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金曜の夜はaggiiiiiii散歩 第21回:「果てしのない本の話の話」

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編集者であり、文筆者で知られる岡本仁さんの『果てしのない本の話』を読んだ。今はもう無くなってしまった雑誌の連載をまとめたもので、「(もともとは)書評ページになる予定だったのにまったくそうならなかった」とあとがきに書かれてある。よかった! なぜってわたしは、この連載よりもすてきな本の紹介の仕方を知らないもの。

世界中のいろいろな場所(おもにアメリカ西海岸)を旅する岡本さんの頭の中に、偶然、あるいは必然的に思いだされる、かつて読んだ本。買おうか迷った本。誰かにもらった本。探してやっと手に入れた本。そういった本たちが、訪れる地のエピソードやそこで見聞きするものごととともに、新しいものも古いものもないまぜになって、あの抑制のきいた心地よい文章で紹介される。雑誌編集者としての長いキャリアを持ち、さまざまな芸術や文化に造詣の深い著者であるから、一冊の本の話をしていると思えばそれは自然とほかの一冊につながり、さらにその一冊が次の一冊を連れてくる。全40回の連載の間じゅう途切れることなく続く本の話は、気のきいたしりとりのようで、やがてわたしはこの書籍につけられた美しいタイトルの意味を理解する。

なによりもすてきだと感じたのは、たしかな目利きとして多方面から慕われている「ぼくらの伯父さん」から、じきじきに旅の話を聞いているような豊かな気分になれるところ。かれによって語られる、知らない異国のことや、知らない芸術家の名前、知らない時代について、わたしたちはこの本を読みながらあれこれたのしく想像をめぐらせることができるのだ。

物理的な散歩をしながら、かれは、わたしたちは、頭の中も散歩するのだと思った。世界は広く、頭の中はたいそう深いのだと思った。だからわたしもまだまだいろんなところに行きたいし、いろんなことを知りたいぞ。というようなことを考えていたら、なんでかいつのまにか泣けてきて、いや、さすがにこれは涙を流すような本ではないはずだとあわてて目元をぬぐう。はは、春だねい。

◾️『果てしのない本の話』岡本 仁 著(本の雑誌社)
http://www.webdoku.jp/kanko/page/4860112652.html

 

Illustration : aggiiiiiii

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aggiiiiiii(アギー)

兵庫県生まれ、東京在住。2007年よりオルタナティブカルチャージン『KAZAK』をはじめ、2013年にはソフィア・コッポラ監督『ブリングリング』のオフィシャルファンジンも手がけた。とりあえずなんでもDIYでやろうとする。旅行が好き。www.kazakmagazine.blogspot.jp

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