第70回エミー賞までカウントダウン！ 賞レースの本命候補5作をクローズアップ。

多彩な才能を持つ今年の顔、ドナルド・グローヴァーに注目！
『アトランタ：略奪の季節』

脚本家、ラッパー、役者と多彩な才能を見せる若き天才、ドナルド・グローヴァー主演のコメディドラマが昨年に引き続きノミネート！　シリーズ1の勢いをそのままに、シリーズ2となる本作ではコメディ部門で過去最多となる16ノミネートを獲得。

アトランタを舞台に、自立ができず、元カノの家に居候する青年アーンが、いとこのちょっぴり有名な歌手のマネージャーになるところからシーズン1はスタート。黒人社会のあるあるや音楽業界における人種差別やドラッグなど、現実にはびこるさまざまな社会問題にディープに切り込みつつ、“一人前のオトコ”になろうとするアラサ―男子3人のゆるい日常が描かれる、シニカル・ブラックコメディーだ。

批評家から評価を集めているポイントは、現実社会を投影した辛辣な笑いと、主演ドナルド・グローヴァーの存在感。映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』に出演したことで広く知られることになったドナルド。「チャイルディッシュ・ガンビーノ」名義でラッパーとしても活躍し、本作には脚本家としてもジョイン。2017年、米タイム誌が選ぶ「世界で最も影響力のある100人」に選ばれるなど、アメリカでもっともホットな存在。

社会性のあるトピックに絡めたギリギリラインでのブラックジョークなど、見どころも満載。日本では9月10日（月）からシーズン1が放送されるほか、エミー賞 授賞式前日の9月17日（月・祝）にはシーズン2が放送されるので、見逃さないようチェックして。

“美人は笑いがとれない”を覆す!?
『マーベラス・ミセス・メイゼル』

1958年のニューヨーク。上流階級の主婦ミッジが、夫の浮気をきっかけにコメディエンヌを目指して奮起！　いわゆるお金持ちエリアであるアッパーウエストサイドを舞台に、“笑い”で人生を切り開いていく姿を描いた本作。

フレアスカートや柄物ワンピースといった50年代ファッションに外巻きヘア、レトロな街並み、インテリアなどなど、多くのガールがワクワクするアイテムが満載！

キュートな世界観はもちろん必見だけど、もっと注目してほしいのが、“男が稼ぎ、女が家を守るべき”、“離婚女性は恥さらし”などという当時のジェンダー観。男女差別なんてとんでもない！と思うけれど、ここまで振り切って描くなんてある意味スゴい。

夫に捨てられ、リッチな専業主婦からコメディエンヌに転身するミセス・メイゼルを好演するのは、女優レイチェル・ブロズナハン。“100倍返し”ドラマ『ハウス・オブ・カード　野望の階段』で、3シーズンに渡って娼婦役を演じたことでも有名だけど、オシャレで天真爛漫なミセス・メイゼルは彼女にとってこれ以上ないハマリ役。リッチなマダム、コメディエンヌとして舞台に立つ姿、シングルマザーとして奮闘する様子、どの場面を切り取ってもキュートでポジティブで、あっという間に彼女のことを大好きになってしまう！

作品賞・主演女優賞の有力候補と言われている本作。ノミネートされているのはシーズン1なのだけれど、すでにシーズン2が制作済み、さらにその公開前にシーズン3更新が決定するという人気っぷり。これは、賞レース総ナメも夢じゃなさそう!?

西部劇…だけど銃を持つのは女たち！
『ゴッドレス　-神が消えた町-』

“アメリカの西部劇”と聞けば、ウエスタンスタイルの男たちがスリリングな銃撃戦を繰り広げる映像をつい想像してしまいがち。だけど『ゴッドレス -神が消えた町-』は、女たちの、女たちによる西部劇。数年前に起こった鉱山事故により、大半の男性が死んでしまった町ラ・ベルを舞台に、残された女性たちが町を守るため、銃片手に立ち上がる。

女性たちの敵は、鉱山事故により男たちの命を奪った鉱山会社、そして、ラ・ベルの住民を皆殺しにしようと迫る無法者集団の残忍なリーダー、フランク・グリフィン。グリフィンを裏切り、金を奪ってラ・ベルに逃走してきたロイと共に、牧場主アリスや夫を事故で亡くしたメアリーたちが力を合わせる。

ロイとアリスのラブロマンス、アリスの壮絶な過去、当時はタブーとされていたメアリーの性嗜好、保安官ビルの男気、極悪人グリフィンの意外な一面。各キャラクターの人間性をベースにぐいぐいと視聴者を魅了していく無駄のないストーリー展開は、感動もの！

牧場主のアリスを演じるのは、『ダウントン・アビー』の長女役で有名なミシェル・ザッカリー。その他、『ウォーキング・デッド』のデニース役で有名なメリット・ウェーバーに、『ニュースルーム』のジェフ・ダニエルズなど、海外ドラマ界の実力派俳優たちが勢ぞろい。エミー賞では、リミテッドシリーズ部門の作品賞・主演女優賞の有力候補と言われているけど、物語のキャラクターに見事にはまる圧巻の俳優陣を見ると、キャスティング賞もかなりの有力候補と言える！

“全7話でストーリーを完璧に描く“という監督の言葉どおり、構成、キャラクター設計、エンディングまでまさに完璧。西部劇や銃撃戦に苦手意識を持っているガールにもおすすめ！

反旗を翻す侍女たちを待つ未来は!?
『ハンドメイズ・テイル／侍女の物語』シーズン2

マーガレット・アトウッド原作の小説を映像化した衝撃作。シーズン1が昨年のエミー賞を総なめにしたことも記憶に新しいけれど、シーズン2も期待を裏切らず多くの部門でノミネート。

環境破壊により、女性が子どもを産めなくなった時代に、妊娠可能な数少ない女性たちが収容され、権力者の子孫を残すためだけに侍女として彼らのもとに送られる……。センセーショナルなストーリーで大きな話題を呼んでいる本作。おとなしく政府のいいなりになってきた女性たちが反旗を翻すところで幕を閉じたシーズン1に続いて、シーズン2の展開はいかに？

あまりにも衝撃的なストーリーの中で、女性たちのみなぎるパワーをひしひしと感じさせる展開だったシーズン1の勢いは、シーズン2でもそのまま！　むしろシーズンを重ねるごとに面白さを増す勢いの良さ！

耐えかねるほどの抑圧に対して、じっと堪える侍女たち。そこにあるのは、バイオレンスや差別におびえるのではなく、現実を淡々と受け止め、それに対峙していく姿。

“女性の権利“など今の時代の社会問題とリンクしながら展開するこのドラマは、エンタメ業界のみならず、世界中で大きな波紋を呼んでいる。ドラマの話だと思いつつも、自分たちの未来へなんとなく繋がっているような言い知れぬ怖さを感じさせるのもこのドラマの特徴。今を生きる私たちこそ、見るべきドラマなのだろう。

日本でのシーズン2の配信は、8月29日（水）からHuluにて。エミー賞授賞式の前に話題の最新シーズンをチェック！

エミー賞の常連がブランクを経て賞レースにカムバック！
『ゲーム・オブ・スローンズ 第七章：氷と炎の歌』

海外ドラマ好きなら一度は見たことor耳にしたことがあるに違いないスペクタクル超大作“ゲーム・オブ・スローンズ（通称：GoT）”。主役をあえて定めず、100人を超すキャスト陣が7か国以上のロケ地で撮影、一話あたりの製作費は約1,000万ドルと、これまでの海外ドラマの常識を多く覆してきた本シリーズ。ウェスタロスという架空の大陸を舞台に、玉座を手に入れるため複数の名家による壮絶な覇権争いを壮大なスケールで描く。

“GoT祭り”になったエミー賞は数知れずの大ヒット作ながらも、昨年は放送期間がかぶらずエミー賞にエントリーされず。でも今年は、過去最高級の面白さと評されるシーズン7がエミー賞最多の22ノミネーションを獲得！　GoTの勢いは留まるところを知らない！

男女関係のもつれあり、容赦ない裏切りや殺し合いあり、ファンタジー要素あり、アクションと大河とファンタジーがぶつかりあった、なんとも贅沢なこのドラマ。

架空の時代、架空の大陸を舞台に、誰もが目指すのは“敵に勝って、権力を手に入れる”こと。この世界では、“物事の善悪”がなく、だまし討ち、身内殺しもいとわないし、そのことが犯罪でもない。いわゆる“ヒーローと悪者”という関係は成立せず、そこにあるのは“強者か弱者”の区別だけなのだ。

美しい映像と共に、激しく複雑に展開していく覇権争い。予想外なことが起こりすぎて、興奮しっぱなしのシーズン7は、観終わった後しばらく放心状態になるファンも多数。来年放送されるシーズン8で、大ヒットのうちに幕を閉じることが決定している本作。ファイナルシーズンを目前にシーズン7ではエミー賞でどれほど花を咲かせるのかに注目が集まっている。まだまだエミー賞授賞式まで時間はあるので、寝不足覚悟で「GoT」を一気見してみて。