック。
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『愛がなんだ』角田光代(角川書店)
“好きになる”ってまさにこういうこと! 切ない片思いを追体験。
28歳の女性の、まっすぐな片思いを描いた小説『愛がなんだ』。直木賞作家でもある角田光代が描くのは、主人公の山田テルコ、通称テルちゃんの、一つ年下の田中守、通称マモちゃんに対するちょっと重めの片思い。いつでも恋に全力疾走のテルちゃんの姿からは、ただ甘いだけのラブストーリーとはひと味違う、生きる信念のようなものさえ感じられる。映画化も決定し、4月19日より全国公開予定。
「うまく言葉にできない切なさや苦しみ、ちょっとしたことで気持ちが浮き沈みするような気持ちの揺れ動きなど、片思いの感情がすべて詰まった作品。意中の彼に全力を注ぎ込む気持ちも理解できるし、それに対してそっけない対応をする男性側の心情も想像がつく。誰でも一回くらいは、ちょっと周りが見えなくなるような恋愛をしたことがあるのでは? だからこそ、昔の片思いを思い出すような描写がところどころにあって、自然とストーリーに引き込まれます。
素直に、まっすぐに人への気持ちを貫けることって本当に素晴らしい。けれど一方で、仕事が手につかなくなったり、恋愛以外のことが目に入らなくなったりという“恋は盲目”という面も垣間見えて、恋の威力ってある意味怖いなとも思ったり。テルちゃんの全力の片思いを通して、“恋という気持ちが持つ強力なパワー”を改めて感じ取ってみてください」
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『往復書簡 初恋と不倫』坂元裕二(リトル・モア)
ただのラブストーリーは読み飽きた!というガールに。
『カルテット』や『最高の離婚』の脚本家、坂元裕二が手がけた小説。悲しくて、そして美しく残酷な、心がざわめく2篇の恋愛模様を、メールや手紙など、二人の男女が綴るやりとりのみで構成。「不帰の初恋、海老名SA」と「カラシニコフ不倫海峡」という、対極のワードを用いた2タイトルで、それぞれ強く惹かれ合う男女の姿を描く。
「普段、読書が苦手という人にこそ、ぜひ手にとってもらいたい小説です。登場人物同士の手紙やメールのやり取りを覗き見るような感覚の文体は、最初こそ慣れないかもしれませんが、とても読みやすく、あっという間にその世界に引き込まれるはずです。
描かれているのは恋愛にまつわるストーリーですが、それだけにとどまらず、人との距離感についても考えさせられる奥深さもあります。人と交わると、不条理な目にも遭うし、困難もつきまとう。それでも、人は生きていかなければならないですよね。私が印象に残っているのは、“その人の前を通り過ぎるという暴力”という言葉なのですが、この他にも人生における難しさを綴った印象的な言葉がたくさん並びます。ちょっぴり難解だけど、クセになる。そんなな坂元裕二ワールドをぜひ堪能してみてください」
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『きみはぱぱがすき?』つむぱぱ(KADOKAWA)
子どもとの時間をいとおしむ、親の愛を感じて。
毎日仕事で忙しいパパと、日々成長していく娘のつむぎ。とても些細で、二度と戻らない、だからこそ愛おしい親子の時間をほっこりテイストのイラストで綴るエッセイ。子どもと一緒に過ごせる日数が想像以上に少ないことを体感した父親が、もっと子どもと遊ぼう、その成長を記録に残そうとインスタグラムで投稿していた漫画が話題となり、書き下ろしを加えて書籍化された1冊。
「親が子に抱く、まっすぐな愛情がたっぷり詰まったイラストエッセイ。つむぎちゃんが本当にかわいらしく描かれていて、それだけで心が浄化されるよう。子育てって大変そう、となんとなく思っている人は多いと思いますが、この本を読むと、それ以上に喜びもあるんだなということが伝わってきます。
パパから娘へのメッセージのページは、読めば思わずジーンとしてしまうはず。親から子への愛情、という意味合いで読むのもいいですが、自分の両親が我が子の成長をこんなふうに思っていてくれたのかも、と想像しながら読むのもおすすめです。親からもらった愛情に思いを馳せつつ、つむぎちゃんのほっこり感に癒されてください」
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『麦本三歩の好きなもの』住野よる(幻冬舎)
“何気ない日常の愛おしさ”を思い出してみよう。
デビュー作『君の膵臓をたべたい』がベストセラーとなった作家・住野よるが手がける最新作『麦本三歩の好きなもの』。大それた事件が起こるわけではなく、謎もファンタジーもない。だけど、どこか愛おしい。図書館勤務の20代女子、麦本三歩が過ごす日常を12本の短編小説によって描いた1冊。
「主人公である麦本三歩は、真面目だけどドジで抜けてて、身近にいそうな応援したくなる女の子。格好悪いところもあるけれど一生懸命で、ストーリーを読み進めて行くうちに、三歩の独特の世界観やキュートさに魅了されていることに気づくはずです。大きく盛り上がる場面があるわけではないけれど、筆者の言葉選びも楽しくて、読んでいるとついつい顔がほころんでしまいます。
嫌なことがあってもご飯を食べれば機嫌が直ったり、先輩たちに毎日叱られては落ち込んだりという三歩の姿はとてもリアルで、共感できるガールも多いはず。大きな事件が起こらなくても、日常っていろいろあります。それでも前向きに進んで行く三歩の秘めた強さも感じてほしいです」
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『ねことじいちゃん』ねこまき(KADOKAWA / メディアファクトリー)
ほっこり癒しの時間を求めるガールにはこの1冊。
ばあさんに先だたれ猫のタマと二人暮らしの大吉じいちゃん。1人+1匹のユニークな家族が繰り広げる毎日を、四季折々の彩りとともに描いたコミックエッセイ。ほのぼのした描写が、トゲトゲした日常を忘れさせて、心に束の間の解放をもたらしてくれる。
「タイトル通り、ネコとじいちゃんの日常を描いた1冊で、ゆるくてキュートなイラストに心の底から癒されるのですが、この本の魅力はそれだけじゃない! 死別してしまったばあちゃんと出会った頃の昔のエピソードを時代背景への理解も深まるような形で交えていたり、季節の料理のレシピのような知恵袋的な内容がちりばめられていたりと、ただほっこりするだけじゃなく、知識を得る面白さも満たしてくれます。
猫のタマがじいちゃんをしもべって呼んでいたり、面倒を見てやることにしたって考えていたり、上から目線なのも面白くって。猫を飼っている人には、うちの子も本当にこんなこと考えてそうと感じられるかもしれません。だけどそれは、じいちゃんとの間に信頼関係があるからこそ。気持ちの通い合った1人+1匹の、愛情あふれるゆるっとほっこりな日常に癒されてください」
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<ABOUT TSUTAYA BOOK APARTMENT>
「TSUTAYA BOOK APARTMENT」は、お気に入りの本と一緒に“くつろげる本屋”。店内の書籍や漫画は自由に閲覧できるほか、気に入ったものがあれば購入もOK。4Fはコワーキングスペース、5Fは靴を脱いで寝転がれるグランピングスペース、6Fは広々パウダールーム完備の女性専用フロアと、3つのテーマ別に本を楽しむ空間を提供する。
驚きなのは、24時間という営業時間。時間制で利用できるから、一晩中読書にふけってもいいし、サクッと1時間だけ訪れてもOK。広々としたパブリックスペースはもちろん、読書に没頭できるパーソナルな個室も用意され、思い思いのスタイル&リラックスした気持ちで読書を楽しめる。新宿駅東口徒歩1分という好アクセスもうれしい! 今度の週末は、読書の時間を堪能すべく、新宿まで足を運んでみよう!