7月のGIRL OF THE MONTHに初登場。大人の魅力がたっぷり詰まった憧れの“お姉さんスタイル”を披露してくれた田中みな実に改めてロングインタビューを敢行。歳を重ねるごとに輝きと自由を手に入れてきた彼女が、大切にしていることとは?
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■仕事という揺るぎない柱をもつこと。
大学卒業後、TBSに入社。局アナとして華やかなキャリアをスタートするやいなや、歯に絹を着せぬキャラでバラエティや情報番組に引っ張りだこ。意外なカタチで注目を集めていたあの頃をこう振り返る。
「嫌いな女子アナ1位」「ぶりっ子」というイメージが“田中みな実”を知っていただくきっかけになったと思っているので、今も当時も、その事実を悲観することはありません。決して褒められたことではないけど、その頃担当していた「サンデージャポン」という番組の性質上、スタッフも共演者の皆さんも、それを面白がって、笑ってくれたから、随分救われました。“あんなこと”でも、自分なりに一生懸命やっていたんですよね。周りになんと言われようが、注目されないよりはされていた方が良いと、どこか割り切っていたように思います。今もそう。好きでも嫌いでもいいんです。「どうでもいい存在」が一番いや。常に気になる存在であり続けるためにはどうしたらいいか、それはいつも頭の片隅にあることかもしれません。
安定感のある司会進行をこなす先輩アナウンサーたちの背中を追いかけながら、夢中になって働いたいう20代。好きな仕事をもっとたくさんするために、30代を目前にした大きな決断。
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20代後半は自身のキャリアについてあれこれ悩む時期ですよね。今のまま、この仕事を続けていて良いのだろうか。同年代の子たちがずっと生き生き仕事をしているようにみえたり、転職をすれば上手くいくのかもしれないと悩んでみたり。そうこうしているうちに、今いる場所が自分の居場所ではないような気さえしてしまう。「もっとできることがあるんじゃないか」と現状に不満を抱くこともあるかもしれません。特に女性は結婚や出産で一時的にでも職場から離れざるを得ない局面があって、一層焦ってしまうのかもね。身体的にも無理がきくうちに次のステップへ進まなきゃ!って。私が退社を決意したのは27歳のとき。やりたいことができるタイミングを待つばかりで良いのだろうかと、30歳という年齢に近づき“焦った”のだと思います。「この局だけでなく、外に出れば必ずやれることが増えるはず。民放5局に可能性が広がるわけだから…」という単純な発想もあったと思います。お芝居や雑誌の仕事がしたいなどという野心は微塵もなく、アナウンサーとして、もっとたくさんのやりがいを感じたいという願望実現のためでした。
大企業でのキャリアよりも、外に出てさらにチャレンジすることを選んだ彼女。独立など、さまざまな経験をするなかで身についたのは、固執する必要がないものをさらっと手放すことだとも教えてくれた。
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■こだわりを捨てることで、よりしなやかに。
20代は余裕なんてもてないし、そんなもの、もたなくていいと思う。あれもこれもやってみたい。でも実力が伴わないことにヤキモキするのが常。30代は、あらゆることへの“折り合い”がついてくるというか、良い意味でも悪い意味でも“諦める”ことを知るときなのかも。このフィールドに固執してもそこでは求められてない。ならば求めてもらえる場所で勝負をしてみようか、と自身を客観的に捉え、整理がつくようになってくる。ドラマや雑誌など、予期していなかった分野でお声がけいただけるようになったのは、手放す勇気、踏み出す根性があったからなのかなと思っています。
仕事だけでなく、30代に近づくにつれてメイクやファッションに対しても考えが柔軟になり、もっと楽しめるようになったとも話す。
「私はこう!」という強いこだわり、自我の塊だった20代半ばの私なら、今回のVOGUE GIRLの撮影には臨めませんでした。だって、斬新なこのヴィジュアル、きっと世の中の田中みな実のイメージとはかけ離れているじゃない(笑)??加えて、証明写真の機械との共演って! 独特な世界観に飛び込むこと、のまれることを恐れ、挑戦すらしなかっただろうと思います。
髪型ひとつとっても私にとってはかなりの冒険。初対面のヘアさんに「前髪上げるのイヤですか」と聞かれ、一瞬躊躇したものの「おまかせします!」と100%委ねてみることにしました。おでこを出すヘアスタイルは本当は得意じゃない。でもそれ以上に、新しい自分に出合えるのを期待して気持ちが高揚したのです。
10年前、5年前、或いは1年前の自分の写真を見て、「私こんなメイクしてたっけ」って恥ずかしくなることありません? その時はそれがベストで、ただならぬこだわりがあるのよね。30代になるに連れ、あらゆる意見、考え方に触れ、“他人がいいと思う自分”に興味がわいてくるのです。そしたら、勝手に狭めていた可能性がぐんぐん広がって、メイクやファッション、仕事そのものが何倍もワクワクするようになりました。
自分に飽きたら終わり。飽きないように、他者の意見も受け容れ、挑戦してみるのはとても大切なことだと感じています。
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試行錯誤をしてたどり着いた今のスタンスや美意識。それでは、今の彼女にとって「美しい」と感じる人とは?
たわやかな女性。発するコトバや質感が柔らかく、適度にのんびりしていて、いざという時はバシッと頼りになる、そんな女性。一緒にいて心地よいと思える人になりたいです。
同時に、30代は「品」を大切にしなければならないと節々で感じます。20代はきゃっきゃと騒ぐ様子すらも愛らしい。学生さんが電車で脚を広げて座っていても「あらあら」と見過ごしてもらえるでしょう。ところがそれが30~40代のOLさんだったらどうかしら? 不意の姿勢や振る舞いがガサツだと人間性そのものが疑われかねない。そして、悲しいことに指摘すらされなくなってゆくのです。若いころは「脚は閉じる!」「笑うときは口に手を当てる!」ってあーだこーだ助言をしてくれる存在が身近にいたけど、もうこれからは自分のことは自分で律するしかないんだなって。
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■褒め言葉や親切を力に変える素直さ。
海外暮らしが長く、その影響もあり思ったことはストレートに言葉にするし、褒め言葉にだって、謙遜することなく素直に喜ぶ。人はそれを「ぶりっ子」と笑うかもしれないが、このごく自然体な感覚が、周囲を魅了する彼女の個性だ。
幼少期を海外で過ごしたこともあり、感情表現はわりにストレート。かっこいいと思えば「かっこいい!素敵!」って伝えたくなるし、美味しいものは「美味しいね」って言葉にしたくなる。プラスのことを積極的に言葉にする女の子は日本人に少ない気がする。甘えること自体、上手にできないという人も多いのでは?異性に「持つよ?」と手を差し伸べられたら、「ありがとう、いいの?助かる~!」って、素直に甘えちゃうとかね。そんなことでいいと思うんです。とにかく好意には甘える。それで「あざとい」「ぶりっ子」なんて言われても、私はお構いなし~。変なところで意地を張ったり、無理をする必要はないと感じるから。今は、メンズが柔和で、柔和すぎて「やるよ」って口では言いながら責任をもてない人が多すぎる(笑)どうせ「大丈夫」って突っぱねられるだろうけど、一応言っておくか…みたいなねっ。
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甘えるところはありがたく甘えるし、褒められたら嬉しくなってそこをもっと伸ばそうという前向きなマインド。美容に関しても同様で、はたから見るとストイックにルーティーンをこなしてそうだが、あくまで美容は楽しみでありご褒美だと話す。
ストイックなつもりはないんです。ルールもありません。決め事にしてしまうと「帰ったらあれをやらなきゃこれをやらなきゃ」って、躍起になって続かないもの。モチベーションは??とよく訊かれますが、自分でもよく分かりません(笑)。「眠い!」っていう日は睡眠を優先したいからケアは最小限だし。スキンケアは、いつだって“楽しみな習慣”であるのが理想的。「今日はどの美容液を投入しようかしら~」ってルンルンしていたい。あと、褒めらることは必ず美の原動力になると信じています。「眉のカタチ、ほんっと綺麗だよね」って褒められたら「あら、私って眉毛がチャームポイントなのかしら」と、なんとなく眉に意識がいくようになるじゃない?眉カラーをしてみようか、眉のお手入れサロンに行ってみようかと、褒められたパーツにそそぐ愛情がどんどん増していくと思う。眉に自信が持てれば、今度は目もとのメイクにも俄然気合いが入ったりして。愛でたいパーツが拡大してゆく。“コンプレックスをつぶしていく”という発想より、むしろ良いところをもっともっと伸ばしていくほうが、気持ち的にもハッピーですもんね。どんどんと連鎖して全身トータルで愛せるようになったら、最強ね。まずは“お気に入りのパーツ”を見つけてそこをピカピカに磨くことがセルフケアを楽しむきっかけになるかもしれません。
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■周囲に流されない、クールな視点。
アナウンサーの枠を軽やかに飛び越え、今では「美のカリスマ」とて女性たちに対して圧倒的な影響力をもつように。数年前に想像をしなかった状況に身を置きながらも、変なプレッシャーも感じなければ、今以上の野望はないそう。
プレッシャーはないです。注目していただけるのはありがたいことだけど、好きも嫌いも真に受けすぎると、受け止めきれなくなってしまう。だからどちらであっても、世論は「そうなんだ」ってサラリと受け止め、そこにしがみつかない。私はこの仕事をいつ手放しても良いと思っています。というか、身の丈以上のことをやらせてもらえているから、もうこれ以上何も望むことはないのです。仕事を取りあげられたとしても、私はひとりの人間としてちゃんと存在できると、今なら思えるから、こんな風に言い切れるのだとも思います。「あなたから仕事を取ったら何が残りますか?」そう問われ、ハッとする人は多いと思う。わき目も振らず、仕事にまい進するのは大いに結構。だけど、のめり込んで視野が狭くなり、社内での批判や評価にいちいち振り回されて自分を見失ってしまわないように気を付けたいよね。仕事を取り上げられたって、自身の存在価値を否定するような精神状態でいることは健全じゃないと思うんです。私だって、突然ポーンってこの芸能の世界からいなくなるかもしれないし、もしかしたら80歳まで求めていただけるかもしれないし。人生は本当にわからない。
ただ、ひとついえるのは、ずっと人の目を気にして生きるのは窮屈。自分のために、自分が納得するような人生の歩みかたをしたい。
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素直さと冷静さ、両方をバランス良く持ち合わせた彼女に、VOGUE GIRL読者に、自分らしいく歳を重ねるためのアドバイスを聞いてみた。
と言いつつも、人の目や世間の評価を気にすることはあって当然。気にしいな自分、どん底にも思える状況を、全部ひっくるめて認めてあげるのはどうだろう。落ち込んだり、前向きになれない自分を責めたりしないで。ちょっとしたこと…生理前の肌荒れ、友人の何気ない一言、彼とのボタンの掛け違い、そんなものが重なって絶望するなんてことは、この先何万回と訪れる。その都度、負の感情に支配されて大泣きするのだって、人間らしくていいと思う。大きな失恋、転職、人間関係のトラブルも、いつかは大きな糧となると信じてみることにしています。だって、そうじゃないとわりに合わないもの(笑)! 20代は挑戦あるのみ。目に見えない何かに怯えて前進できないのは勿体ない。目の前の自分の人生を全力で生きて欲しいです。