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FASHION

金曜の夜はaggiiiiiii散歩 第11回:「大人向けのコミック、グラフィックノべルを読む」

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ソーラ・バーチとスカーレット・ヨハンソンがダブルで主役を演じる『ゴーストワールド』(2001)は、わたしが青春をささげる大好きな映画です。キャッチコピーは「ダメに生きる」。高校を卒業してもやりたいことが見つからず、どうにもこうにも生きにくさを抱えて地元でくすぶっているイーニド(バーチ)と、性格は悪いけど現実的でしっかり者のレベッカ(ヨハンソン)。悪ガキ同士で大親友だった彼女たちだけれど、イーニドのあまりのうだつのあがらなさに、次第に二人の関係に溝ができてきて……というのがその大まかなあらすじ。二人の主人公はまだ十代ですが、わたしはむしろ大人になって自分の無能ぶりに気がついたときに、イーニドを悩ませていた出口のないどんづまり感を手に取るように実感しましたね……。ま、それでもライフ・ゴーズ・オンなわけです!

原作は映画版の脚本も手がけたアメリカのオルタナティブ・コミック作家、ダニエル・クロウズのグラフィックノべル。こちらがまた素晴らしくって。映画ではざくざくドライに描かれていたレベッカの方がじつは主体性に欠けていて、イーニドにどっぷり依存していることがわかったり、もやっとした謎の残る例のラストシーンに関してもより深くつっこんだ描写がなされています。原作は好きだけど映画はなあ、とかその逆のパターンはよくあるけれど、この作品はどちらも本当に好き。映画の方がよりポップで、胸がきゅうとなる度合いは原作のほうが強いかもしれません。

で、その『ゴーストワールド』が好きな人にもおすすめという紹介に惹かれて最近購入したのが、この『Earthling』(2014)です。

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作者はドイツ人でベルリン在住のアイシャ・フランツ。美大出身のイラストレーターで、グラフィックノベル作家としてはこれがデビュー作になるそう。『Earthling』というのは地球人とか俗物といった意味ですが、ドイツ語の原題では『Alien』だったのが英訳される際にこの言葉になっています。スピルバーグの『E.T.』が大好きというフランツが描くのは、同じ家で暮らしているのに孤独で気持ちがバラバラな母と二人の姉妹の物語。妹が野原で謎の生物に出会うところから始まるストーリーは、不穏な空気をはらみながら、しかしごく淡々と進行していきます。三人はそれぞれ夢かうつつかわからないSF的トリップを体験しますが、息のつまるような退屈な毎日にその体験がおよぼす影響とは……? 全編を通して流れるメランコリックなムードと不思議な読後感は、ぜひ映像でも観てみたいという気持ちになりました。だれかおしゃれ監督にぜひ映画化してほしい!

■『EARTHLING』https://www.drawnandquarterly.com/earthling

 

Illustration : aggiiiiiii
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aggiiiiiii(アギー)
兵庫県生まれ、東京在住。2007年よりオルタナティブカルチャージン『KAZAK』をはじめ、2013年にはソフィア・コッポラ監督『ブリングリング』のオフィシャルファンジンも手がけた。とりあえずなんでもDIYでやろうとする。旅行が好き。www.kazakmagazine.blogspot.jp

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