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FASHION

金曜の夜はaggiiiiiii散歩 第25回:「ジェームズ・タレルの作品に泊まる in 新潟・十日町」

先日、現代美術家のジェームズ・タレルが設計した「光の館」を目的に新潟の十日町へ行ってきました。これは地元の伝統的な日本家屋をモデルにしてつくられた芸術作品であると同時に、宿泊もできるというユニークな施設。ボタンを押すと和室の屋根がスライドし、四角くぽっかりと切り取られた天井の穴から空の色の移り変わりを眺めることができるのです。同様のコンセプトで設計された氏の作品は、金沢や直島の美術館でも体験したことがありましたが、もともと古民家好き&日本家屋好きの自分としてはここを目指さぬ理由がない!

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ひととおりの説明を終えると管理人の方も帰られてしまい、人里離れた森の中、宿泊者だけで作品と向き合う贅沢な時間がはじまります。たった一晩とはいえ、とても大事なものを預かってしまったのだというおごそかな気分。けれども、これからやってくる長~い夜がたのしみでしかたない。大きく自然光を取り入れた開放的な部屋の作りも手伝って、屋根を開けていると夕方でもまぶしいくらいの明るさなのですが、よく見ると施設の照明はごくごく控えめに抑えられています。これにはタレルが谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』を読んだことが大きく影響しているのだとか。この随筆で谷崎は、かつて日本の家にひそんでいた暗がりの素晴らしさについて独自の考察を展開しており、とくに彼のトイレに対する異様なまでの執着と観察眼はおかしみさえ感じさせます。んでね、光の館はそのとおり、古き日本の暗がりの神秘を継承するすみずみまで美しい芸術作品であるのですが、トイレにウォッシュレットがあるのを発見して、そこだけすごい現実に引き戻された感がありました(笑)。谷崎が存命なら、このウォッシュレットを見てなんて言うのだろうか。

さて、屋根の開く部屋では、日の入りと日の出の時刻にあわせて2回、各1時間の光のプログラムがあらかじめ用意されています。畳の上にゴロンと寝そべりながらぼんやり空を眺めていると、こんな風に寝転んでのんびり空を見るのはいつぶりだろう……そうだ高2のキャンプ以来だ……あんときはあの子やあの子と草の上でこんなふうに寝っ転がって星を見てたっけ……でもそれはなんでだったっけ……なんて思いっきり郷愁モードになり、そうしているうちにだんだん空も濃い紺色へ変わっていきます。終わったあとは、なんだか夢を見ていたような(寝てないけど)、ふんわりとした気分に包まれていました。

そしてもうひとつ宿泊客ならではのお楽しみは、またまったく異なる光の工夫が凝らされたお風呂! 扉をあけてすぐにハッとなるわたし。「ピ、ピンク・フロイドやんか……!」 詳しくは控えますが、この空間をひとりでゆうゆう独占できるなんて贅沢すぎる。ほんとうに楽しくて、朝のプログラムのことまで書くスペースがなくなってしまいましたが、7月には当地で大規模な芸術祭もはじまることですし、興味を持たれた方はぜひ行ってみることをおすすめします!

■光の館 http://hikarinoyakata.com/

■越後妻有 大地芸術祭の里 http://www.echigo-tsumari.jp/

 

Illustration : aggiiiiiii
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aggiiiiiii(アギー)
兵庫県生まれ、東京在住。2007年よりオルタナティブカルチャージン『KAZAK』をはじめ、2013年にはソフィア・コッポラ監督『ブリングリング』のオフィシャルファンジンも手がけた。とりあえずなんでもDIYでやろうとする。旅行が好き。www.kazakmagazine.blogspot.jp

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