スタイリストやデザイナー、ブランドディレクターなど、ファッション業界で活躍するおしゃれのプロ中のプロに、自分のワードローブに欠かせない定番ベスト10をASK! さまざまなおしゃれ遍歴を経てマイスタイルに辿り着いた達人たちの定番アイテムから、自分らしいおしゃれを完成させるためのヒントを探ります。Vol.10は「デプト」オーナー兼バイヤー/「マザー」、「ユートピア」デザイナーのeriさんが登場!
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古着のロングジャケット
’80年代以降、東京を代表する古着屋として人気を博した「デプト」。創業者の永井誠治氏を父にもち、2011年にクローズした「デプト」を2015年にリオープンさせたeriさん。「デプト」のオーナー/バイヤー、そして「マザー」「ユートピア」のデザイナーを務める彼女の“MYスタイル”は、「基本的に古着ばかり。そこに自分でデザインしたアクセサリーやハイエンドなブランドのシューズを合わせるスタイルが多いです」。なかでも、このジャケットのようにオリエンタルなアイテムは欠かせないのだとか。「モーブカラーの生地に細やかな絹糸の刺繍が映える、美しい1着。ブラックデニムに合わせてカジュアルに着たり、前を留めてドレスアップしたりといろいろなシーンで活躍してくれます。こういった存在感のあるオリエンタルなアイテムは自分の定番ですが、時代も国籍も超えたスタイリングを心がけています」
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古着のカーディガン
目の詰まったニットにぎっしりとスパンコールが手で刺繍されたカーディガンは、eriさんがお母様から譲り受けたもの。「父と母も若い頃は古着を買い付けする旅に出ていました。このカーディガンは母から“アメリカ人の上品なおばあさまのコレクションから買わせてもらったものなのよ”と譲り受けたもの。同色で素材違いのスカートとのセットアップなのですが、カーディガンの登場頻度が高いのは圧倒的にこの刺繍の美しさゆえ。もはやアクセサリーです。人生とはおもしろいもので、今は私が買い付けの旅に出て、母が出会ったおばあさまのように素敵な方たちからお洋服を譲って頂くという仕事をしています。こうやって、人の手を介して時代を超えた服たちをお客様に届けるこの仕事に、ファッションとはまた違った物語性を感じています。……その服たちが誰かの“定番”になってくれたらうれしいなあ!」
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「チコ」×「デプト」のリメイクカシミアニット
古着のカシミアニットをリメイクしたプルオーバーは、eriさんが18歳の時に始めた1点物のブランド「チコ」と「デプト」のダブルネーム。「古着のカシミアニットを解体してまた1着に構築するのが楽しくて、たくさん作ったうちのひとつを自分で購入。古着屋の娘ということもあって、幼い頃から古着に手を加えて着るのが普通でしたね。チコもヴィンテージのパーツや生地を使って服を作っていたので、今もその延長線上に立っているのだと思います。色、厚み、大きさなど、さまざまな個性をひとつに組み上げるのは一筋縄ではいかない難しい作業ですが、そうやって出来上がったものはとてもパワフル。ひとつ着こなしに加えると、それだけで“自分のスタイル”が決まるような力強さがあります。こんな、誰とも違って、流行りでもなくて、着やすくもないんだけれど自分は大好きで、着ると自信がもてるような服を私は“おもしろい服”と呼んでいます。こういう服をどんどん自分のスタンダード(味方)にして生きていきたいです」
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「マザー」のベルベットパンツ
“古着に関しては年代もテイストも気にせず雑食”と、存在感たっぷりの古着を自在にミックスしてノン・ルールで無二なスタイリングに仕上げるeriさん。そんな彼女のお気に入りボトムは、自分の好みを凝縮したというこのパンツ。「もう何年も前になりますが、自分が手掛けるマザーで作ったベルベットストレッチスキニーパンツはまさに自分の定番です。冬場なんかは気をつけないと2日に一度くらい履いてしまうほど(笑)。意外にデスクワークよりも古着の仕分けや移動など動き回る仕事が多いので、ボトムは動きやすさを重視して選ぶことが多いのですが、私はカジュアルになりすぎないようにするのが好み。レーヨンの光沢が上品で美しいうえ、しっかりストレッチが効いていて動きやすいこのパンツは本当に他にない、換えが効かないマストアイテムです。保存用に2本所持しているほど!」
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古着のワンピース
ワンピースやドレスがとにかく大好きというeriさんの“ベストofベスト”は、’70年代のフラワー柄マキシワンピ。「古着のデイドレスからヴィンテージのパーティドレスまであらゆるタイプに手を出してきたなかでも、フラワープリントものは自分にとって永遠のスタンダード。若い頃にしてきた少女のような着こなしはそろそろ似合わなくなってきていますが、甘いフラワープリントでもマキシ丈のワンピースはいまもよく手に取るアイテムです。この’70年代の小花柄ワンピースはぎりぎり引きずるか引きずらないかの丈。ヒールを履くのもいいですが、ぺたんこのサンダルで少しカジュアルダウンさせるのが気分。夏のお呼ばれの席なんかに着ていきたいですね」
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「ユートピア」のボックスバッグ
eriさんが“MY定番“に挙げるバッグは、アンティークのデザインを取り入れつつさらに機能面をアップデートしたオリジナルのバッグ。「元々アンティークのボックス型バッグが大好きで、好きが高じて自分のアクセサリーブランド、ユートピアで作ったものです。吸い込まれるようなマーブル模様は職人さんが板材を1枚ずつハンドメイドで仕上げたもの。ひとつとして同じ模様がないのが魅力です。アール・ヌーヴォーやアール・デコなど、’20〜30年代のスタイルが大好きでよくファッションにも取り入れるのですが、このバッグなら柔らかな素材やゆったりしたシルエットにぴりっとアクセントを効かせてくれます。カメラが趣味でいつもフィルムカメラを持ち歩いている私には、衝撃に強いのもうれしいところ。収納力も高く、ルックスと使いやすさを備えた優秀なバッグです」
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「ドクターマーチン」のブーツ
使い込まれていい“味”が出た「ドクターマーチン」の8ホールブーツは、eriさんが中学生の時から愛用しているものだそう。「14歳の春に父から買ってもらったマーチンはいまだによく履く1足で、まさに自分のスタンダード。もう、くたくたのくたくたに履きこんでいるので、ボーイッシュなスタイルの仕上げやきれいめなスタイルの外しアイテムとして、アクセサリーに近い感覚で履いています。右足についている白いリボンは、10代の頃に旅したフランスの蚤の市で手に入れたもの。古いレースを売っているおばさんが“はい”とくれたんです。15㎝ほどの刺繍入りのリボンで、もらったのはいいもの使い方に困り、その時に履いていたこのブーツにその場でくくったのがきっかけ。外したところで使い道が思い浮かばず、ずっとそのままです(笑)。たまに洗ってリボンが白くなると心もすっきりします」
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フィルムカメラ
バッグのところでも少し話が出たように、eriさんの趣味はフィルムカメラで撮影すること。たくさん持っているカメラのなかでも、特に思い入れがあるのは「フジフイルム」の「ナチュラ」。「軽くてどこへでも持ち運べるという利点もありますが、何より写りが素晴らしい。このカメラにしかない滲みとニュアンスがあるんですよね。残念なことに生産中止になってしまったのですが、愛するがゆえに5台ほどストックをしています。小学生の頃から始めた“カメラ遊び“が未だに続いているような感覚ですが、ものを見る力やバランスの取り方、小さな美を見逃さないことなど、写真を撮ることにさまざまなことを教えてもらったと思いますし、それが今の仕事に多いに生かされてると常々感じています。継続は力なり…!」
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「イソップ」のコリアンダー ボディクレンザー
甘い香りよりもウッディやスパイシーなど、ユニセックスなアロマが好きというeriさんが数年前から愛用しているのが「イソップ」の「コリアンダー ボディクレンザー」。「数年前に出合ってから、毎日(本当に毎日!)この香りをかぐ度に幸せな気持ちになります。それこそボディソープや洗濯洗剤、香水、生活環境など、日々の生活にまつわる香りのすべてが層のようになって“その人の香り”を作っていると思うんです。どんなに芳しい香水を使っていても、安っぽい柔軟剤を使っていれば台無しになるというのが私の考え。日々の香りは、“自分がどうなりたいか”という着地点を常に意識しながら慎重に選んでいます」
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リングなどのアクセサリー類
eriさんの着こなしに欠かせないのが、リングやネックレス、ブレスレットといったアクセサリー類。今回は長く愛用しているリングを披露して頂きました。「なかでも、左手中指の関節につけているリングは愛用歴の長いアイテム。高校生の時からずっと同じ場所につけているので、そこだけ日焼けせずに白い線が入っています。最近はずいぶんつけている人が増えたファランジリングですが、昔はよく“何でそんなところにしているの?”、“落ちちゃったりしないの?”などとよく質問を受けたものでした。つけ始めて15年以上経過した今、このリングはもはや身体の一部のような……。私にとってある意味スタンダードを超えた存在かもしれません」