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注目のブックストアにおすすめの書籍をセレクトしてもらう連載企画【BOOK STORE RECOMMEND】。今回は、春を感じる日がチラホラあれど、まだまだ寒くておこもりタイムが楽しいこの季節に、ゆっくり読みたい5冊の漫画をピックアップ!
おすすめの漫画5タイトルをセレクトしてくれたのは、原宿に新たに登場したカルチャー発信基地「ベースヤードトーキョー」の館長・西田さん。売れ筋の話題作から往年のレジェンド作品まで約1万冊の漫画を展開する“back yard” MANGA&SPACEと称した2F奥のスペースは、ドリンクを飲みながら漫画を試し読みできる、まさに漫画天国。新旧の名作がずらりと並ぶお店の取り扱いタイトルから、選りすぐりの作品をセレクト!
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『凪のお暇』コナリミサト
ハッとさせられるセリフ満載! アラサー女子の“人生リセット”物語。
マンガ大賞2019にもノミネートされ、4巻累計100万部のヒットを記録した『凪のお暇』。主人公は、いつも場の空気を読むのに必死で、「わかるー」が口癖の大島凪28歳。ある日、元カレの一言で過呼吸を起こし倒れたことがきっかけで仕事を辞め、自分を変えようと奮闘する凪の姿をコメディタッチで描く。
「この作品の一番の魅力が、登場人物キャラクターが個性豊かでそれぞれに問題や悩みを抱えているところ。自分から見ると困った人であっても、その人にはその人なりの事情があって、さまざまなことを考えている。そんな普段の生活で当たり前だけど見落としがちなことを、シンプルにストレートに伝えてくれる作品です。
大ヒットしている漫画ですが、特にVOGUE GIRL世代に読んでもらいたい理由は、思っていることや感じていることは素直に表現すべき、というメッセージを伝えてくれるところ。人からどう見られるかが気になりがちな時代ですが、凪をはじめとする登場人物たちを見ていると、そういう枠を外して感じたことや思ったことをそのまま声に出したり表現したりするほうが面白いんだろうなって思えてきます。ハッとさせられる名言も満載で、読んでいて気付かされることも多いと思います」
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『メタモルフォーゼの縁側』鶴谷香央理
年の差を超えた友情の裏にあるのは、人には秘密の趣味!?
「このマンガがすごい!2019」など、数々のアワードを獲得し話題沸騰中の漫画『メタモルフォーゼの縁側』。75歳の老婦人と書店員の女子高生、年の差58歳の2人が漫画を介して趣味友達となったことで、少しずつ変わっていく日常を穏やかに描く。
「この漫画がユニークなのは、2人を出会わせたのが、1冊のBL漫画だということ。老婦人・雪と女子高生・うららが2人でコミケに出かけたり、お気に入りの作家について盛り上がったり……。リアルな日常の中で交流を深めていく、ほのぼのとした人間ドラマを満喫できます。
題材こそBLやコミケなど奇抜に思えるけれど、この漫画はとても優しい物語。知らない人からしてみるとBLやコミケってとっつきにくそうに感じるかもしれませんが、この漫画を読むとそういったものへのハードルがきっと下がると思います。まだ知らないものに対して実際に出会ってみるのも素敵ですが、まずは漫画を通して出合ってみるという体験も面白いんじゃないかなと思います」
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『おもたせしました。』うめ(小沢高広/妹尾朝子)
読んでおいしい、鉄板グルメが盛りだくさん!
仕事柄、取引先や友人知人など訪問が多い毎日を過ごす主人公の寅子。彼女の生きがいは、訪問の際に何か必ず手土産を持って行くこと。ただし寅子が選ぶ手土産の条件は、“自分が食べたい”もの! 実在するお店の名物料理を寅子がテイクアウトし、そのおいしさを他人と共有するという“コミュニケーション”グルメ漫画。
「昔から人気のグルメ漫画ですが、ここ数年特にこのジャンルが盛り上がりを見せています。おすすめはいくつもあるのですが、この『おもたせしました。』もぜひ読んでほしい作品のひとつです。実際にお店を取材して本当においしかったアイテムだけを紹介している“グルメリスト”としても参考になるのですが、それらのグルメに絡めて有名な作家のエピソードが紹介されたり、そのグルメの歴史が紹介されたりと、ためになる情報もスマートに織り込まれている。実際には食べていないのに、この漫画を読むことでその食べ物との距離がぐっと縮まるような気持ちになれます。
気になるメニューが見つかったら実際に食べに出かけられるのもいい! グルメなお出かけプランを立ててみるのも楽しいと思います」
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『ママはテンパリスト』東村アキコ
子育てって大変だけど、でも楽しい!
漫画連載を多数かかえる東村アキコが、初めての育児にテンパりまくる毎日を綴ったエッセイ漫画。息子・ごっちゃんの、予想を裏切るリアクションの数々に踊らされる筆者の運命やいかに!? スリリングで、でも楽しい、育児の魅力を東村ワールド全開で伝える。
「多作にして多彩な作品をバリバリと世に送りだしている東村アキコさん。そんな彼女が母になり、その日常をエッセイ的に捉えて世に送り出したのがこの作品。VOGUE GIRL世代には子育てってまだ未知の領域かもしれませんが、いざその時が来た時にどんなことが起きるのか、漫画をとおして伝えてくれます。
子育ての苦労や試行錯誤についても描かれているのですが、根底に流れているのは東村さんらしい物事を面白がるポジティブなマインド。だから、読んでいて悲観的にならず、子育てに前向きなイメージを持てます。とはいってもギャグ漫画、畳み掛けるように笑いで攻め立ててくる内容には思わず笑ってしまうはずです!」
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『AKIRA』大友克洋
2019年の今、絶対読みたい漫画界のレジェンド作。
漫画界の大御所である大友克洋が1982年から1990年にかけて連載していた『AKIRA』。新型爆弾により崩壊した東京地区に住む主人公・金田が、事故をきっかけに超能力に目覚めた親友の鉄雄と共に抗争に巻き込まれ……。軍が極秘に封印していた最強の超能力者「アキラ」の封印を解き世界征服を試みる鉄雄の暴走を止めるため、金田は仲間たちと協力し戦うことになる。
「戦争により破壊され、その後復興して東京湾上に建設された“ネオ東京”を舞台に、翌年にオリンピック開催を控えるまでに復興を遂げたところから物語が始まります。一見ハードなSF漫画ですが、この作品は今絶対読むべき漫画。というのも、この作品の舞台は2019年、今年なんです。そして翌年にオリンピックを控えているという状況も一致していて、まるで今の日本を予言していたかのよう! 漫画で描かれたことと現実がクロスしていると考えると、そのストーリーもまた違った意味合いを持つように思えてきます。
そういうととても重い漫画のように思えますが、『AKIRA』の良さはとにかくカッコいいこと。本の装丁がとてもおしゃれなのもポイントで、平積みしているだけで様になるカッコ良さ。読んでよし、飾ってよしという素晴らしい漫画なんです。漫画業界では“大友以前・大友以降”という言葉があるくらい、多くの漫画家たちに影響を与えた大友克洋先生。彼の代表作である『AKIRA』、ぜひ2020年を迎える前に手に取ってみてほしいです」
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<ABOUT “back yard” MANGA&SPACE>
ファッションだけでなくカルチャーも発信する新たなトレンド基地として2018年10月に原宿・明治通り沿いにオープンした「ベースヤードトーキョー」。その2F奥にあるのが“back yard” MANGA&SPACE。壁一面を約1万冊の漫画が埋め尽くし、それらは「レジェンド」「クラシック」「現在進行形」というジャンルで区分されて50音順に並ぶ。棚から気になる漫画を手に取ってみることで、隣に並んだ漫画と思ってもみないタイトルと出会えるチャンスがあるのは、ユニークな陳列方法だからこそ。
店内にはドリンクスタンドも併設され、ゆっくりくつろぎながらじっくり漫画を読みふけってもOK。漫画をベースに人と人が繋がれるカルチャー空間として、今後の展開にも要注目!
SHOP INFO
住所:東京都渋谷区神宮前6-12-22 baseyard tokyo 2F
TEL:03-3486-5127
営業時間:月〜土/12:00~21:00 日/12:00〜20:00
ウェブサイト:www.baseyard.tokyo