-
書店やブックカフェなど“本にまつわるスポット”におすすめの書籍をセレクトしてもらう連載企画【BOOK STORE RECOMMEND】。年末年始のスペシャル版は、休暇中にサクッと読めるよう、3つのテーマでそれぞれ3冊をピックアップ。
今回、本のセレクトをお願いしたのは、生活のなかに“本の置き場所”を提案しようという思いのもと、本棚を売る「HummingBird Bookshelf」の店主、柳下恭平さん。2回目は、来年に向けて“モチベーションがUPする”3冊をセレクト。
-
『るきさん』
連載当時の1988年〜92年は、まさにバブル景気真っ直中。それなのに、彼女の暮らしは地味でマイペース。『るきさん』は、のんびりしていて、だけどどこかヘンテコな女性“るきさん”の日常を描いたマンガ作品。キャリアウーマンのえっちゃんや近所の自転車屋さんとの交流を通して描かれる毎日は、ゆるくて軽やかで、読めば読むほどクセになる。
「ストレスフルな環境にいてもひょうひょうと生きているるきさん。その友人で、ちょっとピリピリしながら暮らしているえっちゃん。この漫画には、2人の好対照なキャラクターが登場します。生活を超越した女の子と生活に疲れた女の子。こうなりたいなという理想をるきさんに重ねて描いてもいいし、今の自分と似ているえっちゃんに思いを馳せてもいいと思います。
るきさんには、“モチベーション”というものが存在していない。でもいつも楽しそう。そんな姿を見ていると、”なんで私、こんなに自分をモチベートしなくちゃと思っていたんだっけ”と思えてきます。日々頑張っていると、気負ってしまいがちですが、ふっと心が軽くなることでかえって、自分の中にあるモチベーションに気づけるんじゃないかなと思って、おすすめの本として選びました」
-
『週末、森で』
都会の暮らしを捨て、思い切って田舎の森の近くに引っ越してみた翻訳家の早川さん、出版社で経理ひとすじ14年の“仕事ができる女”マユミちゃん、旅行代理店で接客の仕事を始めて人間の嫌な面に疲れてしまったせっちゃん。30代半ばの独身女性、肩肘張らない女友達3人の、週末とそれにまつわる日々を描いた四コマ漫画。
「モチベーションをつくるのに絶対に欠かせないのが、非日常な空間に身を置くこと。生活ってどうしたって疲れるから、暮らしている空間とは違う場所に行くことで、新たなことへの意欲が湧いてくることって多いと思うんです。
森の近くで暮らす早川さんと、都会で暮らすマユミちゃんとせっちゃんです。この本も『るきさん』と同じで、好対照な女の子たちが出てきます。毎日忙しく働いていると、土日のどちらかは家事で終わってしまうことが多いですよね。でもだからこそ、もう片方の日はどこか日常と切り離した時間を過ごしてみてほしい。マユミちゃんとせっちゃんにとっては、早川さんが暮らす森へ週末足を運ぶことが、日常を離れて自分を見つめなおせる時間なんです。早川さんのような森に住む友達がいないなら、実家に帰るでもいいし、友達の家に行くのでもいい。この本を読むと、週末どこか普段と違う場所に足を運んでみようかな、という気持ちになれると思います」
-
『一汁一菜でよいという提案』
長年にわたって家庭料理とその在り方を研究してきた土井善晴氏が、現代にも応用できる日本古来の食のスタイル“一汁一菜”を通して、料理という経験の大切さや和食文化の継承、日本人の心に生きる美しい精神について考察した一冊。
「この本は、文字通り一汁一菜のレシピとそれにまつわるエッセイが載っている本。写真を見て“こんな料理があるんだ”と発見するのもいいし、レシピを実際に作ってみてもいいし、”すぐに作れるお味噌汁”みたいな短い文章で構成されるエッセイとして楽しんでもいい。小さめの写真と、短めのエッセイで構成される一冊は、パラパラとめくってページを眺めるだけで、なんとなく元気が出てきます。
本のいいところのひとつに、自分の年齢が変わった時に読み返せることがあります。たとえばサン=テグジュペリの『星の王子様』は、児童文学として出会ったという人が多いと思うんですが、大人になってから読むとまた違う形で心に沁みます。就職したばかりで苦しい時とか、家庭を持って悩んだ時とか、それぞれの人生のステージに響くものがある。この『一汁一菜でよいという提案』も同じで、もしかしたら、20代の女性にはこの本の良さがいまいちピンとこないかもしれない。でも、年齢を重ねて10年後くらいに改めて読むと、ぐっとくるものがある。そして、そんな本を20代のうちに一度手に取っていた、ということが10年後の感じ方に深みを与えてくれる。来年のモチベーションアップ、という短期的なことだけでなく、もっと先も見据えて、ぜひ手に取ってみてほしい1冊です」
-
<ABOUT HummingBird Bookshelf>
生活のなかに“本の置き場所”を提案しようという思いのもと、かもめブックス、梟書茶房、歌舞伎町ブックセンターなどで知られる校正の会社・鴎来堂が、新業態としてオープンした“本棚”を売るショップ。本棚そのものを柔軟に捉え、壁一面の大きな本棚からブックエンドやブックスタンドなど1冊の本のために使うものまで、その場を“本のある空間”にするアイテムを幅広く取り扱う。
テーマに基づいて書籍やマンガをセレクトし、本棚とセットにして提案するユニークな販売スタイルも魅力のひとつ。テーマから入ることで、自分では手に取らない新たな本に出会うチャンスが広がる!
SHOP INFO
住所:東京都中央区日本橋2−5−1 日本橋髙島屋S.C. 新館5階
TEL:03-5542-1916
営業時間:10:30~20:00
ウェブサイト:http://www.hummingbird-bookshelf.net/